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エッセイ集Ⅱ

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ちょっと読むのはしんどいと感じてします本の内容をかみ砕いて書いていきたいと思っています。
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2015年4月の記事一覧

ヒトとは?人間とは?(30)

 すでに、インダス文明期には、綿が栽培され、栽培された綿は、他の文明地域に交易を通じて広がっていきました。交易に使われていたのが、人類初の牛が引く荷車だったそうです。輸送手段が発達するにつれ、交易が盛んになり、商人を通して、物や情報のやり取りが活発になっていきました。

 同じころ、地球の反対側、20世紀後半に南アメリカのペルーで発見されたこの地域最古の都市カラルでも綿の交易が行われていました。こ

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ヒトとは?人間とは?(29)

 都市とは、どういう場所だと思いますか。人が大勢集まるところ。情報が集まるところ、といったイメージでしょうか。もっとも、インターネットのおかげで現在では、どこにいても情報を取り込むことは可能になっていますが……。

 リッド・マドレー著「繁栄」の中で、都市は「交易が行われる場所」と定義されています。確かにものや情報を交換し合う場所というこの定義は、しっくりきます。農業を離れ、違う仕事を探し求めて人

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ヒトとは?人間とは?(28)

 昔から、穀物だけでなく、観賞用の花やペットとして飼われる犬猫など、人は自分たちが欲しいと思った形にそれぞれの品種を改良してきました。僕から言わせてもらうと、そこまでやる必要が本当にあるの、と思われるものも中にはあります。そう、すべて人間の都合で品種改良が行われてきたのです。

 犬の場合、こうした品種改良の影響で生まれたときから障害がある品種が増えていると聞きます。人間の都合で、違う品種の親と親

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ヒトとは?人間とは(27)

 やがて訪れる90億という世界人口の社会をどうすれば乗り切ることができるのでしょうか。今まで見てきたとおり、有機農法がこの莫大な人口を維持するのに適しているとはとうてい思えません。地球の陸地には、限りがあり、かつ穀物や家畜のためだけに土地を使っていくなどということは考えられません。

 限りなく効率的な農業を推進し、耕す面積を最大限に節約して、他の用途に土地が利用できるようにすべきです。もちろん、

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ヒトとは?人間とは?(26)

 皆さんもご存じのように、人間を含む動物は、植物や海洋にいる植物プランクトンなどが太陽エネルギーを利用して、大気中の二酸化炭素と水を使って光合成して作った有機物がないと生きていけません。植物たちがいないと、われわれが存在できないので、植物たちを一次生産者といいます。

 有機物は、炭素がたくさん連なってできている物質です。つまり、大気中で飛び回っている二酸化炭素に含まれている炭素を植物たちが、捕ま

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ヒトとは?人間とは?(25)

 みなさんは、農林10号というコムギの品種をご存じでしょうか。日本で育成されたコムギの品種で、この品種とメキシコ系コムギとの交配種がコムギの緑の革命の原動力となりました。今秋、農林10号の育成者である稲塚権次郎を主人公とした仲代達矢さん主演の映画が上映される予定だそうです。

 このころのコムギは、肥料をたくさん与えると、茎が太くなり、背丈はどんどん高くなりました。しかし、ある程度成長すると、簡単

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ヒトとは?人間とは?(24)

 人口が爆発的に増え始めたのは、産業革命以降です。現在のような非効率的な農業では、増え続ける人口を支えられない、そんなふうに不安を感じる人たちがでてきます。1798年、ロバート・マルサスは、「人口論」の中で、『土地の生産力には限りがあるので食糧供給は人口増加のペースに追いつけない』と予測します。

 新石器時代から産業革命以前まで延々と続いてきた旧態然とした農業が、地球に優しかったかというとそうで

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ヒトとは?人間とは?(23)

 農耕民たちは、移動した先々に、自分たちの習慣を持ち込みました。種まき、刈り取り、脱穀といった農耕に関わることだけではなく、パン焼き、発酵、貯蔵など、そして、その中に所有もありました。狩猟採集民は、日常的に移動する必要があったので、持ち物は最低限に抑えられていました。それに反して、農耕民たちは、ある一定期間、少なくとも2~3年は、同じ場所に留まります。そうなると、自分の持ち物、つまり農耕地は自分だ

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