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ホームセンターで思考の旅をする

日曜日にホームセンターに出かけて、なかなか帰ってこないというご主人さんの気持ちがよくわかる。ホームセンターにいると時間の経過が無茶苦茶早い。

書きすぎの疲労からか朝から気分が晴れなかったので、リフレッシュがてら母の買い物について行ってみた。庭いじりのためにホームセンターで花と土を買うらしい。

まずは中型のホームセンターで屋外の商品だけ見て回った。一口に「レンガ」と言っても数十種類もあることに初めて気付く。「1種類くらい軽いのとかあるんちゃうの」と無駄な思いつきをして、逐一持ち上げては「あ、ちゃんと重いわ」とすぐ手を離した。レンガはレンガだった。しかし白や淡いオレンジがまだらになった洋風のレンガはなんであんなに軽やかなんやろう。レンガがバラの形に紐で繋がれた商品もあった。とても鈍器になるとは思えないファンシーな代物だ。

日だまりには植木鉢のコーナーがあった。素焼の鉢のオレンジ色は好みではないが、あのにおいは昔から好きだ。特に太陽の光でぬくもったときが良く、干した布団のにおいとよく似ている。とても鈍器になるとは思えないほどのどかな代物だ。

次に土を買いに大型のホームセンターへ向かった。案外ホームセンターが面白い旨を伝えると、母に「中もおもろいで」と言われたので入店してみた。ホームセンターは初めてではなかったし、だいたいどんな物が売っているかは分かっているつもりだ。それでも何度行っても「こんな商品あんねや」と毎回思うし、無駄にむしょうに何か作りたくなって設計を考えてしまうのは昔から変わらない。

今回は店に入っていきなり、100種類はありそうな軍手とゴム手袋の棚に圧倒された。100種類全部に需要はなさそうだが、競争や売れ筋商品の概念を感じさせず思わず和む。でも手袋マニアの需要はありそう、などと余計なことを考えた。他には微妙にサイズが異なるスパナだらけの棚や、1本100円くらいの試験管やビーカーが売っていた。理系バーの食器(試験管)ってどういうところで揃えてはるのかな、などと余計なことを考えてしまう。

最後に土を買った。昨日読んだ中村文則の『土の中の子ども』のワンシーンを思い出してえずいた。昨日は小説上で人を殺すための道具だったものが、花を育て生かすためのものとして目の前にある。そう考えるとえずきが止まった。それよりも土を運ぶ荷車の方がよっぽど人を殺せそうだった。

ホームセンターが面白いのは、こうやってあらゆる想像ができるからだろう。無駄な買い物をしてしまいがちな場所でもあるが、余計な思考や創作物の構想も持ち帰ることができて良い。しかし今日の私には『土の中の子ども』がインストールされていたので、ホームセンターを純粋な気持ちで楽しむことはなかった。

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