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なにげなくて素敵な言葉をくれたひと

新卒で入社した会社との出会いを、以前「楽しそうに呼び込みをする人事のお姉さんにフラフラと引き寄せられた」からだと書いた。

エンジニアばかりが集まる合同説明会で明るく楽しげに呼び込みをする人というのはずいぶんと目立つもので、初めての合同説明会、特にぴんと来る会社もなくただただ疲れ果てて途中抜けしてやろうかと考えていたぼくは、きっとあの方がいなければブースに入ることはなかっただろう。そのまま帰宅して眠りこけ、普通に就職活動をして別の会社に入社し、そしてきっと、全然違う人生を送っていた。

今のぼくを作った恩人とも言えるその人事のお姉さんは、明るく人当たりがいいのはもちろんのこと、信念を持って仕事と人生に向き合っているとても素敵な方だった。この人が人事をやっている会社なら間違いないだろうと思ったし、実際その通りだったと心から思う。

ここまでですでに、ぼくがその方を敬愛していることは十分に伝わっていることと思うが、今日この文章では彼女が言ってくれた、素朴で、でも嬉しかった言葉を紹介したい。


一次面接のときだったと思う。
履歴書を見ながら出身大学を一橋大学と確認したときにかけてくれたひとこと、「すごい勉強したんですね」。この言葉だ。

人によっては、え? そんなつまらないこと? と思うかもしれない。けれどぼくにとってはなかなか衝撃で、同時に嬉しい言葉だった。「はい、頑張りました!」と、小学生のような素直さで、何度も頷いた記憶がある。

一橋大学という名前を聞いたとき「頭がいいんですね」と言ってくれる人は多い。事実として偏差値は高いし、受験という意味で頭がいいのはそうだからぼくは特に謙遜も否定もしない。「勉強は得意でしたね」なんて返して、あざますーと喜んでおく。褒められるのは嬉しいけれど、お決まりの、社交辞令的なやりとりにはどちらかといえば飽きていて、なんとも言えない気持ちになるのが常だった。

だから「勉強した」ということを取り上げて言葉にしてくれる人がいたことに驚いたし、それがとても嬉しかったのだ。勉強した結果や能力ではなく、勉強という努力を見てくれた気がしたから。そうそう、そうなんだよ。頭がいいという言葉で片付けられない努力を、ぼくはちゃんと踏んできたんだよ。

今まで抱えてきたなんとも言えない気持ちの正体すら掴めた気がして心地よかった。あれから 4 年経った今でも覚えているくらいだから、それだけ衝撃で、その言葉をくれる人は少なくて、そしてその言葉を欲していたのだと思う。


きっとご本人は、意識して発したわけではないと思う。普段からの人を見る視点が、たまたま言葉として出てきただけなのではないか。でもだからこそ胸に刺さる。素朴でなにげない、けれど素敵な言葉。

これだけじゃない。まだいくつか、大切にしまっている言葉がある。

いつかの note で、紹介しよう。

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