見出し画像

小池光特集(1)の紹介(「短歌研究」2023年8月号)

 でました。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CBKZPDCC/klage-22

 公式告知。

https://twitter.com/tankakenkyu/status/1681861598770761728


とりあえず表紙を見てください。

 今号は、からし色の猫の表紙です。

 第2特集が「ここまでやるか。小池光研究」です。

 私は小池ファンですけど、小池選歌ではないです。なので、社外の方にとっては「誰?」で、社内の方にとっては「なんで?」でしょう。

 簡単に説明しがたいあれこれがあり、協力いたしました。逃げですとか、謙遜とかではなく、責任編集というほどのことではしておりません。アイデアは出しはいたしまして、「こんな記事あるといいな」「この方が書いてくださったらいいな」みたいなのをいろいろあげて、採用は編集部におまかせです。仕事としては責任編集というより企画といったほうがよいのではないかと思います。それをこのようなかたちでの掲載に至ったということになります。
 雑誌の表紙に名前が載ったのははじめてのような。

(表紙に執筆者全員の名前がのるムックには書いたことがあります。)

 以下、記事紹介とつけたし。

山下翔「いまなぜ小池光特集なのか 〈作る〉人」

 どうして今、特集を組むのかというような文章です。ファンにとっては「いつでもアツい」といえばそうなのですが、ちゃんと最後のほうで「今」の話をしております。

四人の選者によるテーマ別「小池光傑作選」


鶴田伊津/花笠海月/寺井龍哉/山下翔

 10首×2テーマ=20首を選び、選をもとにして文章をつけました。「解説」とありますが、鑑賞文といったところです。今回は「おもしろい歌」「鋭い歌」の2テーマを設定しています。この記事はテーマを変えて3回続く予定です。10首×2テーマ×4人×3ヶ月ということで240首紹介予定です。なるべくたくさん紹介したいので選がかさならないといいなーと思っていましたが、今回はつるたさんと選がかぶってしまいました。

 鶴田さんの文章は出だしから「そうなんですよ!」とうなづいてしまうもの。寺井さんは「みづのおもてにみづあふれたり」の鑑賞文がすごくて、何も言ってないのにエモいことだけわかる。こんな文章書く人だったか、と思いました。山下さんはまんべんなく歌をとりあげられいて、いちばん解説っぽい(私以外の人はだいたい選んだ歌すべてとりあげています)。ピカチュウの歌はどちらかというと私はスルーしてきた歌なのですが、「翻って」のところなどにうまくのせられ、いい歌に見えてくる。最後の梨の歌の鑑賞も、はっとする、というのが実に自然に入ってくる呼吸のようなものが感じられる文章でした。
 私は20首全部はふれていないけれど、選に入っていない歌を引用したりしています。

大辻隆弘「伝統への転回(ケーレ) または第二芸術論からの脱出」

 タイトルかっこよくないですか!
 この文章の欠点は短いことです。大辻さんがお書きの「私」が近代的、前近代的なもの(戦前的といってもいいのかもしれない)でなかったのは明白で、戦後的なそれであったことが重要なはず。第二芸術論から脱出してどこへむかったのか。(いろいろ省略して言うと)茂吉へたどりつくんですけど、墨守するようなものではなかった訳で。その話を読みたかった。
 つづきをどこかで書かれることを待望しております。


藤原龍一郎「『十弦』の初期作品は歌集で如何に再構成されたか」

 「十弦」掲載作と『バルサの翼』掲載作の連作構成の比較をされています。
 「十弦」かつて存在した「短歌人」の結社内同人誌です。小池さんも藤原さんも参加されていました。「雪に傘、」の初出は「十弦」です。
 そのころの話を書いてほしいなーと思っていたのですが、けっこうまじめに書かれています。フジワラさんはいつもまじめな方なのですが、こういうテクニカルな話をされる文章、久しぶりに見た気がします。

参考:「Tri」で「十弦」総目次を掲載したことがあります。
「Tri」第7号(さよなら平成号)
https://note.com/klage/n/n14ec22fb05e2


堂園昌彦による歌集解説(1)

 3回連載です。8月号は第1~第3の紹介です。堂園さんとは何度か小池さんの話をしたことがあって、期待どおり安定の歌集解説でした。とりあげる歌数もかぎられていますし、三歌集で2ページですからまとめるのはしんどいことだったと思います。それでもこの長さで『廃駅』のころの評論のおすすめまで入れるというぬかりなさでした。

(内容と関係ないんですけど、これ、仮タイトルだと思っていたら本当にこのタイトルでした。)

 堂園さんは大辻さんの「転回」と似たような「転向」という言葉を使われています(ニュアンスはちがうと思います)。「転向」は思想や宗教の話でよく使われる語です。何を信じていたのかというと作歌信条、過去作くらいのことなんでしょうけれど、はからずもおふたりともがお使いになったことばで「どこへむかっていったのか」より「何からころんだのか」を考えてしまいました。



つけたし

 (発売日が安定していない)電子版などもあります。電子はながく売られますから、セール待ちというのもひとつの手です。興味のある方は、ご都合のよい手段でご覧いただければと思います。

20230725の追記

7/26に電子版発売です。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CCNCB8K1/klage-22


個人的感想

 フジワラさんが「十弦」掲載の連作を『バルサの翼』収録でどう変わったかをのべられています。私も「十弦」掲載の歌はとりあげたんですけど、連作の話はしていません。同じ資料をつかっても、フジワラさんと私の興味の方向性がちがうことがあらわれているなーと思いました。



20230723追記
togetterまとめつくりました。
「短歌研究」小池光特集まとめ【随時更新】
https://togetter.com/li/2191131

関連記事まとめ

小池光特集(1)の紹介(「短歌研究」2023年8月号)
https://note.com/klage/n/n1f7f2e0f7d58

小池光特集(2)の紹介(「短歌研究」2023年9月号)
https://note.com/klage/n/nff1c9dc1f8e7

小池光特集(3)の紹介(「短歌研究」2023年10月号)
https://note.com/klage/n/n26f9e0f98758

togetter
「短歌研究」小池光特集まとめ【随時更新】
https://togetter.com/li/2191131




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?