『フランスの悪魔に学んだ3秒仕事術』(試し読み)

2018年8月25日発売(幻冬舎)https://www.amazon.co.jp/dp/4344033426

著者プロフィール
http://www.projex.co.jp/km.pdf

目次抜粋
(以下、スマホ対応のため横書きになっています。本は縦書きです)

▶フランスの超資産家が放ったお金を生みだす「金言」
▶3人の悪魔から食らった「交渉の最終兵器」
▶絶対音感的コトバで人を操るズルい外国人
▶「あいづちを打て」TOEIC 490点からの外資面接突破法
▶たった 「4語」 で心を摑む 超やり手フランス人社長
▶「分割」「暗号化」で3秒でわかるプレゼンをつくれ
▶「5分前勝負メモ」からプレゼンを組み立てろ
▶「ツカミ」分析で発見した「出だしのフレーズ」
▶1万分の1の発想をつくる「ツボかけ算」
▶言い方を替えて、狙いどおりの反応を得る
▶「ブラック質問」で本音を引き出す
▶理不尽な態度や口撃をうまく乗り切るヒント 


フランスの超資産家が放ったお金を生みだす「金言」

カルフールというフランス大手スーパーマーケットチェーンの日本進出プロジェクトに加わっていたときのことです。同社はフランスの超一流企業。株主にはフランス国内の大資産家が名を連ねています。

あるとき、カルフールの会長が、本国の役員や大株主の資産家とともに、日本での出店候補地の視察にやってきました。一人の資産家はフランスで4番目の金持ちだと言われていました。

私は担当マネージャーとして、当時もっとも売り上げが高いと予測された、大阪府箕面市の候補地に彼らを案内しました。しかしそこは競合各社にとっても最高評価の立地で、コンペを勝ち抜くのはかなり難しい状況でした。

現地に到着すると、役員、資産家たちは、しきりにいい立地だと話し合っていました。そのとき、あのフランス4番目の大資産家がフッと、

「オイリー(Oily)な土地だ」

と漏らしたのです。
その後、役員たちは口々に「オイリー!」と連発し出したのです。
その場にいた日本人は全員、何のことだかサッパリわかりませんでした。いったい「オイリー」とは何なんだと通訳に聞いたところ、

「ここは掘れば石油が湧いて出るぐらい、儲かりそうな土地だ」と言って騒いでいたらしいのです。

「物件を勝ち獲るのは厳しい状況なのに暢気なことだ」とそのときは思いました。しかし、じつはこの「オイリー」という言葉には、それ以上の深い意味がありました。

役員や資産家たちが帰ってから、「オイリー」ということばが、社内で流行りました。
視察に同行したパートナーたちまでが 「オイリー!」と言っていました。

私はそれを見て、ひょっとしたら、あの資産家は狙いを持って、「オイリー」という言葉を使ったのではないか、と思いました。

資産家にとって、儲かる土地が手に入ることは、利益につながります。自分の発言が、本国役員や日本の経営陣に、大きな影響を及ぼすこともよく知っています。

「オイリー」のひと言は、多くの人間を一つの方向(GO!)に向けて動かしました。

資産家が帰ってから、社内に「あのオイリーな土地を手に入れよう」感が広がり、最大限のサポートを受けることになりました。パートナーたちも、「絶対にプロジェクトを実現するんだ」という気持ちでまとまりました。

結果、私たちは数々の難しい条件をクリアして、最高立地を手に入れてしまったのです。

「オイリー」は、文字通り、金を産む「金言」だったのです。


▶外資で出会った“金言”
さらに外資ビジネスのなかで耳にした印象的な言葉を2つ紹介します。

[Rain Man]
有名な映画の題名とは別の意味です。雨を降らせる人、会社が苦しいときにビッグビジネスを取ってくる人のことを、あるファンド会社のトップはそう呼んでいました。

同じ意味で英語にはRainmakerという表現があります。しかし彼はあえて日本人にわかりやすく「あいつはウチのレインマンだ」という言い方をしていました。

伝わりやすいと同時に、言われている人間の価値が外部には高く映ります。
そして、レインマンのもとには、より多くの良い情報が集まることになります。

[自分にバイアスをかける]
東証一部上場のファンド会社社長(日本人)の言葉です。
日本のトップ証券会社の米法人社長から本体の専務まで務め、その後ファンド業界に入った、異色の経歴の持ち主です。

