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ドラクエ10をオンラインゲームという理由で食わず嫌いでいる人に向けたテキスト

2月にふと思い立って書き始めたノートだけれど、先日フォロワー数が1,000を超えたので、記念というわけではないけれど、いつもとはまるで違うテキストを書いてみることにする。一気にフォロワーが減ったらどうしよう(笑)。

さて、タイトルにあるように本稿はゲームソフトのドラクエ10に関するテキストである。これまで書いてきたビジネス寄りのテキストたちとは一切の関連がないので、興味のない人はここまでということで、勝手に先に進める。タイトルが気になった人か暇な人だけ読んでもらえたら。

ドラゴンクエストとは

ドラゴンクエスト、通称ドラクエは派生タイトルも多いのだけれど、ナンバリングといわれる「本編」シリーズは、2016年に30周年を迎え、2017年夏に11作目が発売された国産ゲームの代表作のひとつと言って良い存在である。最新作のドラクエ11は300万本以上を売り上げ、いまだに大型タイトルであることを証明した。PS4と3DSという異なる特性のハードウェアで開発・発売ということでも話題となり、遊ばないまでもニュースなどで目にした人はそれなりにいるのではないかと思う。

そんなドラクエ11が発売されて1ヶ月ほど経過した2017年秋口に「終わらないドラクエ」というキャッチコピーでTVCMが流れていたのを観たことがある人も多いのではないだろうか。

そのTVCMは順序的には過去作に当たる「ドラクエ10」のもので、発売元のスクウェア・エニックスとしては、ドラクエ11をクリアしたユーザをターゲットに、ドラクエ10に誘導するのが狙いである。

ここで疑問に思う人も多いと思う。ドラクエ10は2012年に発売されたゲームソフトであり、5年も前のソフトにTVCMを打ち、ユーザを誘導するというのはなぜなのか?と思うだろう。ここでドラクエ10について簡単に説明する。

ドラクエ10とはどういうゲームなのか

2012年夏にWii向けゲームソフトとして発売された、ドラクエの正統な10作目のナンバリングタイトルである。ドラクエは常にその時点で最も売れているハードウェア向けに発売するという王者の戦略なので、当時の勝ちハードであるWii向けに発売されたのは当然といえる。

ここまでは特に不思議なことはない。ただ、ドラクエ10はそれまでの9作品とは異なる特徴があった。それは「オンラインゲーム」だということ。これに当時のドラクエファンの多くはネガティブな反応をした。

ドラクエをご存じのない人に簡単に説明すると、ドラクエはRPG(ロールプレイングゲーム)というジャンルのゲームであり、プレイヤーがゲーム内の主人公キャラクターを演じる(=ロールプレイ)ことでゲームが進行していく。ドラクエの過去作ではプレイヤーは「勇者」となり、物語を進めその世界の悪を滅ぼし平和をもたらすことが目的となる。このあたりは何となく想像がつくのではないかと思う。過去9作とも、登場人物やストーリーに違いはあるもののこのフォーマットに則っていることに大きな意味では違いはなかった。

オンラインゲームに対するネガティブな反応

しかしながらオンラインゲームであることが、ドラクエファンの心に大きな不安をもたらした。オンラインゲームである以上、ゲーム内の世界には他のプレイヤーが存在する。自分が主人公であるはずなのに、他のプレイヤーも存在している世界。ずっとオフラインゲームで遊んできたドラクエファンは、ある種の様式美となっているフォーマットの中で、箱庭的な世界で冒険を楽しみたかったのに、他のプレイヤーが存在する世界ではこれまでのドラクエ的世界を楽しめないのではないかと多くの人が危惧した。

ドラクエらしくない?

