マトモス「The West」(1999)
マトモス(Matmos)は、アメリカ合衆国の電子音楽デュオ。
また、二人はゲイ・カップルであり、ゲイ雑誌である『BUTT』のインタビューも受けた。
こう書くと異色、キワモノ感の印象を受けるが、この「ザ・ウェスト」はダウン・ビート/トリップ・ホップ/グリッチ的な作風のある意味極めてオーソドックスな作り。
ベックの「メロー・ゴールド」や「ミューテーション」からボーカル/ラップを抜いたような音で、ブレイク・ビーツ色の強かったケミカル・ブラザーズのファースト「Exit Planet Dust」的な曲も伺える。
「ザ・ウェスト」の魅力は、全体的に見て実験的というより、ヴィンテージ/ノスタルジックな印象。ボトルネック・ギターの音色が強調された曲などブルース/カントリー/ジャグ・バンド的な雰囲気も漂う。
『ア・チャンス・トゥ・カット・イズ・ア・チャンス・トゥ・キュア』は非常にコンセプチュアルな作品だった一方、この「ザ・ウェスト」は、マトモスの実際的な音楽制作能力の高さを示した。
ある意味マチスやピカソのように一見下手な絵を描くアーティストに真剣に写生させたらとても上手だった、というような作品。
「ア・チャンス~」とこの「ザ・ウェスト」、二つの作品によって、マトモスがその辺りのヘッズ(ビートメイカー)とは、全く個性の異なる、破格のアーティストだということが露わになった。
そして、この「ザ・ウェスト」の路線を継承・発展させて名作「The Civil War」に繋がっていく。
彼らのキャリアとしては、地味な作品、位置づけながら、彼らの音楽の魅力の原型であり、才能の爆発の兆し、もう核心を「掴んでいる」感じが伝わる一枚。
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