『Dancing☆Starプリキュア』The Stage(ぼくプリ) 見てきました(途中にネタバレあり)

長年のプリキュアファン、KLPです。
時々話題にしていた、『Dancing☆Starプリキュア』The Stage、通称ぼくプリ。これまでちょっと意見を書くだけで、行くかどうかは明かしてきませんでしたが、実は自分の目でその全容を確かめたんです。
ぼくプリを見ていない方、大阪公演を見に行かれる方、明日のリアルタイム配信や、その後のアーカイブ配信を見られる方の参考になればと思います。
なお、途中にネタバレがあります。知りたくない方は飛ばして下さい。
以下、感想を書いていきます。


本番までの道のり

私は当初、ぼくプリをいいとも悪いとも思いませんでした。ただただ混乱しました。
元々男の子プリキュアはいてもいいと思っていて、「ひろがるスカイ!プリキュア」で、初めての男の子の正式メンバー・キュアウィングが出てきたのは全く抵抗なく受け入れられたのですが、それからすぐに男の子のみのチームが登場するとは思いもよらなかったのです。
2.5次元舞台という形にも面食らいました。

しかし、公式サイドのインタビューが発表されたり、俳優さんのコメントが出たりしていくうちに、見に行ってみようという気持ちが湧いてきました。絶対ダメと決めつけず、確かめる価値はあると思ったのです。

情報を追っているうちに初めほど混乱はしなくなっていって、むしろ、一部の批判的意見の方が気になるようになってきました。

批判が出るのもやむを得ない状況ではありましたが、舞台というものをよく知らないまま文句をつけたり、新情報のたびに憶測や邪推を広めようとしたり、仮定の話で批判し始めたり、批判の根拠が事実誤認だったり、情報を逐一チェックしてわざわざ不機嫌になったり、好意的な人のスタンスにまでケチをつけたり……ここまでくるとさすがにどうなのかと思う発言が多々ありました。

一方私は、更新される情報はそこそこ楽しみながらも、見ていない段階ではやはりいいとも悪いとも言いがたいと感じていました。
しつこく難癖をつけられていることには同情しましたが、それはそれ、舞台の内容自体とは関係のないことです。少なくとも発表時には混乱するような感覚を自分が持っていたことを、忘れたわけでもありませんでした。
結局のところ舞台そのものはイメージできず、期待と不安が入り交じったまま、本番の日を迎えました。

いざ、幕が上がる

他の日のことは分かりませんが、私が鑑賞した回では、席は埋まっている方だったと思います。当日券が手に入る状況ではあるものの、惨めになるほどの空席はなかったですね。
鑑賞後にはリピーターチケットを買う方も結構いらっしゃったようで、後の方はだんだん当日券も少なくなったはずです。
プリティストア先行の際に「売れていないからプリティストアまで巻き込んだ」というデマが一部で流れたのが気になったので、とりあえず私の見たままを言っておきますね。

(プリティストア先行は元から予定されていたことであり、その時点の売れ行きは関係ありません。また、先行ではどの段階でも落選報告を見かけたので、売れていないわけでもなかったと思います。
そもそも、空席を作らないようにするのは運営として当たり前の努力です)

もっとも、俳優さんのファンも多かったとは思いますが、少なくともここに一人、俳優さんのことを知らないまま鑑賞した長年のプリキュアファンがいたことを報告しましょう。
プリキュアのファンと思しき方も何人か見かけました。
後は何をもって成功と判断するのか、それは公式サイドの仕事なので、私にはこれ以上のことは言えません。

専用のペンライトも売られていますが、ルールに沿えば別のペンライトの持ち込みも可能でした。
グッズは開演前に売り切れてしまうものもありました。妖精パドドゥのポシェットは人気があるようです。