バイアスとは「偏りの無い信号を、偏った信号にするために加える電圧」のことを言います。自分自身や会社に転機がきていると感じられたら、自らにバイアス(圧)をかける必要があるということでした。

会社で言うと、上場やM&A、個人で言うとキャリアを変革するような転職といったところだと思います。
難しいプロジェクトや先が確実ではないチャレンジであっても、時が来たと感じたら打って出なければならないということです。

いずれもわかりやすく記憶に残りやすい表現です。
交渉やプレゼン、いろいろなコミュニケーションの場面で参考にしたい言葉の技術です。

 人から人へ伝わるからこそ「金言」

・真の「金言」はひとり歩きし、多くの人に影響を与える
・偉人は「金言」を操れたからこそ、大きなことを成し遂げられた
・自分の言葉を見直そう。伝わりやすさを追求する価値はある

 

「あいづちを打て」TOEIC490点からの外資面接突破法

人の動機のかなりの部分は「背景」と3つの「シコウ」から見通すことができます。

[背景]いま置かれている状況、周りの環境
[思考]ものごとに対処する考え方
[志向]意識が向きがちな価値観
[嗜好]ものの好き嫌い

この4つを上手に刺激して、納得感を持たせることができれば、「動機」をコントロールして、速やかに結果にたどり着くことができます。私が自分自身に試してみて、うまくいった例をご紹介します。

【TOEIC490点からの外資面接突破】
私にとって初めての外資系企業、カルフールへの転職のときです。
ヘッドハンティングの会社から紹介を受けて、のちに上司となるフランス人との面接に臨みました。当時の私の英語力はTOEIC490点で、面接でもうまく話すことができるレベルではありませんでした。

面接終了時のフランス人の渋い表情からは、とても通ったと思える雰囲気は感じられませんでした。
それから1カ月の間、連絡はなにもありませんでした。
私は、状況を自分なりに次のように考えてみました。

・連絡がないということは、まだ落ちたわけではない。前回の面接で、自分には決まらなかったが、他に傑出した候補者もいないということ
・候補者への条件は「英語力」「不動産の知識」「商業開発の経験」だったが、3つどころか2つを満たす人さえ(当時の関西エリアには)そんなにはいない
・自分は「不動産」しかクリアしていないが、「商業開発」はパートナーを見つければいい、あとは「英語力」が向上する手ごたえを示せばなんとかなる

そこで、ヘッドハンターに「もう一度面接をしたい」と連絡を入れました。返事は「2週間後」ということでした。

私は、この面接にかける予算を「10万円」と設定し、すぐに最寄りのNOVAを訪ねました。テキストなし、講師は専属マンツーマンで、目的はカルフールの面接に受かることのみ、と伝え、10万円でできるスケジュールを組んで欲しいと頼みました。

1時間1万円×10コマの特設コースを主任講師が引き受けてくれることになりました。カルフールを知っているイギリス人講師でした。

彼の「日本人の英語初心者に必要なのは 『あいづちを打つ』 ことだ」という変わったアドバイスに従い、
「Really.」(そうなんですね)、「That’s true.」(そのとおりです)、「I understand.」(了解しました)、「Uh-huh」(ア~ハン ←あいづち)などを、ひたすら繰り返しました。
10万円かけてです。

2度目の面接で、前回より短いディスカッションの後、フランス人は私の英語を「Improve!!」(向上した!)と言って、その場ですぐ契約書のサインになりました。

一緒に働くようになってから聞いたのですが、面接を自らリクエストしてきたのは私だけで、その段階でほぼ決めようと思っていたそうです。しかし、英語力がここまでアップしているとは思わなかったとのことで、英語講師の戦略は大正解だったわけです。

通るかどうかわからない面接をリクエストし、予算をかけ、必死に練習して臨めたのはなぜか。それは、自らの動機を最大限高めることができたからです。

【背景】候補者は限られていて、自分にもまだチャンスがある
【思考】英語力向上を何らかの形で示すことが鍵になる
【志向】絞った学習方法を最大限「効率的」「効果的」に実行する
【嗜好】どうしても英語を使った仕事、商業開発の仕事がしたい