また、オンラインRPG、とくに、MMORPG (Massively Multiplayer Online Role-Playing Game/大規模多人数同時参加型オンラインRPG)といわれるジャンルは、マニア向けのイメージが強く、その意味でも初心者向けで間口の広さがウリのドラクエ的世界観とは相容れず、ドラクエ10とは名乗っているものの、ドラクエの皮を被った全く異なる世界観やターゲットユーザを想定したタイトルなのではないかという懸念が広まった。

事実、先述の通りドラクエ11は300万本以上売れたのに対して、ドラクエ10は100万本程度と言われている。(後述するが、ドラクエ10は複数バージョンに分かれているため販売本数がカウントしづらい)

数字に如実に表れているが、ドラクエ10は他のナンバリングタイトルの中で群を抜いて売れていない。最新作のドラクエ11が300万本以上も売れるだけに、如何にドラクエ10がドラクエファンからスルーされているかがわかる。

さて、ここからが本稿の本題である。

ここで反論を試みる

先述したような「ドラクエらしさ」が失われ、要は「面白くない」のであれば、単にナンバリングタイトルの失敗作として話は終わる。しかしここで反論を試みたい(笑)。所詮ゲームであり、面白い・面白くないは個人の主観である。個人が勝手に判断すればよい。にもかかわらずここで敢えて書くのは、スルーしている「ドラクエファン」が多数いると思うからである。言い換えると食わず嫌いのファンがいるということであり、それならばドラクエ10の魅力を伝えてみようではないかと思った次第である。

スルーしてしまうには惜しいゲームであると僕は強く思っているからであり、ドラクエに興味がないユーザならばともかく、ドラクエファンであるならば、ぜひ遊んで見て欲しいと強く思うので、その観点でドラクエファンの心をくすぐりに掛かってみたい。

以下に、いくつかの観点でドラクエ10の特徴や他のナンバリングタイトルとの比較をしてみる。

主人公キャラクター

オンラインゲームの特性上、今回の主人公キャラクターはいわゆる「勇者」ではない。勇者が何人もいては困るからである。が、それは定義の問題であり、実態としては、主人公は物語を進め、成長し、仲間を作り、敵を打ち倒す。紛うことなくドラクエフォーマットに則った構造である。

ドラクエ10は5つの種族(オーガ・エルフ・ウェディ・ドワーフ・プクリポ)と6つの基本職(戦士・武闘家・僧侶・魔法使い・盗賊・旅芸人)から、それぞれ1つを選択し物語を進めることになる。2018年3月現在、最初に選択した種族をあとで変更することはできないので、種族選択は慎重に行った方が良い。ただし、以前は種族によるステータス差があったが今は無くなったので、単純に好みで選んでしまって問題ない。職業は、従来のドラクエ同様、あとで変更(転職)できるので深く考えなくて大丈夫である。従来のドラクエとの違いがあるとすれば、人間を選択できないことくらいだろうか。深くは説明しないが大きな問題はないと書いておく。

仲間キャラクター

従来のドラクエの場合、物語を進めていくと仲間キャラクター(NPC/Non Player Character)と出会い、一緒にパーティーを組むことができる。ドラクエ10の場合、ここが異なる。ある意味、最大の相違点がここではないかと思う。

一部の例外を除いて、物語を進行させてもNPCは仲間にならない。もちろん物語上、NPCはたくさん登場するし、行動を共にすることは多々あるが、ドラクエシステムにおけるパーティーとは、戦闘において一緒に戦うか否かである。その意味ではNPCは一緒には戦わない(例外あり)。では代わりに誰が戦うのかというと、それは自分以外のプレイヤーのキャラクターである。他のプレイヤーと仲間を組み、一緒に冒険するのがMMORPGとしての醍醐味と言える。

が、、、

「そうだよなー。それが嫌なんだよ」という声が聞こえてくる。おそらく、オンラインゲーム版のドラクエが最も敬遠される理由がこれではないかと思う。

自分の世界に没入して、主人公キャラクターをロールプレイしながら、物語を進めていく中に、他のプレイヤーが操作するキャラクターが介入してきたら世界が台無しじゃないか。きっと多くのドラクエ10食わず嫌い王たちは思っているだろう。

わかる。オンラインゲームの最大の長所が最大の短所になってしまうのだ。もちろん、そんなことを気にせず、というよりむしろ一緒に冒険をして楽しんでいるユーザもたくさんいる。ただ本稿は、そういうユーザを対象としていないし、そもそもそういうユーザはこんなテキストなど読まないだろう。

まあしかし、心配するなかれ。そんなことは百も承知であり、そこにはうまいシステムが用意されている。他のプレイヤーはゲームをしていない間(=オフライン状態)、酒場に自分のキャラクターを預けることができる。ドラクエでパーティーを組むといえば酒場である。ここもドラクエフォーマット通り。