華やかなセットを前に胸を高鳴らせていると、物語が始まります。

キャラクター

公式サイトには、キャラクターの相関図は載っているものの、詳しいことはあまり載っていません。

パンフレットには、一人一人のプロフィールが細かく書かれていて、本編には出てこないような情報まで分かります。

ただ、これは鑑賞の後で読んでもいいと思いますね。
なぜならその方が、舞台の上演時間の制約の中で、いかにキャラクターがしっかり描かれているかを実感できるからです。

アニメのプリキュアは1年かけて戦いが描かれ、それに伴いメンバーについても掘り下げられていきます。
ぼくプリは一度の舞台でどこまでそれができるのか、気になる部分の一つでした。

……全く問題ありません。全員キャラクターも、関係性も濃いです。
それが無理をするでもなく、延々と説明をするでもなく、スッと理解ができるように描写されています。

事前のイメージと違うメンバーもいた一方で、主人公のキュアトップ/星河楽は主人公然とした、王道のキャラクターと感じました。
歴代プリキュアの主人公を思い出して、ニヤニヤしてしまったくらいです。

プリキュア以外も、妖精のパドドゥ、新任の顧問の先生、バスケ部の二人、みんないいキャラでした。

演出

プリキュアといえば、変身のシーンが魅力です。
例えば今年のひろプリは、ホップ・ステップ・ジャンプで衣装がどんどん変わっていき、終盤にウィンクをする、という特徴があります。

毎年趣向が凝らされていて、ドキドキしますね。

これを舞台でどう表現するのか、全く想像がつきませんでした。
事前情報によると、アニメを流すわけではなく、かといって単なる早着替えでもなさそうな感じがしたので、一体どうなるだろうと思ったのですが……。

アニメと同じくらいドキドキしました!

なるほど、舞台だとこういう表現になるんですね。
これは文字で説明するより、実際に見てもらった方が早いと思います。ぼくプリのテーマであるダンスから始まり、その後はキラキラした、目の離せない展開の数々。
当然、5人全員が違っていて、このメンバーはどんなふうに変身するんだろうとテンションが上がりました。

また、技を繰り出すシーンもとても良かったです。戦闘はアニメと同じく肉弾戦なのですが、最後はやはりダンスで決めます。
ヒーローショーのように音だけが流れるというわけではなく、これも舞台でしかできない表現の仕方で、しっかり魅せてくれます。

ペンライトを振るタイミングは分かるようになっています。プリキュアたちに向かって様々な光が投げかけられる様子は、映画鑑賞のミラクルライトを思い出して楽しくなりました。
ペンライトを持ってダンスができるよう、レクチャーする動画もあります。覚えやすそうなので、配信で見られる方も開始前にさくっと覚えてみてはいかがでしょうか。

ストーリー

《2023年11月5日 ネタバレ部分を書き足しました》

俳優陣や、脚本や演出を初めとする作り手の方々が、今までどの程度プリキュアに接してきたのかは分かりません。
ただ、ストーリー全体を見て感じたのは、これを作り上げているのは「プリキュア」の理解がかなり深い人達であるということでした。

前述の変身や技の演出もそうでしたが、「これぞプリキュア」と思う瞬間ばかりで出来ていました。
敵組織の目的とプリキュアが必要な理由、それぞれのメンバーの戦う理由や関係性、ダンス部にかける青春、熱い友情などなど……これまでアニメで見てきたプリキュアそのものでした。
メンバーの編成がプリキュア5っぽいなとか、音楽のモチーフがスイプリみたいとか、歴代のプリキュアに似ているところを考えるのも楽しいです。
しかも、それらは決して表面的な物まねではなく、「ぼくプリ」という一つの作品としてきちんと作り込まれたものでした。

その上で、大人がターゲットというだけあって、敵の言い分や友情のこじれといった部分では、簡単に解決のできない複雑な問題も描かれています。大人として、苦しい場面、胸が熱くなる場面がありました。

新しいものに挑戦しながらも、ルール無用なのではなく、ちゃんと「プリキュア」たるものを作る。この絶妙さは、作り手の方々のセンスなのでしょうか、それとも、スーパーバイザーとしてかかわっている鷲尾天さんの采配でしょうか。
何にしても、想像以上に満足度が高いものでした。鑑賞後すぐにリピーターチケット購入や円盤予約を決める人がいるのも納得ですね。
プリキュアの声優さんや主題歌アーティストさんも見に来ているようで、嬉しいです。

※以下はネタバレです!

