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【2017年】年間ボーカロイド楽曲10選


 昨年は「下半期10選」と「年間10選」を両方作りましたが、今年はそれほど聞いていないのもあって「年間10選」だけにしました。



しかし↑の通り「上半期10選」は作っているので、それと合わせて実質年間20選だと思って下さい。例えば上半期に選んだしろにゃんさんの「ちがい」などは確実に今年のトップ3には入ると思うので。

(じゃあ上半期との重複アリにしろよと言われそうですが、紹介する曲の総数をなるべく多くしたいが為の悪あがきです。聴き専がやりがちな)



それではどうぞ。曲名クリックでニコニコの動画リンクへ飛びます。

順番は適当です。好きな順ではありませんのでご注意を。



1:アイドル / Puhyuneco


 感性が異次元枠その1。ディープなボカロリスナー界隈で今年最も話題になった曲といっても過言ではないでしょう。

 正直なところ、私はそうした音楽玄人の方々が好むようなノイズミュージック的な曲は好きではありません。でもこの曲にはやられました。

 何が凄いって、もちろんあのラスト1分の畳み掛けに尽きると思います。初めて聞く人は何があっても最後の1分まで何とか粘ってほしい。

 それまでのノイズまみれで人を選ぶような展開が、全てあの超ポップで口ずさんでしまうようなラストへの前フリだと思うと、やはりとんでもない曲だなぁと思います。最後で何故か涙が出てくる。


 もう一つ言及すべきは、この曲が何を隠そう「初音ミク10周年記念日」である8月31日に投稿されたということ。よりによってその日にこの曲が発表されたということ自体が、ボカロシーンの未来への期待を膨らませる、非常にエポックメイキングな “事件” だったと思います。1曲目から重いけどこれ10曲書ききれるだろうか自分。





2:ここにいない / 街子

 感性が異次元枠その2。こちらは音楽ジャンルで言えばポストロックでしょうか。

 実は今回の年間10選で取り上げる作品の中で、唯一上半期に投稿された曲です。ということはつまり、「出会った当時は良さが分からなかったけど今は大好きな曲」ということ。

 いや、実は初めてこの曲を聞いたときから衝撃を受けていたんです。「この世にこんなハイセンスな音楽を作る人が存在するのか…!」と。(過去にナカノは4番さんなどに出会ったときも同じような印象でした)

 でも、あまりに感性がぶっ飛びすぎていて自分程度の物差しでは測れなかった。自信を持って “好き” だと言える自身が無かったので上半期には選ばなかったのです。

 しかしながら、ふとした拍子にこの曲のフレーズが頭に浮かんでくる日々が続き、とうとう自分はこの曲に対して敗北を認めました。未だにこの曲の凄さのほんの少ししか汲み取れていない気はしていますが、それでも好きなので、ここに加えます。





3:あいまいなエアライン / 歩く人


上半期のほうで「night (t)rain」を選んだ歩く人さんが再びランクイン。20選的には実質2曲ランクインということになります。すごい。

 この曲の何が好きって、「タイトルの “あいまいなエアライン”というフレーズから、大事に大事に膨らませて出来た曲」感がすごいところ。

 リフレインに弱いというか、 “強い”フレーズやメロディラインが中心にあって、その丁寧なゴリ押しで完成されているような作品が個人的に好きなんですよね。

 「night (t)rain」といい、今年の歩く人さんの活躍は目覚ましかった。来年の更なる飛躍に期待していまいます。




4:ベーカリー・チョコレイティ / ein


 歩く人さんだけかと思いきや、実質重複ボカロP枠その2。上半期のほうで「hello, a lot of never world」も選んだeinさん2曲目のランクインです。

 einさんの作るエレクトロニカは安定感が凄いと思います。常にIAさんの声質を最大限に活かした、可愛くもお洒落で良質なニカを提供してくれているのは本当にありがたい。

 この「ベーカリー・チョコレイティ」では、休日の朝を思わせるゆったりとしたビートに、キラキラしたサウンドが彩りを加えています。個人的にめちゃくちゃ踊れる曲です。





5:夜のサカナ / ごめんなさいが言えなくて

 ごめんなさいが言えなくて さんは、今年9月に立て続けに3曲投稿してデビューした、まさに期待の新人Pのひとりです。

 「夜のサカナ」はその3曲のうちのひとつで、たしか「夜のうた」タグで新曲を漁っていたときに出会ったことを覚えています。(「夜のうた」タグは「ミクトロニカ」「ポストミック」等と並んでよく使うタグです)

 タイトルの通り、夜の喧騒を悠々と泳いでゆく魚を思わせるテクノポップ調の曲です。これも踊れる。というより今年はこの曲でよく踊りました。

初めから歌詞が全て表示されているタイプの一枚絵MVも個人的に好みです。同じ作者で他に「つきの空とうさぎ」もオススメ。





6:星空パラダイム / CELLON.


