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エッセイ集Ⅱ

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ちょっと読むのはしんどいと感じてします本の内容をかみ砕いて書いていきたいと思っています。
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2015年3月の記事一覧

ヒトとは?人間とは?(22)

 ギリシャでは、9000年前に突如として農耕民が現れたそうです。彼らは、ほかの場所から農地を開拓しようと船で渡ってきたと見られています。

 ある土地で作物を栽培する場合、最初の2~3回の方が、そのあとよりも実りが豊かで育てやすかったため、ある程度の期間が過ぎると、農耕民は、常に新しい場所へ、未開墾の土地を求めて、移動していました。

 新しい土地にたどり着くと まず森林を焼き払います。そうするこ

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ヒトとは?人間とは?(21)

 人間が農業を始めたことで、どのような変化があったのでしょうか。

 それを考える前に、このシリーズを読み続けている方はもうお気づきだと思われますが、交換、つまり交易の方が農業よりも先にあったという事実をもう一度見つめてみたいと思います。

 初めて農業が根づいた場所のひとつは、メソポタミアとして有名な肥沃な三日月地帯であり、農業は、そこから南のエジプト、東のインドへと広がっていき、同時に交易も発

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ヒトとは?人間とは(20)

 穀物を食べる習慣、もっといえば、穀物を粉にしてそれをパンとして焼いて食べ始めたのは、農業が始まるよりもたいぶ前、2万3000年前ぐらいだったことが発見された遺跡からわかっています。オハロⅡという遺跡から、穀物をつぶしたと思われる平らな石と、その周りに付着していた穀物の粉、そして、パンを焼いたであろう石の窯あとがみつかっているのだそうです。

 人間は、農業を始まるよりもずっと前から穀物をすりつぶ

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ヒトとは?人間とは?(19)

 人は、名工などと呼ばれる名高い人の真似をすることで技能を学び、ごく稀に間違いを犯すことでイノベーションをおこします。こうして文化が進歩していきます。

 しかし、受け継がれた技能を維持することはそう簡単なことではありません。とくに、狩猟採集民社会では、自然から摂取することで生活を維持していたので、おそらく、集団の人数は多くても100人程度ではなかったかと思われます。

 この程度の集団だと、限ら

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ヒトとは?人間とは?(18)

 生物の進化は、遺伝子が混じり合うことでおこります。つまり、生殖によって、男女が互いに持っている遺伝子を半分ずつ分け合うことが繰り返され、遺伝子がかき混ぜられることで起きる現象なのです。

 文化的進歩も互いに分業化し、専門化して作ったものを交換し合い、使い合うことで進みます。そういう意味では、文化的進歩とは、生物的進化よりも速いスピードでおきる社会の進化といっていいと思います。

 それでは、文

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ヒトとは?人間とは?(17)

 今から6億5000年前頃に、われわれ人間(ホモ・サピエンス)の一部が、アフリカの地から移動を始めます。その数は、わずか数百人程度だったといわれています。

 彼らは、紅海の南端を渡って、アラビア半島の南岸沿いに広がり、その当時干し上がっていたペルシア湾を越えて、パキスタン、インドと広がっていきます。当時陸続きだったスリランカを通り、ミャンマー、マレー半島を抜け、インドネシアの島々を渡り、最終的に

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ヒトとは?人間とは?(16)

 調理をするには、火をおこさなければなりません。今でこそ、火をつけることは、簡単にできますが、キャンプの時に薪で火をおこすことを思い出してもらうと、火をおこすということが結構大変な作業であることがわかって頂けると思います。しかし、一度おこした火をみんなで分かち合うのは簡単です。

 また、調理は大変ですが、できたものを分配するのは、難しくありません。

 チンパンジーは、食べ物を咀嚼するだけで6時

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ヒトとは?人間とは?(15)

 第二部の始まりです。第二部では、ヒトという種がこの地球で唯一繁栄できた理由を考えていきたいと思います。

 スタートは、「模倣」です。しかし、模倣自体は、ほかの動物でも見られます。したがって、模倣自体が、ヒトを人間たらしめるところへと導いたわけではなさそうです。

 ところで、石器時代はどのくらいの長さだったかご存じですか。200万年前からおよそ1万年前ぐらいまでが石器時代といわれているみたいで

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ヒトとは?人間とは?(14)

 約700万年~約300万年前ごろに、われわれヒトの祖先が住んでいた熱帯雨林に変化が起きます。乾燥化が進み、それまで、うっそうと茂っていた樹木が少なくなり、草原のような背の低い植物たちが繁栄していきます。今まで、樹木に昇れば手に入った食料を得るのに、長い距離を移動せざるを得ない環境に追い込まれていきます。

 この頃のヒトは、まだ道具を使えるほどの脳の大きさを持っていませんでした。したがって、ライ

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ヒトとは?人間とは?(13)

 オス間の激しい競合を避けるためにヒトがとったもう一つの特徴とは、ボノボのように発情をのばすことではなく、発情という現象をなくしてしまうことでした。

 ボノボやチンパンジーの場合、メスが発情すると発情していることが明らかにわかる身体の変化がおこります。そして、メスは積極的にオスを受け入れるようになります。

 ところが、ヒトの場合、発情を示すはっきりとした身体の変化が、女性に見られません。この点

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 算数や数学で、点といえば、「その位置を示すもの」ということであり、形も大きさもないとされています。しかし、実際に点を紙の上に書けば、点には明らかに形があって、大きさもあります。子どもの頃は、こうした抽象的な概念を受け入れることが苦手で、「だって、実際に大きさがあるじゃん!」と反発したりもしました。

 そう言えば、子ども同士の諍いで、よくこんな事をいいます。

「何時何分何秒に言ったのかいってみ

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ヒトとは?人間とは?(12)

 さて、ヒトの話に移っていくのですが、最初に前提の話をします。もうおわかりだと思いますが、今までのチンパンジーやボノボたちと同様、ここから話すヒトの話も、人間が頭を使って考えてきたというよりも、遺伝子で受け継がれる格好で、長い時間を掛けて、こういうかたちに進化してきたという話になります。人間が試行錯誤して脳を使って人間社会をどう築いてきたかの話は、その後の話になります。まずは、進化の過程で、ヒトが

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ヒトとは?人間とは?(11)

 ボノボもヒト科の動物である以上、父系社会を形成しています。つまり、メスたちは、他の集団から移住してきます。また、ゴリラやオランウータンのように、オスとメスの大きさが極端に違うというわけではありませんが、力の強さだけを考えれば、メスはオスにかないません。それなのに、ボノボの社会では、メスが中心となって集団を動かしています。メスたちはどうして集団の中心にいられるのでしょうか?

 前回書いたとおり、

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ヒトとは?人間とは?(10)

 チンパンジーやボノボと分かれる前の我々の祖先は、熱帯雨林に長い間住んでいるうちに、時間をかけて少産多保護戦略を身につけ、4~5年ぐらいの間隔を空けて、子どもを産み育てるように進化していきました。

 そのため、メスとの交尾を望むオスたちの間では、競争がおこり、オスの世界できわめて緊張した関係が維持されるようになりました。その一端が、現在のチンパンジーのオスの社会で垣間見えることができることを、前

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