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11.堺筋本町のカフェ

ビジネス街にあるカフェは、休日の朝であれば文句なしの快適さである。大阪の堺筋本町は繊維商社やメガバンの支店が多くある場所だが、休日は中央大通や本町通の車の多さを除けば比較的静かな場所だ。

平日の仕事帰りはもちろん、日曜日の朝に出かけて構成や執筆をすることも多かった。8〜9時ごろからカフェに入り2時間ほど仕事をする。11時に紀伊国屋書店が開き、疲れた頭を癒しながら本棚を端から端までチェックする。疲れたら違うカフェで軽食を取りつつ執筆の続きを進める。本を買った時はちびちびめくりながらコーヒーをすする。だいたいそんな過ごし方をしていた。

サードウェーブのおしゃれなカフェもあったが、もっぱらベローチェやコメダ、スタバなどのチェーン店に通った。おしゃれなカフェでは、何となくこういう自分の好きな文章を書くことしかできない。案件に集中するならチェーンの方が気兼ねせずに書けていい気がする。

堺筋本町はカフェと本屋には困らないエリアだった。船場センターには古書店の天牛堺書店があるし、その近くにタリーズもある。北浜や天満橋、本町にも歩いて移動できる距離で非常に良い場所だ。


しかし平日はパリッとしたスーツを着ている人と逆方向に歩くことが多く、カジュアルな格好で通勤していた私は何だか場違いな気がして仕方がなかった。逃げるように駅を抜け、チェーンのカフェに入ってやっと居場所を見出す。帰宅ラッシュの時間が過ぎてから紀伊国屋書店に寄り、帰ってから書く内容や構想を練りながらそそくさと帰路につく。

就活中商社は全敗だったが、もし受かっていたら私もパリッとスーツを着て残業をして、ランチでレトロなカレー屋に行くこともあったのだろうか。そう考えると堺筋本町でも居場所を失いそうで怖かった。

不安と希望、喧騒と静けさの交錯する街だった。

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早くも11話目です。思い出したまま書いているため、だから何やねん的な文章もいくつかありますね。しかしこう書きたい、こう書けば伝わるかもといった細かいコツを掴みつつあるので、淡々と自虐もええかっこもせず書き続けます。


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