 同じく踊れる「夜のうた」からもう1曲。

 MVの少女の足踏みに合わせて刻まれる深いビート、その控えめな雰囲気から一気に解放されるサビが大好きです。これを聞きながら夜の街を歩きたい。

 作者のCELLON.さんはインディーズ音楽ネットレーベル "Unisophere" に所属しており、様々なジャンルの曲を精力的に発表しています。Unisophereの出すアルバムは全て無料でダウンロードできるので要チェック。





7:IT’S OUR PLANET / 夜のロサンゼルス


 今年5月に「Weather Chasing Villa」でデビューした夜のロサンゼルスさんの最新作。

 相変わらず “頭のわるい友人” のメロディに詞を乗せるセンスは素晴らしい。まだまだ荒削り感はありますが、それを遥かに上回る圧倒的なキャッチーさ。思わず歌いだしたくなります。今後の活躍にも目が離せません。





8:I love you / ぐいあの



 今年11月に自身初の同人アルバム(EP)「LIFE」をリリースし、波に乗っているぐいあの(Guiano)さん。ヒットした「目眩く夜、彗星」以降の彼の進化というか、あちこち渡り歩いてようやく自分の道が見えてきた感には目を見張るものがあると思います。

 そんな「進化したぐいあの曲」の中でも個人的に一押しなのがこの曲。
かなり少ない音数の中で、いかに魅力的な音作りをするか。そのセンスは、デビュー当初のぐいあの曲から一貫して見いだせますが、ここに来て彼はもう一段階上のレベルに達したと感じます。

 このようなぐいあのさんの作風の変化史みたいなものを独立した文章として書こうと思っている…というか書き始めているのですが、無事完成したら上げますね。





9:快晴 / Orangestar


 今年度の蜜柑枠です。この曲については、投稿された当時にいろいろと思うところをぶちまけた記事を過去に書いていますのでそちらを参照して頂ければと思います。


 それはそうと、去る11月にカゲロウプロジェクトのじん(自然の敵P)さんがTwitter上でこの曲のことを呟いていましたね。

 伝説のIAマスターとして名前が上がるこの二人が、このような形で間接的にでも邂逅するのを目にしてテンションが上りました。しかも二人の活動時期はほとんど被っていません。

 13年9月はじめの「サマータイムレコード」でじんさんの時代が幕を閉じ、14年7月の「イヤホンと蝉時雨」、同年8月の「アスノヨゾラ哨戒班」でOrangestarの時代が始まります。その後約3年に渡って活躍した彼は、この「快晴」でその活動に一旦終止符を打ちました。

 そしてここに来て、4年間のブランクがあったカゲプロが再び動き出そうとしている…このように考えると、この2人を巡る歴史はこれからもなかなか熱いことになりそうです。

とにかく、ひとまずOrangestarさんお疲れ様でした。私はあなたの音楽で連れてこられたこのボカロシーンを、あなたがいない2年間もめいっぱい楽しもうと思います。また出逢えますように。





10:リバースユニバース / ナユタン星人

 

 現ボカロシーンの圧倒的王者であるこのPを、私は初めて10選に選びます。

 自分がボカロを聞き始めたのは2015年末なので、ちょうどこの異星人が超新星として “焼け野原” とも後に形容されることになる停滞気味のボカロシーンに舞い降りた頃でした。「パーフェクト生命」「ストラトステラ」が投稿されて盛り上がっていたのを覚えています。

 その後、この大型新人(?)は「エイリアンエイリアン」で大ヒットを飛ばし、不動の地位を獲得して現在に至るわけです。

 が、正直なところ最近の(赤背景になってからの)ナユタン星人という存在を、自分はあまり好きになれていませんでした。

 それはあまりにトントン拍子でシーンの頂点へ君臨してしまったことによる僻みなど、下らない要因の積み重ねだったのかもしれません。


 しかし、そんな自分のナユタン星人に対するイメージを全てぶち壊してくれたのがこの曲でした。

 初音ミク10周年に湧く8月31日。大手PもそうでないPも、それぞれのミクやボカロへの想いを表現した素敵なオリジナル曲が多数投稿されました。

 そんな10年に一度の祭りの中、他のどんな曲よりも「愛」に溢れた曲を上げるのが、たった2年前にデビューしたPだとは誰が予想したでしょうか。


 いや、本当は薄々分かっていたんです。ナユタン星人は、自身がニコニコ動画のサービス開始初期からのニコ厨にしてボカロ厨だと幾度も発言していました。


 それでも、まさかここまで「完璧な」回答を用意するなんて思ってもいなかった。


 本当にこの曲は、「初音ミク10周年」という、広大なボカロシーンにそびえ立つ大きな記念碑であると同時にその文化に関わる全ての人間への「これからどうする?」という “問い” に対してのアンサーソングとして完璧だと私は思います。

 特にCメロの「ほら今自由に描いたようなあなたの世界教えて!」からの畳み掛けが素晴らしすぎる。


「もう十周もしてやんよ」


 何度聴いても、ナユタン星人という1ボカロP・1ボカロファンとしての矜持や覚悟といったものに胸を打たれます。彼がいて本当に良かった。


「あなたに出逢えたときから 宇宙は生まれたんだよ」







 ボカロ10選は以上です。書き終えて気づきましたが、今回は珍しくUTAU楽曲が入っていませんね。(上半期の方には入ってます)

 何度も繰り返しますが、上半期10選も合わせて、実質年間20選だと捉えているのでぜひそちらも覗いてみて下さい。


 それから、Twitter上などで #2017年ボカロ10選 タグが流行っているようですが、自分は今ボカロ用アカウントが無いのでこれを読んだどなたか、もし良ければタグを付けて呟いて下さると存外の喜びです。


それでは来年も良いボカロライフを。




おまけ

2017年ニコニコインディーズ1選    花時計 / しほ


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