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エイリーク・スヴェンソン『HARAJUKU』 マッチ売りの少女と夢の国"ハラジュク"

去年の年末に公開されて話題になった"原宿"って題名のノルウェー映画。実際に原宿かどうかというのは中心的な問題ではなく、日本のアニメから妄想を膨らませて頭の中に広がった逃避先の"安寧の地"を単に"ハラジュク"と呼んでいるに過ぎない。だからこそ、主人公ヴィルデはそこを目指そうとするが、15歳の彼女にはどうにも出来ない。そんな"幸福国家"北欧のノルウェーで起こる小さな事件を描いたのが本作品である。

クリスマスと言えば、欧米では日本以上に家族と過ごすことが一般的になっている。しかし、サンタのコスプレをした楽隊の演奏が響くクリスマスのオスロ中央駅で仲間と屯しているヴィルデには、おおよそ関係のない行事だ。面倒な母親とのクリスマスをすっぽかして友人たちと遊ぶヴィルデは母親が自殺したことを知る。その後は彼女の現実からの逃避(アニメ、ユートピアとしてのハラジュク)と、ソーシャルワーカーからの逃避を重ね合わせた地獄めぐりが展開される。加えて、クリスマスという状況も追い打ちを掛ける。一年で子供にとっては何度かしかない幸せな日であり、しかも幸福国家という二重に掛かった一般化された"幸せ"の呪縛。何年も会ってない父エイナルも登場するが、彼だって家族と過ごしたいし、しかしヴィルデだって血の繋がった家族であるし、というジレンマが辛い。

一番印象的なシーンは、航空券のために関係を迫られたヴィルデがアニメ世界に逃げ込む妄想で、現実逃避としてのアニメという位置付けを見事に映像化していた。しかし、物語の結論としてはありきたりなもので、『ハラジュク』という題名は目を引くものの、そこまで新規性を感じるものではなかった。何度も映画化するってことは現状が変わってないことと同値なので、早急に対応すべきではあるんだが。

・作品データ

原題:Harajuku
上映時間:83分
監督:Eirik Svensson
公開:2018年11月23日(ノルウェー)

・評価:60点

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