4つの理解と気持ちを強く持ち続けた「2週間」が最終的な結果を生んだのです。

【不動産鑑定士試験の突破】
私は不動産鑑定士の試験に通ってすぐ、阪神・淡路大震災後の神戸で復興事業(建て替え事業)に参画しました。資格によって「不動産開発」への道が開かれたのです。

私の最初のキャリアは「近鉄不動産」という関西の電鉄系デベロッパーでした。
近鉄不動産には、選抜した若手社員に「3カ月間の缶詰」勉強で不動産鑑定士の資格を取得させるという、素晴らしいシステムがありました。
何人もの先輩、同期が合格するなか、私は不合格になってしまいました。給料をもらいながら勉強したのにもかかわらずです。

その後、何度か受験しましたが、働きながらの勉強に身が入らず、合格には程遠い状態でした。その後、実家の不動産会社に移り、分譲や賃貸管理の仕事をしていたのですが、ある年、もう一度最後に鑑定士を受けてみようと思い、TACという専門学校に通うようになりました。

【背景】働きながらなので、時間は限られている。1年で決着をつける必要がある
【思考】模試の結果は気にしない。最低限の学習量で各科目の合格到達点を目指す
【志向】採点基準からの逆算で「結果を出す」学習を徹底する
【嗜好】ムダを排除する。一年の前半は効率的に繰り返せる「ツール」づくりに充てる

3つのシコウを練るのには、それまでの仕事での経験が活きました。

リソース(資源)のないなかでは、同じ結果をいかに最低限の時間、労力で導くかで、最終的にゴールできる確率が変わってきます。あるパートでムダに好成績を出しても、それは他のパートへの時間を削ったことになります。試験の科目間でも同じことです。

採点につながらない学習は「悪」とみなしました。50行の試験用紙で50点満点の論文試験があったのですが、「2行で2点」を確実に獲得する答案構成を目指しました。より良い表現があっても学習からは切り捨てる作業です。得点至上主義でした。

模擬試験の結果には一喜一憂しがちですが、一年の前半は捨て、得意なツールづくりに賭けました。後半も得点上昇ペースは緩やかでしたが、ツール効果が加速度的に表れ、最終模試は全国17位と、合格に間違いないレベルに到達しました。

「背景+3つのシコウ」は、仕事を効率化し、高い効果を発揮するための「動機づけの視点」です。自分の納得感を高め、目標への強い動機づけを得るのに使えます。

また、人の背景やシコウを読み取ることで、その人のモチベーションを測ったり、行動の向く方向(ときにはミスやリスクを招く方向)を予想することもできます。

皆さんも目標について、自分の「背景、3つのシコウ」を振り返ってみてはいかがでしょうか。

 戦略よりも「動機」が結果を大きく左右する

・「動機」の変動幅は「リソース」や「戦略」よりも大きい
・「動機」をどうコントロールするかで、戦略の実効性は変わってくる
・超成功者のような強烈な「動機」がないならつくり出せ!


「ツカミ」分析で発見した「出だしのフレーズ」

皆さんは、会議を始めるときにどんな言葉からスタートしていますか?

私は、MC(※)として会議を任された当初、はじめの挨拶が苦手でした。
※MC(Meeting Controller):造語です。本書では「会議をマネジメントする人」の意で使います。

「ツカミ」というやつです。「無難にいくなら、当たりさわりのない挨拶やメンバー紹介からか」とも考えました。しかし始まりの3分間は、参加者の視線が一点に集まる、イニシアチブを取るには格好のタイミングです。この時間をうまく活かさない手はありません。

そこで、セミナーやプレゼンの上手な人たちの「ツカミ」を、注意深く観察してみました。TEDカンファレンス(世界的な講演会)の著名プレゼンターの動画からも、厳選した30本のスタート部分を分析しました。そして、必勝法とも言える「出だしのフレーズ」を発見したのです。

