※本note はネタバレを含みます

いろいろと配慮しながらこの感想を書いていたが、奥歯に物が詰まったようなテキストにしかならなかったので、全部消して書き直している。ちなみに僕は本作品のリメイク元となっている仮面ライダーBLACKについてマジで何も知らない状態で観ています（完走後ちょっと調べた）。 
いやすごいねこれ。絶対地上波で流せんわ。いろんな意味で。

令和の日本でまさかテロリストが天皇殺す作品に出会うとは思わなんだ

最初ね、ずいぶんと（戦後日本に対する）パロディ要素が多いなと思ったんですよ。過去編とか特に。1話で全学連（のパロディ）にメット被せてゲバ棒持たせて「怪人差別はんたーい！」とか言わせてるわけで、もう最高ですよ。
そして新城あかね。どう見ても若き日の重信房子 。反体制派の中でトップ（ダロムやビルゲニア）と対立したあたりもそれっぽい（重信房子はのちに連合赤軍トップとなる塩見孝也と対立、海外に拠点を移す）。他にもゴルゴム本部のビルが自民党本部ビルとそっくりだったり、ゴルゴムのシンボルマーク（あかねの書いた∞マークではなく赤い輪のほう）が水平社の荊冠旗 そっくりだったり、創世王作った研究機関が明らかに731部隊（劇中、疫病関連の研究をしてたっぽい描写が出てくるが、731部隊も防疫研究組織という建前があった）とまあやりたい放題だ。とはいえこれらはお遊び要素であり、本筋とは関係の薄い「パロディ」だと思っていた。

ところが終盤、「あかねはキングストーンを奪うため暗躍した政府のスパイ」という設定が出てきたあたりで不穏さが漂ってくる。これはあくまで政府側の主張であり、かつ結局劇中では彼女が本当に怪人の緩やかな消滅を目指したのか、単なるスパイだったのかは明らかにされなかった。というか不自然なくらい、唐突にこのスパイという主張が出てきて、かつそのシーン以外でこの設定は触られることがなかった。おかしい。粗すぎる。そこでふと思った。

これ単なるエクスキューズでは？？？

もしこの唐突にぶち上げられたスパイ説がなかったら、重信房子という存命するテロリストの中でトップクラスに危険な人物をモデルにしたキャラクターが称揚されることになる。「平等という理想に殉じた悲劇のヒロイン」として。そうなるともはやパロディでは済まない領域に足を突っ込むことになる。なので超絶雑なエクスキューズとしてスパイ設定が出てきたのではないか。

とはいえ色々他にもガバなところはあったので、考え過ぎだと思い最終話まで観た。唖然とした。

えっ創世王、キミが殺すの？？？

そもそもこの創世王が何なのかという話なのだが、どう見ても天皇である。創世王自体はリメイク元のBLACK とあまり変わってなさそうなのだが、ではBLACK でも祠に入れられて拝まれてたのだろうか？　多分違う気がする。他にも
・意志を持たない
・形骸化している
・代替わりする
・安部元首相がモデルの堂波総理に良いように使われてる
とまあだいぶ寄せている。最後のはだいぶ露骨（スタッフは安部元首相が殺された時だいぶヒヤヒヤしたのでは）。
あ、あと強い意志を持つ者が創世王になるとお気持ちくらいは最後に表明できるあたりもね……。

で、その創世王は葵に殺される。葵、最後どうなるのかなと思って観てたら最後テロ組織で後輩育ててた。マジかよ。これパロディだと思った諸々の要素、実はパロディじゃなくて本編じゃねえか。だって本筋のストーリーめちゃめちゃだもん。なんも解決してないのよ。創世王死んじゃってエキスでないから怪人は普通に寿命全うするしかないし、もう怪人生まれないし（だよね？）。堂波首相が死んでも相変わらずゴルゴムは与党のままだし、相変わらず怪人は差別されてるし。途中まで「これは継承することの困難さがテーマだったりするんだろうか…」とか考えてたんだけど、いやこれ違うだろうと。テロ組織に拉致られてテロリストにさせられた女の子が、最後は組織関係なく自らの意志で天皇殺したんですよ。すげえなおい。

そんなわけで個人的には結構楽しめたんですが、全然人に勧められない作品だった。冒頭にも書いたけど地上波じゃ流せないので、アマプラGJではある。いやGJなのかなあ？？？？　でも令和のこの世の中で重信房子モデルのキャラクターが活躍したり未成年テロリストが天皇屠ったりする作品はもう観れない気がするので、そういう意味では貴重だった。

あ、あと西島秀俊と中村倫也のブラックサン・シャドームーンはマジでカッコよかった。仮面ライダーほぼ初めてマンですが、多分人造人間ぽいライダーのほうが好みな気がする。しかしそういう感想が記事の末尾に追いやられる程度に本編（？）のインパクトがすごかった。スタッフかなり豪華なんだけどね……高級食材使って料理作ってたけど最後にハバネロ大量にぶち込んだような作品だった。高級食材で作った劇薬だよこれ。