・主人公のキュアトップはプリキュアになった順番が実は後ろの方で、しかも先にプリキュアになったうちの一人は深刻な理由で離脱しています。この状態から、5人がどのように絆を深めていくのかに重点が置かれており、ダンス部の活動も含めたドラマは見応えがありました。

・バスケ部の二人のエピソードは、息を詰めて見入ってしまう、シリアスなものでした。誰にでも嫉妬心はあり、時には友達にさえも抱いてしまうもの。友情は続くのか?プリキュアが出した答えは彼ららしく清々しいもので、大人の私は感心してしまいました。

・室井先生は初めからどう見ても怪しい人だったのですが、それでも当初、そんなに間違ったことを言っているようには聞こえませんでした。敵の言うことだからと単純に断罪できない辺り、やはり大人向けと感じます。
まさかダンスを題材に「平等とは何か」ということについて考えさせられるとは思いませんでした。
そしてそれに相対したキュアトップは、まさに主人公とも言うべき解決を見せてくれます。ダンスで戦うことの意味が分かりました。

・妖精のパドドゥ、プリキュアにも明かしていない野望があるようです。とても気になります。もしかして、続編があるのでしょうか?
この手のシリアスさと複雑さもプリキュアでは初めて見るレベルで、さすが大人向け、さすがぼくプリという感じです。私はプリキュア自身の持つ愛と正義を信じているので、裏の真実を知りたいです。

※ネタバレはここまでです

プリキュアとは?

こういう記事がありました。

「オトナプリキュア」やぼくプリに少し触れている部分があります。「オトナプリキュア」の方が突っ込んで言及されていますが、20年経ち、どんな展開を考えていくのか、公式サイドの苦労が少し見えた気がしました。

この記事では、映画「プリキュアオールスターズF」にあった「プリキュアとは何か」という問いについても、かなり深く語られています。

今回のぼくプリという企画は、プリキュア史上異質なのは確かで、「これはプリキュアなのか?」という反応が多かったのは当然だと思います。

ただ、私のような長年のファンは、”これまで”を踏まえた極論を言いがちです。

ぼくプリについて、喜ぶのは2.5次元ファンであって、自分たちのようなプリキュアファンではない、この企画でプリキュアに新規ファンはつかないし既存ファンも求めていない、という意見を多く見ました。
しかし世の中、「俳優を追いかける2.5次元ファン」と「熱心な(長年の)プリキュアファン」できれいに分かれているかといえば、そうではありません。過去にプリキュアを見ていた2.5次元ファンや、プリキュアも2.5次元もある程度知っている人、様々なスタンスがあるでしょう。
そういう人達が、ぼくプリを見て「今はこういうプリキュアもあるんだ」と思ったとして、それは”これまでを踏まえていないから”間違っているのでしょうか。その人達がプリキュア自体に興味を持っても、長年のファンは「プリキュアはあなたが思うようなものじゃない」と拒否するべきなのでしょうか。

私は「プリキュアオールスターズF」を見た時、過去のプリキュア達の思い出が出てくる場面でとても感動しました。この映画を見て良かったと思いました。
けれど、例えばひろプリからプリキュアを知った人に、あれらの場面のチョイスの何が良かったかは伝わらないと思います。言葉で説明しても、スタンスの違いは埋められないでしょう。
だからといって私は、「あの場面の良さが分からなきゃ、映画自体の良さも分かるはずがない」なんて言ったりはしません。私とは違うスタンスでも、あの映画を見て楽しめたのなら良かったと思います。

ぼくプリが企画として成功したのだとすれば、私などとは違うターゲットに届く、新たなプリキュアが生まれたということなのでしょう。
それは悪いことでしょうか。

昔はこうだった、今まではこうだった、が先走ると、様々な可能性を潰しかねません。

……では、他の人のスタンスはさておき、長年のファンである私が、ぼくプリをどう受けとめたか。

「ぼくプリ」は、間違いなく「プリキュア」です。

主人公たちが「プリキュア」と名乗ることに何の違和感も覚えませんでしたし、物語に引き込まれていくうち、自然と「”プリキュア”に頑張ってほしい」という気持ちが湧きました。
前述のとおり、きちんと「プリキュア」を理解して挑んだのが伝わってきます。自分の感覚に照らし合わせれば確かにプリキュアで、「プリキュアではない」と考える理屈を自分の中に探しても、一つも見当たりませんでした。

