美しい景色のために、リスクをとる。
美しいライレイビーチを高い位置から見ようと、軽い気持ちで登り始めた。
この時は、命がけで絶景ポイントまで行くことがあるなんて想像もしなかった。
そこには山道とはいい難い、崖が目の前に立ちはだかっていた。
特に「ここから登るんだよ」といった標識もなく、あるのはロープのみ。
山登りではなく、崖登りだ。しかし、他の旅行者は一度は躊躇するものの、崖を登り始める。
もちろん命綱のような代物はなく、万が一、崖から落下したとしても自己責任だ。
人間とは不思議な生き物で、危険でやってはいけないものが目の前にあると、ついうっかり手を出してしまうものだ。
また、苦労すればするだけ、美しい世界が上で待っていると錯覚してしまう。
幸いにも、山全体の地質が粘土質のため足が滑ることはなく、また凹凸があって登りやすい。
ただ、ご家族連れは絶対にオススメできない。
自分のような感覚で動いてしまう愚かな旅行者にはぜひ登っていただきたい。
もちろん「自己責任で」だ。
鈍い音が鳴り響く
スタート地点からいきなり崖を登り始めるのだが、心のどこかではすぐ終わるものだと思っていた。
しかし、そんな期待とは裏腹に、ずっと急な崖が続いている。
ある程度登ると、もう下を見ることができない。
すると下の方で突然、「ドンっ」と鈍い音が鳴った。
山を登っていた旅行者たちは「まさか!」と思って一斉に下の方を見た。
「ついに誰かが崖から落ちてしまったんじゃないか」
崖につかまっていた人はそう考えたに違いない。
下の方をよく見ると、2Lのミネラルウォーターのペットボトルが転がっている。
誰かがペットボトルを持ちながら登ることに限界を感じたのだろうか、上から投げたらしい。
なんとも紛らわしい行為だ。
「自分はなんて危険な旅をしているんだ」と少し後悔してしまったではないか。
感動をとるか、安全をとるか
そんな小さなハプニングもあって、無事山頂にたどり着いた。
景色は確かに綺麗だった。小さく細長い島であるため、反対側のビーチまで見える。
熱帯地域特有の木々が生い茂り、美しい海が広がっている。
ただ、このような景色はこれまでもたくさん見てきた。
そして、この景色までの道のりがあまりにも険しかったので、景色を見るまでの「コスパ」をつい考えてしまっていた。
よくない。こういう時は素直に感動し、眼前に広がる美しい景色をありのままに受け入れなければならない。
景色を見た時は、美しさに感動したというよりも、崖を登りきった達成感によって心が満たされていた。
後日、チキン島へ
そんなクラビの旅も終焉を迎える。
その翌日は、チキン島に向かった。
たどり着いた直後、すぐに海に入りシュノーケリングを楽しんでいたが、王様がその島に来られるということで、島にいた旅行者全員が他の島に移った。
そして次にたどり着いた島が、前日行ったライレイビーチだ。
今回は島の反対側に到着したため、すぐには気づかなかったが、海の透明度といい、島の雰囲気といい、どこか見たことがあるような景色だったので、マップで確認すると、やはりそうだ。
ライレイビーチに戻ってきてしまった。
仕方なく、海で泳いでいると、何かが流れてくる。
その物体の正体がわかった瞬間、軽い悲鳴をあげた。
まさか、あんなものが流れてきたなんて。
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