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レオニード・ガイダイ『作戦コード"ウィ"とシューリクのその他の冒険』第二話の可愛らしさが異常

超絶大傑作。こんな映画に出会うために沢山観てるんだよ!いきなり"その他の冒険"から始まるソ連の国民的大ヒットコメディ。私の周りで"ガイダイ"といえば東京外国語大学なのだが、私はこっちのガイダイも推していきたい。サイレント的なスラップスティックを換骨奪胎して音とカラーの世界に落とし込む、まさにジャック・タチなのだが、タチにある悲哀というエモさが欠けている分を軽妙な音楽と見事なカット割りで圧倒的な幸福感を煽る正真正銘"最高の映画"。さすがは"ソ連の喜劇王"と呼ばれるだけある。

純朴な大学生シューリクを巡るスラップスティックで可愛らしいコメディのオムニバス映画。"模範的なコムソモール員の普遍的なイメージ"として国民的ヒーローとなったらしい。それは非常に良く分かる。何が楽しいって主人公がわざとらしい馬鹿げた行動をしないとこ。"こんな馬鹿なことやってます"みたいな憎たらしい強調が一切存在せず、斜め上の行動を淡々と行うことでいつの間にかシューリクの虜になっているのだ。

第一話
席を譲らなかったことでシューリクと口論になった中年おじさんが15日間の労働奉仕を命じられ、やってきたのがシューリクと同じ建設現場だったという話。ガイダイの手にかかれば建設現場すら追いかけっこのステージに華麗に変身し、華麗な音楽と流麗なカット割りによって初期キートンのような可愛らしい世界が無限に広がってゆく。

第二話
テストを控えたシューリクがレジュメを探して周り、リダという女学生が熟読しているレジュメにたどり着く。無意識と意識を華麗に見つめた反復に思わずため息が出る。無意識だと出来たことが意識すると出来なくなる、という恋に落ちた人の行動を別の行為に置き換え続ける華麗さたるや。そして、シューリクが反復に気が付くと、リダは"サイキックだ"と返す可愛らしさ。恋に落ちた男女の切り返しに泣く。

第三話
見るからに間抜けな三人組の男が強盗に協力する冒頭は単調で退屈だが、シューリクが出てきてからグッと楽しくなる。なんせ初登場時子守唄で大家に支払いを済ませるのだから。大家に代わって警備をしていたところに例の三人がやってくる。ここからのスラップスティックは普通っちゃ普通だが楽しめる。

私もこんな男になりたかった。このジェフ・ゴールドブラムっぽい好漢に。

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