その預けられたキャラクターを、他のプレイヤーはNPCとして雇うことができるのだ。見た目やレベルや装備は、預けたプレイヤーそのままである。ただし、あくまでNPCなので勝手に動いたりはしない(戦闘はAI行動)。なので、他の生身のプレイヤーとのふれあいを拒絶し、あくまでNPCとともに物語を進めることは、オンラインゲームであるドラクエ10においても全く以て可能である。細かいことを言えば、一部のコンテンツは、生身のプレイヤー同士でパーティーを組んだ方がクリアしやすいものもある。ただ、それは一部のエンドコンテンツ(≒上級者向けのやりこみコンテンツ)だけなので、物語を進めるだけであれば一切問題ない。どうしてもクリアできないなら、ドラクエの王道であるレベル上げをするだけである。

ということで、ドラクエ10食わず嫌いの最大の難所を突破できたのではないだろうか。オンラインなど気にせず、ぼっちでも遊べるのである。オンラインなどくそ食らえである。(何のためのオンラインか、という話は後述するので、焦らず読み進めよ)

基本システム

ゲームの基本システムは、ほぼドラクエフォーマットに準拠している。ドラクエ独特のコマンドダイアログを踏襲し、先述の通り、職業・転職システム(2018年3月現在の職業数は17)、経験値によるレベルシステム(2018年3月現在のレベル上限は100)、などはどこからどう見てもドラクエである。

ドラクエ8ゆずりの3Dビューであるが、ゼルダの伝説BoWのようなオープンワールドではない。余談だが、2012年発売当初はWii版のみだったが、昨年秋に遂にWii版のサポートを終了し、現在のバージョン4からはWiiU / Switch / PS4 / Windows / 3DS (クラウド版) / dゲーム (クラウド版) のみの対応となった。低性能のWiiを切ったことで、バージョン4から下位互換性の制約が減り、質が向上している。

戦闘システム

ドラクエ伝統のコマンド選択式は健在。しかしながら、シリーズで最も進化を遂げていると言って良いと思う。コマンド選択式でありながら、コマンド選択中もリアルタイムに時間が経過し、敵も味方も行動し続ける新しいシステムとなっている。ただ、ドラクエ伝統のターン制が完全になくなったわけではなく、コマンド選択中もターンが蓄積されるので、意図的にコマンドを選択せずにターンを貯めてから連続で行動する、といった作戦を使うことができる(貯められるのは2ターン分まで)。

さらに最大の特徴として俗に言う「相撲」システムがある。簡単に書くと、戦闘に参加する敵・味方の全てのキャラクターが「干渉」する。これで「おっ」と思った人は素人ではない。詳しく説明すると、これはオンラインゲームでは画期的というか、変態的な仕様であり、キャラクター同士が干渉、即ち、ぶつかり、押したり・押されたりする仕様となっている。だから何だって話であるが、これを実現するためには、高頻度で座標情報をクライアントとサーバ間でやり取りしければならず、リアルタイム性のある戦闘システムであるから大きなタイムラグ(遅延)も許されないため、非常にシビアなシステムであると言える。

なぜ、こんな面倒なシステムを採用したのかというと、干渉という現象を活かして、相手の邪魔をする要素を戦闘に組み込むためである。

従来のドラクエ式コマンドバトルでは、基本的にはコマンドを選び、敵味方が一定のロジックに沿って順に行動して行くターンを繰り返すのが基本となる。それに対してドラクエ10では、戦闘フィールドの範囲内を敵味方が自由に動き、近距離攻撃をするために相手に近づいたり、相手を抑え込んで動きを止めたり、ひ弱な魔法使いが相手との距離を取るために逃げ回ったりするような遊びができるようになっている。言葉で説明するとわかりづらいが、従来のコマンド選択式から飛躍的に進化していると言える。

具体的には、戦士やパラディンといった前衛の重装備職が、敵の主力を押さえに行き、実際に押すことで相手の動きを止めることができる。実際に双方の重さのパラメータを見ており、それに依って押せたり、押し返されたりする。こうして押さえている間に、後衛の魔法使い職などが遠距離攻撃をして相手を完封するなどの戦術がふつうにゲーム内で行われている。

