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イギリス電子音楽のパイオニア ホワイト・ノイズ"Firebird"(1969)

こんにちわ。今日はオススメ音楽です。イギリスの実験音楽集団ホワイト・ノイズによる"Firebird"(1969)です。

この曲は、ファーストアルバムの「エレクトリック・ストーム」(1969)に収められています。

ホワイト・ノイズは、1968年にロンドンで結成されたイングランドの実験的な電子音楽バンド。物理学と電子工学のバックグラウンドを持つクラシック・ベース奏者であるアメリカ生まれのデヴィッド・ヴォーハウスが、BBCレディオフォニック・ワークショップの音響科学者であったデリア・ダービーシャーによる講演会に出席した後に結成。(Wikipedia)

このアルバムは、さまざまなテープ操作技術を駆使して作成され、最初の英国製シンセサイザーであるEMS Synthi VCS3が使用されている。特にアルバム最初のトラック「Love Without Sound」は、ヴァイオリンとチェロの音を作成するためにヴォーハウスの演奏するダブルベース(ウッドベース)をスピードアップしたテープ編集が採用されている。

要するに録音したベースを早回ししてヴァイオリンとチェロの音色にした、ということのようです。そんな風に聞こえませんが、かなり面倒なことをしています。普段楽器を右腕で弾く人が敢えて左で演奏しました、みたいな雰囲気がアルバム全体に漂っています。

アルバムは今日では電子音楽史において重要かつ影響力のあるアルバムと見なされ、ジ・オーブやジュリアン・コープ、ピーター・ケンバー、ブロードキャスト、Add N to(X)といったバンドの現代的なライブ演奏に影響を与えた。

デヴィッド・ヴォーハウスは、イギリスにおける電子音楽のパイオニアの一人に数えられています。名盤エレクトリック・ストームでもっとも長尺のこの曲では、その実験性が余すところなく発揮されています。

初めて聴いたとき、私は1969年にアイランド・レコードから出ていることに衝撃を受けました。アイランドといえば、60年代のフェアポート・コンベンションやトラフィック、70年代のボブ・マーリー、80年代のU2やワールド・ミュージック(キング・サニー・アデなど)と売り出すジャンルが変遷してきたわけですが、その端境期にこんな実験音楽にまで手を出していたのです。

しかも、2枚のシングルを聴いたアイランドの創設者クリス・ブラックウェルが直々にアルバム制作を持ち掛けたとのことです。デジタル全盛の今聴くとよくある手法かもしれませんが、当時アナログでこれをやるのは相当覚悟がいったでしょう。

1969年といえばウッドストックとビートルズの終焉、ハード・ロックやプログレの胎動期。そういう時代にこういったミュージック・コンクレートを、一級作品として作り上げていたデヴィッド・ヴォーハウスの先見性は、「ペット・サウンズ」を作ったブライアン・ウィルソンに匹敵するのではないでしょうか。

楽曲としてはソフト・ロック調なのですが、元々ベーシストだからか、かなりポップなソングライティングになっているのも、クリス・ブラックウェルの好みだったのかもしれません。

頂けるなら音楽ストリーミングサービスの費用に充てたいと思います。