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小学校のスケジュールは破綻の瀬戸際?

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、子どもたちの学校が休校となっている地域も多いかと思います。みなさま、いかがお過ごしですか。わが家は順調に中だるみモードに入っています。つらい。

さて、来月。新型コロナの猛威が過ぎ去って、予定通り登校再開となったとします。

「ヤッター!よかったね!これでオールオッケーだね!」、、、とは、残念ながら、ならない。そう、4月に失った分の授業時数をどこかで取り返さなければいけないからです。

1. 小学校における新学習指導要領の全面実施の余波

タイミングが悪いことに、今年度(2020年度)は小学校における新学習指導要領全面実施の年でした。目玉である英語の必修教科化により、年間35時間、授業時数が増えることが決まっています。

ただでさえ過密スケジュールになっている小学校では、それぞれの小学校ごとに、

・年間の登校日数を増やす
・授業時数を週1コマ増やす
・1日のスケジュールをやりくりして細切れの時間を捻出する
・逆に、長時間授業を新設する

などなど、大変な苦労をして全校をあげての時数確保の体制づくりを進めていたところでした。それが新型コロナでいきなりふっとんだ。

高学年の1週間のスケジュールはパツパツです。失った分の授業時数は、もう登校日を増やして巻き取るしかありません。すでに2週間程度の夏休みの短縮がアナウンスされている自治体もあるようです。

もし予定通り、5月上旬に登校を再開できれば、これで対応はできるでしょう。しかし、5月に登校再開ができなかったら…???

2. オンラインで授業に出席⁉

当然ながら文科省も登校再開ができなかった場合のリスクについて想定しているようです。4月7日に発表された「文部科学省 緊急経済対策パッケージ」においても資料の端々から見て取れました。

たとえばこちら↓

無題1

登校できない児童生徒が(中略)ICTを活用した学習を行った場合等において、その学習状況や成果を、授業に参加した場合と同様に評価することができる旨を、速やかに通知予定」という、かなり踏み込んだ方針を打ち出しました。

ICT環境が備わっていない家庭や児童への配慮も忘れていません。同じ資料には以下のような文言も。

・義務教育段階の 「1人1台端末」 の整備を前倒しするとともに、障害のある児童生徒に対応した入出力支援装置の整備を支援
・学校が整備する端末を家庭で活用する際のガイドラインを策定
・Wi-Fi環境が整っていない家庭に対する、LTE通信環境(モバイルルータ)の整備を支援
・著作権法改正を早期に施行し、オンラインでの指導における著作物の円滑な利用を促進

いままで教育のICT化をちんたらちんたら進めていたのはいったい何だったのか?と訝しく思ってしまうくらい、手のひらクルーなアグレッシブな施策の数々。やつらは本気だ。

3. オンライン授業はうまくいくのか

オンライン授業の環境が早期に整ったとする。それで万事うまくいくかって? そんなわけはない。「繋がらない」「操作がわからない」「対面型授業で培ってきたノウハウが活かせない」…などなど、そりゃあもうびっくりするくらい、トラブルだらけになること間違いなし。

そしてとにかく準備する先生方の負担がハンパない。まともにやったら授業準備以外のことなどやる余裕はなくなるのでは。結果的に、校務分掌、学校行事、PTA活動などの周辺業務や付帯業務はシビアに見直されるきっかけになると思います。なぜなら、いまや学校は教職員の働き方改革も同時に進めなければならないから。

昨年12月には改正給特法が成立したばかり(施行は2021年4月~)。先生方の残業時間の指針が法的に位置付けられました。この制度自体に業務削減の効果はないものの「教師でなければできないことに教師が集中できるように」という大きなトレンドは変わりません。先生方の使命感や無制限の献身を拠り所としてこの難局を乗り切ろうとする方策はもはや取れないのです。

…とまあ、いろいろ書きましたが、実際問題、オンラインでの授業をすべての家庭・児童に対してあまねく実施できる環境を整えるだけでも、少なくともあと1年はゆうにかかるのではないかと個人的には思っています。となると、もし5月以降まで休校期間が延びてしまったら。いったいぜんたいどのような落としどころにするんでしょうね。想像もつきません。

4. 解決の糸口とこれからの時代に求められる資質

新学習指導要領で実現をめざすのは、子どもたちの「主体的・対話的で深い学び」。真に自主的に学ぶ児童を育む気概があるのなら、オンラインで始終つながっている必要なんて、もしかしたらないのかもしれません。登校ができない時期は、知識技能の「活用力」を伸ばす期間と割り切って、プロジェクト型の課題を中心とし、オンラインでは進捗の確認や助言、あるいは、児童同士が成果を発表したり共有したりする場にすればいい。低学年の児童には難しいかもしれませんが、高学年であれば十分対応可能だと思います。少なくとも、始業から終業までオンラインでつなぎっぱなしで先生がレクチャーするスタイルよりもずっと現実的。

「主体的・対話的で深い学び」を子どもたちに期待する以上、大人である先生たちも、目の前に急遽あらわれた社会課題に対して挑戦する姿勢、試行錯誤を繰り返しながら失敗から学ぶ姿勢を、臆することなく見せることが、子どもたちにとってなによりの「教材」になりえると信じています。


思いもよらぬ疫病に、日常の「あたり前」を打ち砕かれた2020年春。今にして思うと、これまでの教育システムは「昨日と変わらぬ今日があり、今日と変わらぬ明日が来る」という極めて楽観的なフィクションのうえに成り立っていたのだなあと感じます。またそこで育まれる子どもたちの資質も、いつもと変わらぬ基盤があってはじめて高いパフォーマンスを発揮できるものだったのではないでしょうか。

Twiiterでフォローさせてもらっている方のつぶやきで知ったのですが、今の世界情勢のように社会経済環境がきわめて予測困難な状況に直面しているという時代認識を、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)、それぞれの頭文字をとって【VUCA】と呼ぶのだそうです。

「主体的・対話的で深い学び」を本当に身につけることができるならば、【VUCA】の時代もきっとサバイブすることができる。そのためになにができるのか、なにをすべきなのか。まだ事態が収束していない中でこんなことを言うのは少し気が引けますが、絶体絶命のピンチをチャンスへと変えていけるように、今後の学校の取り組みには期待したいと思いますし、家庭の側からもできるかぎりのサポートをしていきたいと心づもりをしているところです。

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