先述のリアルタイム性と合わせて、かなり従来のドラクエよりも戦術性の高い戦闘システムとなっており、やってみるとわかるが、かと言って複雑というわけでもなく、自然にプレイができる。先ほど書いた相撲による完封劇などは一部の強敵に使うと楽、という程度であり、通常の戦闘ではそこまでの行動は必要なく、後衛の僧侶を守るために前衛職が時間稼ぎでちょっと押さえるくらいのラフな行動は自然と覚えていけるはずである。

ちなみに、ドラクエ11もぱっと見は似たような戦闘画面だが、ドラクエ11は完全なターン制に戻っている(ドラクエ11は戦闘に限らず、ドラクエ10のシステムをいろいろ流用しており、それで開発を効率化していると思われる)。これは、ドラクエ10の戦闘システムが失敗だったと言うより、コマンド選択+相撲を含めた自由行動(位置取り)をソロプレイ専用のドラクエ11で選択する必要性がなかったからだと思われる。さらに蛇足で書くと、ドラクエ10のNPCの戦闘AIは相当洗練されているのに対して、ドラクエ11のAIは相当に阿呆である。これはリリース後5年の歳月を掛けてチューニングしてきた成果と言える。

成長システム

基本的には敵を倒したり、シナリオをクリアするなどして得た経験値でレベルが上がり、成長していくドラクエフォーマット通りのシステムとなっている。レベルアップするとスキルポイントが手に入るので、それを任意のスキルに割り振ることで、自分好みに育てていくことができる。2018年3月現在、各職業のレベル上限は100だが、100まで上げても全てのスキルを取得することはできない。ただし、スキルの振り直しが比較的簡単にできるので、必要に応じてスキルを振り替えて遊ぶことは常態化しており、それ故やや面倒と言えなくもない。まあ、振り替えなくても遊べるので、それは自由と言うことで。

なお、ドラクエは伝統的にレベル上限は99であったが、原作者の堀井雄二氏含めてスタッフ熟考の上で、昨年のバージョン4からドラクエ史上初めてレベル100が設定された。今後、レベルは100を超えて上限解放されることが既に公表されている。

メインストーリー

ようやくこの章にたどり着いた。この章のために本稿はあると言っても過言ではない。ドラクエ10を食わず嫌いの人に最も伝えたいのはメインストーリーである。

オンラインゲーム版のドラクエはつまるところ、みんなでわちゃわちゃ遊ぶ「ドラクエっぽい」ゲームなんでしょ?という誤解を木っ端微塵に打ち砕きたい。ドラクエ10は後述する寄り道コンテンツが確かに豊富である。開発者もドラクエ10は「ドラクエのテーマパークにしたい」という趣旨の発言を過去にしている。そういう側面は確かにある。

しかし、である。

ドラクエ10のメインコンテンツはメインストーリーであることを断言したい。もちろん、所詮はゲームである。好きに遊べばいいし、寄り道コンテンツをメインで遊んでいる人もいる。が、最も力を掛けて開発されているのはメインストーリーであり、これはドラゴンクエストのナンバリングタイトルである以上、当然と言える。

ここで、遅まきながらドラクエ10のバージョンの仕組みを簡単に説明する。現在、バージョン4までリリースされており(最新バージョンは4.1)、バージョン1、2、3、4と整数の数字が変わる毎に新しいストーリーが展開されている。小数点については、そのストーリーのなかで物語がいくつかに小分けにされて配信される仕組みになっている。現在は4.1なので、バージョン4のストーリーが4.0、4.1と2段階分配信されている状態となる。この仕組みが「終わらないドラクエ」の所以である。

このうち、バージョン1のメインストーリーをクリアするために必要な時間は、タイムアタック(早解き)ならともかく、数十時間掛かる程度のボリュームがある。つまりにふつうに他のナンバリングタイトルと同程度のストーリーサイズがあるということである。オマケではないのである。

