見出し画像

名画ウッディ・アレン「ザ・フロント」

名画座です。「ウディ・アレンのザ・フロント」

≪あらすじ≫
舞台は1950年代初頭のニューヨーク。かつてハリウッドで活躍していた脚本家たちも、テレビドラマの脚本を手がけるようになり、ニューヨークの放送局などで働きはじめていた。しかし、その中の一人、アルフレッド・ミラーは、既に共産主義者あるいは同調者の名前を集めたブラックリストに載っており、テレビの仕事ができなくなっていた。
ある日、いきつけの店のマスター、ハワード・プリンス(ウディ・アレン)に名前を貸してほしいと依頼する。ハワードが代理となり、数名のブラックリストに掲載されている脚本家仲間が書いた脚本のために名前を貸す。プロの脚本家が書いた台本によるドラマは好評を得て、ハワードは一躍人気者になる。やがて調査スタッフは、ハワードに目をつけ、非米活動委員会に召喚する。

最近は色んなスキャンダルで火の車状態のウッディ・アレンです。
養子がどうのこうのと込み入りすぎて、部外者には何が何やら分かりません。

ウッディ・アレンの代表作「アニー・ホール」って好きですか?私はあれ、何がいいのかさっぱり分かりません。「時間の無駄」としか思わなかったです。インテリおやじが拗らせた恋話するみたいな。過大評価?と思ってました。私は、情緒とか理解できないんですよねぇ。

この作品はあらすじに惹かれて観たんです。

50年代アメリカで吹き荒れたマッカーシズム、反共産主義ムーブメント。
冷戦崩壊の時に二十歳の自分には、共産主義ってリアリティないです。
でも、60年代とかは本気で信じていた人が世界中に沢山いたんですよね。にわかに信じがたいですね。

フロントを観ると、リアリティあるんですよ。当時の雰囲気。コメディとか言ってますけど、かなりシリアスなテーマです。

干された俳優(ゼロ・モステル)が自殺しちゃったりしますし。全然笑えねぇw 笑えるのは前半だけで、後半はハラハラ見入っちゃいます。

脚本がウォルター・バーンスタイン、監督がマーティン・リット。どっちも実際に共産主義者としてリストアップされて実際にエンタメ業界から干されてしまった人達。

バーンスタインさんはタッチダウン、ヤンクス、ベッツィーなんかの脚本もやってるそうなんですが、私は一つも知りません。俳優陣もそういう人を沢山起用しているみたいです。

この作品でウッディ・アレンは、脚本も監督もやってないです。なのに邦題「ウッディ・アレンのザ・フロント」なので、まさにフロント(表役)。

自分で監督・脚本やってないからか、とてもカッコいい役柄になってます。反共議員に詰問される非米活動委員会で逆ギレする、チャップリンの「独裁者」的な最後。純粋な俳優としてのウッディ・アレンということでしょうか。

レビューを読むと、ウッディ・アレンファンは、「なんか違う」って書いてますね。「違う」で終わる人と「なんか違うけど、これはこれで良い」という人といますね。自分は、そもそもウッディ・アレンのファンではなかったので、少数派の「これこそが良い」派です。

ウッディ・アレン自身は、恋だの愛だの、あるいはギャグだの皮肉に執心するタイプで共産主義者ではないでしょうが、かといって共産主義を弾圧するのも違うんじゃない?それって本当に正しいの?というバランス感覚を見せた作品なのかな、と思います。

この作品が良かったので、以降割とフェアにアレンを観れるようになった気がします。スカーレット・ヨハンセンが出てた「マッチポイント」も、よく出来てるなと感心しました。

あえて10点満点で評価するなら9点。10点あげてもいいんですけど… マッチポイントは8点くらい。

頂けるなら音楽ストリーミングサービスの費用に充てたいと思います。