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生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(3)

  前回は、主に体の中にある細胞について述べましたが、この細胞たちの大きさは、約数μmから数百μmぐらいの大きさでした。細胞が元になって作られている体の器官は、当然のことながら細胞よりもサイズが大きいことになります。

  細胞やそれが作り出している体の器官には、原子がふくまれています。原子の大きさは、1/10 nm ぐらいです。体の器官には、天文学的な数の原子が存在しています。

  前回、体の中では、化学反応が日々起きていて、化学物質(分子)のやりとりがおこなわれていると書きました。この化学反応は、たくさんの分子が集合している場合に成り立つものです。つまり分子の数がたくさんないと成り立たないのです。

  原子や分子は、非常に小さく肉眼で確認できない大きさです。分子がある空間に数個しかないとすると分子同士が出会い、反応する確率が非常に低くなります。おまけに一つ一つの分子は、熱運動をランダムに行っていて、次の瞬間どこへ行くかは予想がつきません。

  分子たちが地球上で熱運動していることは、ブラウン運動という現象で見ることができます。例えば、牛乳を数滴水に落として光学顕微鏡でその状態を観察すると、牛乳の中に含まれている脂肪球が水分子のランダムな衝突で不規則に動いていることが確認できます。これは、脂肪球が自ら動いているわけではなく、たくさん存在する水分子があらゆる方向から脂肪球にぶつかって動いているのです。

※ ブラウン運動は、このホームページで映像として見ることができます。

  このように個々の分子は、実はランダムに動いているだけで、たまたまそれぞれの分子が出会った場合で、条件が揃ったときのみ反応が起きるのです。ですから普通に考えれば、反応の確率を上げるためにはたくさんの分子が必要です。秩序だった化学反応には天文学的な数の分子数が必要です。

    一方で、先ほどのブラウン運動で見たとおり脂肪球のように小さい粒子は、分子の熱運動の影響を受けて、自分自身の位置を自分では決められません。つまりある程度の大きさがないとある位置に留まることもできないのです。

  地上には常に空気が存在し、その中には天文学的な数の分子の一つ一つが熱運動をランダムに起こしています。もし、我々の体が、脂肪級のようにこの影響を常に感じて、影響を受けていたら普通に生活することは、困難になってしまいます。

  それでは、どうしたら個々の分子の影響を感じないようになれるのでしょうか? それを感じないぐらいの量の原子が集まって、体や体の器官を作る必要があるのです。

   統計の世界で√nの法則というのがあります。例えばnが100個の場合、その誤差は√100で、10となり、100±10が正解の範囲だとなります。つまり誤差は10%です。nが100万個(1000000)とすると√nは、1000個となって、誤差は0.1%になります。このように数が多くなれば多くなるほど誤差は小さくなっていきます。ちなみに、100万個レベルでは、精度が低すぎるため、分子に影響を受けない程度になるには、天文学的な数の原子が必要となります。

  つまり、分子の気まぐれな動きに惑わされないためには、それなりの大きさでないと安定した状態を維持できないのです。

  おそらく人間の場合、その寿命の期間、体を維持するには、今の大きさが必要だったのでしょう。

  しかし、シュレーディンガーは、『生命とは何か』の中で、この考えを一度否定します。それは原子に比べ数百倍ぐらいの大きさで、原子の数が100万程度しかないあるものが我々の体を仕組みをコントロールし、永続的に存続しているためです。そのあるものこそが遺伝子だったのです。

 1943年当時、遺伝子がどういう仕組みで体と関わっているのかは、まだはっきりとわかっていませんでした。そんな中でシュレーディンガーは、「遺伝子は量子力学を用いれば説明できるはずだ」という主張をこの講演で主張したのです。それでは、シュレーディンガーが否定した部分を含めた修正を次回したいと思います。

前回までの内容

生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(1)

生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(2)

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