仕事の話(障がい児向けデイケアサービス)

働き始めてから大体半年弱が過ぎた。
色んな事をやりたいやりたいと漠然に抱えながら何もしてこずに大学中退後の8年ほどを過ごしていたのだけれど、まさか今になって大学で勉強したことを仕事にするとは思ってもおらず。色んな偶然が重なっての現状である。
仕事はとても楽しいけれど、楽しくてもニートに戻りたいと思うことは殆ど毎日。そんな仕事を始めて色んな話があるので備忘録的に書き記しておく。

名前と性別の話。
知ってか知らずかは私の知るところではないが、私は男性として生を受けつつも女性の心を持つMtFである。可能ならば女性として働きたいと思っていたことが仇で、バイト正社員問わず半年で50社ほどのお祈りを受けた。面接に行って受からないことが仇となって当時8年だか9年だかお付き合いしていた恋人にも別れを告げられた。
そんな私が今勤めているところは、純度100%のコネで滑り込ませてもらった。ママ友ネットワークに感謝。
今でも最初のLINEで感動したことを覚えている。半年前だから当たり前か。

「こんにちは!(本名)です!」
「みほしちゃんやろー?」

実際に働き始めて、職員だけでなく子どもからも「女性」として扱われるようになった。それまでは自認として女性を名乗っていただけに過ぎない存在だったものが、他者から認められる形になった。
子どもにも「女性として生きている男性」という概念は理解できるようだったが、とにかく女性として見られている。
じゃれあう様な感覚で「おばさん~!」と言われるのが何とも心地良い。
それでも見た目からは女性としてしか見られない様子で、ある子どもにこんなことを聞かれた。
「結月先生、結月先生なんで女の人やのに男の人みたいな声してんの?」
その子の素朴な疑問が余りにも純真で面白い。ニコニコしながら男だったからね~と答えると、その子の目がまん丸に見開かれて漫画みたいな驚き方をしていたのをよく覚えている。
言葉を発することが苦手な子も利用しているが、そういった子は私のことを「ママ」と呼んだりもする。
長い間男性としてしか生きられなかった私が、明確に女性として地位を得た、と思った。

トイレ介助をする仕事だが、明確に「女の子は女性職員が介助を行う」という決まりがある。
私は女性として仕事を受け持っているが、そこに関して職員と面談を行った。女性として我々は扱うが、トイレ介助についてはどのように取り扱えばよいのか、ということをダイレクトに、一切の膜を張らずに問われる。
私はそれに対して、全く考えることなく女の子へのトイレ介助はしないと答えた。
女性として扱われているからと言って、元々から女性だったわけではない。それ自体が問題なのではなく、私は女性でなかったことで重大な欠陥を抱えている。
男性の身体には文字通りの生理現象が発生しない。
小学生~高校生までを対象としたデイケアサービスであるが、一般的に生理が始まるのは10歳前後と言われている。私はそれを実態を伴う体験として知識を得たわけではないから、子どもが生理の場面に出くわした時に正しく介助を行う事が出来ない可能性が高い。
私は女性である以前に介護サービスを行う職員であるから、適切な処置を行える人がその場に立ち会うに相応しいはずだ、と考えてトイレ介助を辞退することにした。

子どもが好きというのは必ず子どもに伝わる。
初めは私に興味も関心もなく一人でずっと遊んでいたり、呼びかけにも応じない子がたくさんいた。
毎日会うわけでもないし、施設で小一時間ほど一緒に過ごすだけの存在だ。ましてや初対面に近ければ警戒するのも当然の話だ。障がいを持つとなるとより顕著になる。言葉でのコミュニケーションが難しかったり、感情表現が苦手な子が利用する施設なのだから。
それでも子どもが退屈しないように、また危険が無いようにサービスを施すのが介護の仕事だ。毎日飽きずに同じように、「あなたの事に興味があるのよ、あなたが心配だよ」の精神で関りを持ってみると、どんな子であってもいつか何らかの反応が返ってくる。
幸運なことに、今のところとても良い反応が貰えている。私を見ると飛びついてくれる子も出てきた。私が送迎の車に迎えに行かないと車から降りようとしない子もいる。もちろん、大して変わらずという子もいるのだが。
人と関わるために最も必要なものは興味だと言い続けてきたが、一つ実例が出来たなあと思った。

まだまだたくさん書きたいことも書けることもあるけれど、取り敢えずこんなところで。また気が向いた時にお会いしましょう。

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