日本海⑥

 海面が非常に低かった氷河期が過ぎ、気温が上昇しはじめます。インドがユーラシア大陸にぶつかった影響で、東側の陸地の一部が大陸から離れ、低い部分に海水が流れ込み日本海ができます。それと同時に日本列島が誕生します。

 ユーラシア大陸から流れてきた人がそこに住みつき始めます。その頃には、日本海から供給される淡水によって森林が産み出されました。日本の森林率は66%だそうです。国土の3分の2が森林となっています。そして、その森林を育て上げたのが日本海です。すでに豊かな自然が日本列島を覆ってたのです。

 縄文時代の始まりです。もし、日本海がなく日本列島が陸続きだったら、日本には砂漠のような大地が広がっていて、食糧を得ることはままならなかったでしょう。自給自足の暮らしをしていた縄文時代自体、存在しなかったかもしれません。

 およそ一万年以上続く、縄文時代の移動手段は、筏のような船だったと予想されます。気温があがり、日本海に十分な海水が流れ込むと、日本海がちょうど城のお堀と同じ効果となり、大陸から大勢の人たちが移動してくることを防いだのではないでしょうか。こうした理由で、自給自足であまり争いの無かった縄文時代という島国特有の文化が築きあがっていったのでしょう。

 縄文時代以降、大勢の人や武器を乗せられる船が誕生する前までは、日本は、日本海というお堀に守られてきました。こうして考えてみると日本海という海は、色々な面で日本列島に住む我々に恵みを与えてくれてきたし、今も恵みを与えてくれています。

 日本海のもう一つの特徴である海洋の縮図は、私たちに地球温暖化の影響で海がどう変化するかを教えてくれます。現在、各国の研究者たちが日本海に注目しているそうです。海水温がどう変化するか、酸素の量はどうなるのか。

 すでに、その兆候が日本海に現れているそうです。その辺の話を次回してこのシリーズを終わりたいと思います。

参考:蒲生俊敬著『日本海』(ブルーバックス)

日本海①

日本海②

日本海③

日本海④

日本海⑤


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