それは、「WE」「YOU」で始まるフレーズです。

「皆さん、こんにちは。……私たち(WE)は、よく『コミュニケーション』について話をしますが、じつは……」

「おはようございます。……皆さん(YOU)は、『起承転結』という言葉を聞かれたことがあると思います。ところで、……」
たったこれだけです。

驚いたことに、こういった出だしのスピーチは、かなりの確率で聞き手の関心を惹きつけ、内容も面白く、興味深いものだったのです。

これは、ツカミが良ければ面白い、ということではなく、「スピーチが得意な人は、このフレーズの効果をよく知っている」ということです。

バリエーションとして次のような表現があります。

「周りを見回してみてください(YOU)。景気が良さそうですか?」
「函館といえば、透き通るイカ刺しで知られていますね(WE)」
「今日、ここで集まれたことには(WE)、特別な意味があるかもしれません」
「子どものころ(YOU)、何になりたかったか覚えていますか?」

人は自分のことが話題にされると、つい聞き入ってしまう、というのは理解しやすい話です。単純な理屈ですが、効きめはバツグンです。
会議では、テーマとなっている課題や目標、背景や現状などから入ることが多いので、次のように始めてみてはどうでしょうか。

皆さんご存知のように、先月よりXプロジェクトがスタートしていますが、……」
「現在発生している問題が、各部門に及ぼす影響をスライドにまとめてみました」
「これらの点について、皆さんにご意見を伺いたいことがあります」
「本日、決めなければならない(WE)項目を順にお話しさせていただきます」

「私」よりも、「私たち」「あなた」です。

▼TED分析の副産物
TED代表のクリス・アンダーソンは、『TEDが素晴らしいスピーチを生む秘密』のなかで、「逸話を語る」「秘密を打ち明ける」といった「小道具の使い過ぎ」を戒めています。
「講演者のすべきことは何よりも聴衆の頭の中へ『アイデア』という贈り物を届けること」だと彼は言います。そして、「聞く人に関心を持つべき理由を与えること」「自分のアイデアをみんなに知らせる価値のあるものにすること」を重要な指針として挙げています。

会議に即して言えば、「参加者に、議題に関心を持つべき理由を与えること」「会議そのものを参加する価値のあるものにすること」だと言えるでしょう。

議題や出だしのフレーズは、できる限り参加者の好奇心を掻(か)き立てるようなものに仕上げるべきです。会議によって恩恵を受けるのは「参加者みんな」です。みんなにとって価値ある内容と運営をMCが提供しましょう。

以上の点がしっかり練られていたら、どういう「出だしのフレーズ」をつくるべきかは、自然と見えてくるはずです。

 名スピーカーは開始10秒でツカむ

・スピーカーの「第一印象」は最初の「10秒間」で決まる
・つまり、はじめの50~80字をしっかり練り込んでおくということ
・「参加者のために」を究極まで考えて、出だしのフレーズを磨こう



おわりに
たくさんの人を動かす言葉があります。
 
「I have a dream.」 (キング牧師)
「Yes We Can!」 (バラク・オバマ)
「こけたら、立ちなはれ」 (松下幸之助)
「自民党をぶっ壊す」 (小泉純一郎)

こうした言葉が力をもつのは、みな「現場」から生まれた言葉であり、その中で湧き出た、「何かを変えたい」という強い意志が込められているからです。
  「だれよりも現場を歩いて回ること」
カルフール入社当時、これだけは徹底しようと決めたことです。
上司のフランス人との会話は、覚えたての短い英語フレーズと、手書きのスケッチだけでした。それでも必要な主張を通せたのは、現場を十分に把握し、議論になるポイントを体感していたからです。
 
経験不足を補うため、現場で課題にぶつかるたびに、技術をつくってきました。皆さんも、ビジネスで大きな役割を任されたり、ときに困難な状況に陥ることもあると思います。そんな時に、本書でご紹介した「言葉の技術」が、一つでもお役に立てば幸いです。

何かを変えるのは、プロジェクトを成功させたいと願う、あなたの意思であり言葉です。
「Trust yourself 100%.」
いつかご一緒にプロジェクトに関われることを楽しみにしています。

© 2018 Koichiro Motoya All rights reserved.

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