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ストーリーテリングのトレーニング素材集 - Story telling training materials

はじめに

Tableauによるストーリーテリングは、データ分析の総合的な能力を要求します。この記事では、なぜそれが難しいのかの理由を考察したうえで、あなたが持っているスキルを出し切るためのトレーニング素材と、その使い方を紹介します。なお、本記事ではストーリーテリングに重きを置いており、分析の妥当性や、高度なテクニックの利用の可否は問うておりません。

データの理解と表現の無限ループ

まず、なぜストーリーテリングのトレーニングが必要なのか説明します。データ分析と視覚化のプロセスは、TableauではVisual Analytics cycleと呼び、図1のように6つのステップがあります。

図1.Visual Analytics circle

このうち、Choose visual mapping , View data, Develep insight の3つのステップが本記事の範囲です。さらに単純化すると、今回取り上げるのはそのうちの以下の2つの要素です:

データの理解:データについての理解を得る
データの表現:理解したデータを他者にわかりやすく伝える

これらは絶え間ないループとなって展開します。

最初に、データを理解しようと試みます。そして、その理解を基に表現を試みます。これで1サイクルです。表現すると新たな視点や疑問が浮かび上がります。この新しい発見がまたデータの理解を深めます。さらにその理解が新しい表現を生み出します。このような形で、あたかも終わりなき無限ループのような状態に陥ります。

データの完璧な理解を一度で得ることはできません。慣れたデータならともかく、新しいデータではループ現象が起きがちです。とくに時間が限られている場合、終わりのないループは分析者にとって大きなストレスとなります。途方に暮れてしまうこともあるでしょう。

データには多数の切り口があり、求められているビジネス課題もまた千差万別です。そのため、いわゆる組合せ爆発が起きます。途方に暮れるのは、指数関数的に切り口と解法のパターンが出てしまっているためです。この爆発を収束させて、この果てしないループから抜け出す。そしてデータからストーリーを構成するには、特定の文脈が必要です。これが課題です。

不完全な5W1H=課題

課題によって条件を絞り込むことができます。条件とは、誰が、いつ、どこで、何を、どうやって、の5W1Hに落とし込むことができます。しかしながら、課題の5W1Hは明確ではありません。当たり前です。それを明確にするためのデータ分析+アクションだからです。言い換えると、課題とは不完全な5W1Hの状態です。

証明できない5W1H=仮説

さらに言えば、実は依頼者の課題オーナーからすると既に5W1Hが明確な場合はあります。しかし客観的な根拠はない。これが仮説の状態です。もちろん仮説が誤っていて、別の原因が仮説に上がる場合もあるでしょう。いずれにしても、それをデータで確認しなければなりません。

アクションとプレゼンテーション

しかしながら、既にあるデータでは、証明するには事足りない場合もあります。その場合は、証明に必要なデータを集めなければなりません。ここでデータ収集のためにビジネス上のアクションが必要です。

ところが、データ分析者はビジネスの当事者でないことが多いです。となると誰かにアクションを依頼することになります。アクションには時間と労力とお金、つまりコストがかかります。そのためアクションしてもらうためには、説得力を持って仮説をステークホルダーに説明しなければなりません。そして説得力を持ったプレゼンテーションには有効な視覚化とストーリーが必要であり、ストーリーテリングの手法が用いられます。

前置きが長くなりましたが、以上がストーリーテリングが重要な理由です。そして、世の中にはストーリーテリングを鍛え上げる機会や素材が少ないです。いきなり実践するのは忍びないので、本稿を起稿しました。

トレーニング

下記に準備した複数の小テーマこそが特定の課題です。これをサンプルにして膨大なデータの組み合わせパターンから、特定の文脈を抜き出します。そして、不完全な5W1Hに対する仮説を導き、ステークホルダーにプレゼンテーションして次のアクションにつなげます。これらのいくつかに取り組むことで、対応力を鍛えられます。進め方を読んで実践してみて下さい。

進め方

役割

次の役割の人を決めて下さい。

  • 指導を受ける人

    • 自分のストーリーテリングに難点を感じていて、指導を受けたい人です。

  • トレイナー(指導する人)
    受け手への伝え方を心得ている人です。単なる技術者では務まりません。Tableauの熟練者である必要はありますが、むしろTableauを使ってデータ分析を行い、プレゼンテーションを何度も経験していることが望まれます。

手順

  1. トレイナーは指導を受ける人に小テーマを提示して下さい。作成時間を教えてタイムキーパーをして下さい。作成時間はテーマに応じて15分~30分として下さい。

  2. 指導を受ける人は小テーマに沿って分析レポートを作成して下さい。

  3. トレイナーは作成時間終了を告げて下さい。

  4. トレイナーは指導を受ける人に依頼し、Tableauの画面共有してもらい、作成したストーリーの説明を受けて下さい。

  5. トレイナーは、指導を受ける人のシナリオに沿って、指導を受ける人に操作を指示する形で、ダッシュボードを改善して下さい。操作を覚えてもらうためにも、決してトレイナーは操作しないで下さい。

  6. トレイナーは、あくまで分析レポートの受け手としてふるまって下さい。

  7. ダッシュボードを改善する観点は次の通りです。分析自体の正しさは度外視しています。ストーリーの伝わりやすさだけに焦点を当てています。

    1. ストーリーが分かりやすく伝わるか

    2. 結論から語っているか

    3. 少ないページで語っているか。

    4. ダッシュボードやストーリー機能を使っているか

    5. ストーリーに筋道があるか

    6. 行ったり来たりしないか、順序が整っているか

    7. 視点の導線が明確か、迷わないか

    8. 導線が左上から右下へスムーズに移動できるか

    9. ワークシート、ダッシュボード、ストーリーともにタイトルをつけているか、タイトルは適切か

    10. データで語っているか、言葉に頼っていないか

    11. ポイントを色で目立たせているか

    12. 色数が多くて混乱していないか

    13. デザインがシンプルか

    14. 重複した情報がないか、

    15. 重要な文字やチャートが見やすいか、不要な文字が目立っていないか

    16. 不要なシートが削除、もしくは非表示になっているか

    17. 総合的に見て受け手のことを考えて作成されているか?

小テーマ

これらの小テーマでは全てサンプルスーパーストアのデータを使用します。

1:都道府県ごとの利益の傾向を分析してください。利益が低い都道府県のデータから、原因を探り示してください。

2:スーパーストアの商品を利益率に基づいて、製品の選択と集中をする場合、どのような戦略が考えられるか、具体例を挙げてプレゼンテーションしてください。

3:売上強化のために、売上金額上位30位の大口顧客が、どういった人物像かを推定して示して下さい。

4:各年ごとのリピート顧客の売上の割合を示して、リピートにどういった傾向があるか示して下さい。

事例

随時アップします。

オリジナル(Yさん):
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オリジナル(Tさん):
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