算数や数学で、点といえば、「その位置を示すもの」ということであり、形も大きさもないとされています。しかし、実際に点を紙の上に書けば、点には明らかに形があって、大きさもあります。子どもの頃は、こうした抽象的な概念を受け入れることが苦手で、「だって、実際に大きさがあるじゃん!」と反発したりもしました。

 そう言えば、子ども同士の諍いで、よくこんな事をいいます。

「何時何分何秒に言ったのかいってみろよ」

 その時点を言える子ども(大人でもそうですが)いるはずもなく、絶対に言い返せないだろうという意味合いをもって投げかけられる言葉です。

 このようにその時点を定めるのは非常に難しいです。そして、ある位置を決めるというのも実は本当に難しい。数学の定義のように形も大きさもないと定義しないかぎり、特定できません。でも、点には、実際には形も大きさもあるのです。いってしまえば、厚みもある。

 さて、何が言いたいのかというと、ものの元はどんなものなのかというはなしです。昔の人は、それを原子(アトム)と呼びました。すべてのものは、原子(アトム)でできていると。

 しかし、それがどんなものなのか、そして、どんな形をしているのかはわかりませんでした。今でも、わかっているようでわかっていません。当初は、これが元だと思われていた原子にも原子核と電子があり、かつ原子核自体も何かによって作られていることがわかってきています。しかし、本当に元になるものがどんなもので、どんな形をしているのかは未だにはっきりしていません。最近の物理学では、その元になるものはひものようなものだろうと考えられているそうです。

 実際は、ものの元が何であろうと、そのものが何かを理解できれば、普通の生活上は問題ありません。だから、私たちは、普通に生活しています。

「それって、何でできているのだろう?」

「どうして、そうなるのだろう?」

 そんな疑問を持たないかぎり、元をたどる旅は始まらないのです。そして、そんなことを考えてしまうのだヒトという動物です。

 エッセイ集Ⅱ もくじ



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