ヒトとは?人間とは?(15)

 第二部の始まりです。第二部では、ヒトという種がこの地球で唯一繁栄できた理由を考えていきたいと思います。

 スタートは、「模倣」です。しかし、模倣自体は、ほかの動物でも見られます。したがって、模倣自体が、ヒトを人間たらしめるところへと導いたわけではなさそうです。

 ところで、石器時代はどのくらいの長さだったかご存じですか。200万年前からおよそ1万年前ぐらいまでが石器時代といわれているみたいです。西暦に比べると、非常に長い期間です。この間、ずっとヒトはあまり大きな文化的進歩をしませんでした。

 当初、現代のヒトの祖先であるホモ・エレクトゥスは、ハンドアックスと呼ばれる左右対称で先の尖った石でできた握斧を使い始めます。そして、その作り方を後世に延々と伝えていきます。

 それは、10万年前にわれわれホモ・サピエンスが登場し、彼らを滅ぼすまで、ずっと続き、伝えられていました。ただし、ホモ・エレクトゥスは、握斧を模倣し、子孫に伝えこそしましたが、それを工夫して進化させることはしませんでした。ただ、ただ、模倣し続けたのです。その期間は、なんと100万年。

 おそらく、生肉を引き裂くほどには強くない犬歯しか持たないヒトの祖先は、犬歯の代わりになるものを模倣して作ったのでしょう。そして、それだけで満足だった。だから、100万年もの長いあいだハンドアックスを作り続けたのでしょう。

 しかし、この長い停滞は、驚くべきことではありません。自然淘汰による進化論から見れば、このくらい変化しないというのは普通なのです。ハンドアックスを使うというのは、それだけ動物的な進化だったのでしょう。

 彼らは、火も扱うようになります。つまり調理を開始したのです。肉を調理すると、デンプンがゼラチン化し、タンパク質が変質し、少ないエネルギーで効率良くカロリーを摂取することができます。そのおかげで、それまで消化に必要だった長い消化器官を短くして、そのエネルギーを脳に使えるようになります。ホモ・エレクトゥスの後期には、当初の脳よりも3分の一ほど脳を大きくすることができました。普通の霊長類が脳の4倍の大きさの消化器官を持っているのに対して、人間の脳は、内臓よりも重くなっています。人間の場合、100万年もの長い期間をかけて、さまざまに脳を活用できるように生物学的な進化をとげてきたわけです。

 10万年前ぐらいにわれわれホモ・サピエンスが登場します。そして、その頃繁栄していた私たちの親戚たちを駆逐していきます。なぜ、ホモ・サピエンスはそんなことができたのでしょうか?そのために何を身につけていたのでしょうか?

 それは、仕事を分担するという分業化と互いに分業し合うための専門化でした。そして、交易、つまり物々交換です。まず、分業が、家族というユニットを形成していた男女のあいだで始まります。

 その部分について、次回述べたいと思います。

 エッセイ集Ⅱ もくじ

 参考文献は、ヒトとは?人間とは?(1)に記載してあります。そちらを参照して下さい。


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