「男の子」という点も、元々、キュアウィングの登場とぼくプリとは同列の出来事ではないとは考えていましたが、実際に見て改めて、公式サイドはどちらも別々に、けれどどちらも「男の子プリキュア」を成立させるために心血を注いだのだと分かりました。
決して、先行しているキュアウィング登場とその受容を当てにして、「ウィングを出した後なら男子チームも出したっていいだろう」などといい加減に挑むような、そんな姿勢ではなかったと断言できます。

それと、ぼくプリより前に「プリキュアオールスターズF」の公開があって本当に良かったです。
おかげで「プリキュアとは何か?」を自分自身に問うことができました。問うたことで、ぼくプリのメンバーを「プリキュア」として歓迎できました。

少しでもぼくプリに興味のある方や、「2.5次元、男子チームでプリキュアができるの?」と疑っているプリキュアファンには、自信を持って勧められます。
ちゃんと「プリキュア」が見られます。

女性向け企画でしょうが、男性にももちろんお勧めです。プリティな衣装の男の子達が、ダンスで敵を倒していく姿は、男性にとっても魅力的に見えることでしょう。

劇場は未就学児の入場ができませんが、実際、アニメのターゲット層の子どもには、テーマの複雑さや上演時間の長さから、理解が難しいと思います。ただ、子どもに見せるのが憚られる場面はなかったと思うので、ある程度の年齢の子どもであれば楽しめるはずです。

《2023年12月1日 ネットの記事のリンクを追加》
こちらは予想に反してぼくプリを「プリキュア」と感じられたことを語る内容の記事です。同じ経験をしたプリキュアファンの気持ちを代弁しています。

他方、男の子プリキュアというだけで、あるいは男子チームというだけで絶対に認める気がないとか、2.5次元で表現されるプリキュアがどうしても嫌だとか、そういう方は、無理に見なくていいです。
見れば気が変わる人もいないことはないでしょうが、私はあえてそこには懸けません。

プリキュア20周年、これまでになかったような挑戦的な企画が生まれています。
長く続くうちに、挑戦に耐えられる強さを手に入れたということであり、ファン層を広げて更に長く続けたいということでもあるでしょう。
そこで個々の好みに合わないものが一つ二つ出てくるのはありうることであって、大元が好きなコンテンツだからといって、義務のように全てに触れる必要はありません。
批判は自由ですが、私が先に書いたような言動にまでなってしまうのであれば、距離を置いた方がご自身のためです。
他人の感想を読むのも、それで自分が本当に見てきたような気になってしまうなら、お勧めはできません。

自分は興味が湧かないが、挑戦する姿勢には賛成する、というスタンスの方もそれでいいと思います。賛成する以上は絶対に見るべき、とは、私は言いません。

ただ今回のことで、プリキュアは舞台という形、大人向けという形、男子チームという形の手応えを掴んだのではないでしょうか。

ぼくプリの内容は「オトナプリキュア」のように、別枠のアニメで発表しても良いものだったと思います。しかし舞台として発表したことで、結果、プリキュアは「舞台で演じる」という選択肢も手に入れてしまったんですね。

こんなにおもしろい作品を見せてくれて、プリキュアの可能性も示してくれた公式サイドと制作者の方々に、心から感謝します。
先ほどはスタンスの違いについてあれこれ言いましたが、この新たな歴史のすごさという点に感動できるのは、長年見てきたからこそかもしれません。

一応は完結しつつも、描写が丁寧だからこそもっと見てみたくなる部分もあったので、続編の構想があるなら是非とも叶えて頂きたいです。
今回だけでも丁寧に描かれている5人を、もっと見てみたいという気持ちになりました。


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