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Genrikh Oganisyan『Three Plus Two』ソ連のバカンス映画だって魅力的だ!

アルメニア人映画監督Genrikh Oganisyanの遺作。彼は本作品公開(1963年)の一年後に46歳の若さで亡くなってしまったため、キャリアそのものも短く、長編映画は三本しか残していない。そもそも長編デビューが1961年という遅咲きだったのも作品を残せなかった原因の一つなのかもしれない。

1960年代中期。モスクワで暮らす三人の青年男子(獣医師のロマン、外交官のヴァディム、物理学者のステパン)は黒海に車でバカンスにやってくる。誰もいないビーチにテントを張って、文明の利器から離れた生活を送って楽しもうとしていた。典型的な陰鬱ロシア系映画では考えられないくらい陽気な音楽で幕を開け、砂浜ではしゃぎまくる青年たちを瑞々しく映している。『ブレードランナー』も驚きの原色で不味そうな食事も美味しそうに(まぁちょっと嫌そうではあるが)食べている。

するとその浜辺に、若い女性二人組(トレーナーのゾヤと女優のナターシャ)がやって来て、自分たちの場所だと主張し始める。毎年この浜辺でバカンスを過ごしていると言うのだ。証拠を見せろと詰めかける男たちに対して、女たちは埋めてあったワインを掘り返す。しかし、先に居たのは我々だと男たちは一歩も引かず、女たちは男たちの隣にテントを張って大戦争が勃発する。

とは云え、表面的には無視したり、持ってきたものを誇示したりするものの、水面下では全く乗り気でないステパンを除いてお互いがお互いを気にしているのだ。中学生の修学旅行かよ。ゾヤが仮病を使ってロマンに近付き、ナターシャは買い出しを理由にヴァディムに近付く。なぜかしかめっ面のステパン以外、みんなが常にニヤニヤしているのは可愛いと表現すべきなのかは悩ましいところだが、バカンスを満喫している感じは伝わる。イチャイチャしている二組のカップルのクロスカットにステパンの無人島生活並みのストイックな火起こしやら魚取りが描かれる。何やってんだよ、物理学者。

結局、それぞれが男たちの気を引いて、浜辺を譲ったように見せかけることで立ち退かせるという、女たちの策略ではあったのだが、彼女たちも既にその気になっており、悲しんでいるところに男たちが帰ってくる。大団円。恐らく、物理学者のステパンが頭をフル回転させたのだろう。っていうかお前、100分間何してたんだよ!ふくれっ面で魚取ってただけじゃねえか!

流石にジャック・ロジエ『オルエットの方へ』とかアブデラティフ・ケシシュMektoub, My Love: Canto Unoと比較するのは可哀想だけど、結構楽しかった。バカンス映画は観ているこっちまで楽しくなるから最高だね。

・作品データ

原題:Tri plyus dva
上映時間:100分
監督:Genrikh Oganisyan
公開:1963年7月3日(ソ連)

・評価:77点

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