努力とか過程とか結果とか

最近、ディベートや事業やコンテンツ制作など、色々な場面で似た話をする機会があったので。
※各分野で起きた/見た話を混ぜながら抽象度高く書いているので、あまり特定の事例は念頭に置いてません。変に深読みはしないでください…

■努力したのに結果がでない

頑張っているのに/頑張ったのに、自分の望んだ結果が得られなかった。こんなとき、人は他者のせいにしてキレるか、自分で全てを背負い込み落ち込む。

■結果を出すための努力

キレる前に、落ち着いて考える。結果を出すための努力をしたのか?
「したよ!」と言うと思うが、もう一度。
「結果を出すための努力」をしたのか?

努力はしたかもしれない。他の奴より頑張ったかもしれない。
ただ、「結果を出すための努力」はしたのか。
努力の内容が、求める結果に直結するものだったのか。
「練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ。」とは或る野球選手の言葉だが、自身の努力が求める結果に対してどれくらい強く結びつくものだったのかは、一度冷静に検討が必要だろう。

例えば、作品のクオリティを上げる事、作品のディテールに拘る事、プロの高度な技法を用いる事は、顧客体験を満足させたり、造詣が深い顧客からの賛意を得る事にはつながるだろう。他方、ライト層/初見客にとってはその努力が伝わらず、表現を選ばなければ「何かこねくり回しただけ」と思われるかもしれない。

■結果を求めるなら、自我を捨ててでも結果にコミットするのがプロの仕事

「顧客の理解度が低いのが悪い!」
「あいつらにこの良さは分からない!」
「無能な審判を引いた!運がなかった!」
気持ちは分かる。ただ、そういう話ではない。

本当に優秀な人間とは、自分の高い実力を100%出す者ではなく、目標達成のためには自我を捨て、結果にコミットできる者だ。

顧客や審査員の特性を理解し、結果を出すためにそこに迎合する。自分が作りたい議論やジャンルがあったとしても、勝つためにこだわりを捨て、顧客や審査員が好きそうな/刺さりそうな構成や表現を研究し、反映させる。

努力した人は偉いが、努力をしたから結果が出る訳ではない。顧客に刺さる条件をしっかり読めていれば、手抜き作品であっても評価をされることはある。

■芸術家気質の罠

こういうところが、いわゆる芸術家気質の人が陥りやすい罠になっている。技術には絶対の自信があり、努力もし、一般に「凄い」と思われるものを作る事ができる。のに、結果は出ず、自分から見て明らかに努力していない者が、(自分から見て審美眼もない)審査員に評価されて結果が出る。本人はキレるか病む。

■"事故"を回避するための目標設定

とはいえ、じゃあ芸術家気質の人間が自分の好きなものを作るのが否定されるのか?というと、そういう事ではない。話は単純で、賞を目標にしなければいい。だって、君の言う通り審査員は見る目がなくて評価がされないのだから。

大事なのは、自分が最初に取り組み始める際、周囲と意思疎通をはかって、目標を明確に宣言する事。今回は賞を取りたいのか、それとも、皆で最高と思える作品を作ればいいのか。その辺りを明らかにすること。なぁなぁで作り始めて、周囲からは「まぁアイツがいるし流石に勝つだろ」と思われ、本人もその気でいて、努力して、ふたを開けたら…となるのが、この手の問題パターン。

賞を取るなら賞を取るための動きと割り切って向き合うべきだし、そうじゃないなら自己満足ですと宣言すべき。
こういうところの「期待値コントロール」が、クリエイターとしてはかなり大事な技術であり、小手先のスキルよりも、自身の評価やメンタルに大きな影響を与える。

■されど過程は糧となって

落ち込んでいる君へ。人生のチャンスは多く、まだまだ先も長い。早く若いタイミングで学べたのは良いことだ。上の話を何もないタイミングで聞いても特に頭に残らないだろうが、傷ついている今見る事で、自分の実感となって理解できる部分もあるのではないか。であれば、切り替えて、次の機会では同じミスをしないように頑張るだけだ。

■どんな姿も周りは見ている

たとえ今回結果が出なくても、周囲は君の努力した姿勢や過程を必ず見ている。一部の人間は誹り貶めて来るかもしれないが、気にしなくてよい。人を牽引し、リーダーとして前に進める立場に居なかった人間に、そもそもリーダーを馬鹿にする資格などないのだから。

大事なのは、この瞬間、自分を信じてついてきてくれた仲間に対してどういうリアクションを取るか。審査や客のせいにして文句を垂れるのは勝手だが、それは敗者の戯言で、みっともない。そんなことよりも、一緒についてきてくれたメンバーへの感謝や、今後どうしたいか、また一緒にやってほしい、と素直な気持ちを伝える方が、周囲も快くまた君の背中を押してくれるし、ついていきたいリーダーとして目に映るだろう。

■というわけで

真に優れたクリエイターは、多彩な技術に振り回されるのではなく、結果を出すために多彩な引き出しの中から最適な選択ができる者である。

真に優れた芸術家は、周囲と取り組むにあたって目標を言語化し共有し、目標に向かってリーダーシップを発揮し、最後にはついてきた仲間へ感謝と信頼を伝えることができる者である。

自分の振る舞いや取り組みを冷静に見返して、次の機会では何をしたくて、そのためには自分がどう変わるべきなのか、再考してみよう。


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