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3.始発前の御堂筋

「終電までに帰る」は大抵叶わない。

その日も「終電までに帰らな怒られる」と言っていた友人と2件目に行った裏なんばのバーで妙に盛り上がってしまい、結局朝帰りになっていた。

心斎橋に向かいつつ何件か飲み歩いて、カラオケボックスで少し仮眠をとりながら始発を待った。2時間後には仕事に行かなあかんという事実が二日酔いの体にのしかかる。

息も凍りそうな5時前、まだ時間があったので二人で心斎橋から本町まで歩くことにした。眠気と二日酔いと寒さで話す気力もなく黙々と歩き続けたが、友人がぽつりと「ほんと何してんだろ…」と呟いた。

友人は朝帰りして家の人に怒られることを懸念していたのだろう。見たこともないくらい小さくなっていた。御堂筋がいつもに増して寒々しい。私も当事者として小さくなった。心斎橋の駅内で待っておけばよかった。


その友人と夜通し遊ぶのはこの日が最後だった。それ以来私はなんとなく「終電までに帰る」宣言を守るようになった。

しかし友人はその日以降も結構夜遊びしていたらしく、それ以来私は「今日は朝まで」宣言を守るようになった。

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