ストーリーも過去のナンバリングタイトルの開発陣が書いており、バージョン1のシナリオは、ドラクエ7以降を担当した藤澤仁氏がそのままディレクション含めて担当している。なので、当然そのままドラクエ節のストーリーである。笑いあり涙あり、優しいけど意外と毒のある、あのドラクエの世界そのままである。なお、ドラクエ10はまだストーリーが完結せず進行中なので、正確な情報は公表されていないが、ドラクエ9の世界と繋がりがあると言われている。

メジャーバージョン毎にテーマの異なるストーリーがあり、ラスボスがいて、エンディングもちゃんと用意されている。バージョン3まで完結しているので、今からドラクエ10を始めると、3本分のストーリーを堪能して、さらに4本目のシナリオを始めることができる。それをずっと育てたキャラクターで冒険できる訳だ。4本と書いたが、それぞれのストーリーは相互に関係しており、舞台は少しずつ拡張されているが共通の世界であり、未だに回収されていない伏線も多く残っている。そして忘れた頃に少しずつ回収されている。決して雑に作られている訳ではなく、丁寧に作り込まれている。

簡単に4つのストーリーを説明しよう。バージョン1はアストルティアという世界にある5つの種族の大陸を舞台にした冒険のお話。バージョン2はバージョン1で唯一行くことのできなかったレンダーシア大陸を舞台にしたお話。ここで満を持して勇者が登場する。バージョン3はかつて世界を支配したが今は封印されているナドラガンドという竜族の世界のお話。そしてバージョン4はアストルティアの5000年前を舞台としたお話。漏れ聞く話では、バージョン1の時点で、バージョン3までのプロットはできていたとのことなので、確かにバージョン3を振り返ると、バージョン1からの伏線がいろいろと回収されていることがわかる。現在は既にバージョン5までのストーリーが構想されているとのこと。

ということで、ドラクエ10という1タイトルのゲームから想像できるボリュームからかけ離れたストーリーが既にドラクエ10には実装されている。そして未だに拡張が続いているのである。ドラクエ11のストーリーは確かに良かったと思うが、両方遊んでいる身からすると、どちらのストーリーが良いかと言えば、即決でドラクエ10と断言できる。

ストーリーの話なので、あまり中身に触れられないのがもどかしいが、ドラクエ10の最大のウリはストーリーであり、ドラクエファンならやらない手はないはずである。通常のナンバリングタイトル数本分の冒険が待っているのだ。

サブクエスト

メインストーリーとは別に、後日談だったり、派生のストーリーがクエスト形式で大量に用意されている。かなりメインストーリーに近いものから、まったく本筋とは無関係なものまで多種多様に存在する。クリアするのもしないのも自由である。

やわらかいコンテンツも用意されていて、先述のドラクエテーマパーク構想よろしく、過去作の名物キャラクターが多数登場する。例えば、カンダタやトルネコ、ミネアなどの人気のあるNPCや、バラモスやダークドレアムなどの過去作のボスも登場する。このあたりは、好き嫌いが分かれるところもあるだろう。過去作のキャラクターを登場させるにあたり、メインストーリーには絡ませなかったり、期間限定で登場させるなどの配慮が伺える。(竜王やゾーマといったラスボス級も期間限定で登場している)

そうかと思うと、重たいストーリーのサブクエストもたくさんあるので、ストーリーを楽しみたいユーザなら、メインとサブの両方を丁寧に遊ぶことで、相当なドラクエタイムを過ごすことができる。濃密である。

寄り道コンテンツ

ドラクエ10のもうひとつの花形コンテンツと言える。もともとこれまでのドラクエも、カジノなどの寄り道コンテンツには力が入っていた。ただ、ドラクエ10はこれについても5年の積み重ねで非常にボリュームのある寄り道が多く用意されている。カジノはもちろんだが、エンドコンテンツと言われるメインストーリーとは無関係の上級者向けの戦闘コンテンツや、武器や防具、道具などを作れる職人コンテンツ、ゲーム内に家を持てるハウジングコンテンツ、通常の装備とは別に見た目をアレンジできるドレスアップなど、どれも必須ではないのだけれど、やりこむと奥の深いコンテンツが多数存在する。実際のドラクエ10ユーザも全てのコンテンツをやり尽くしている人というのは少数で、それぞれ好きなコンテンツだけをやっている人が多いと思う。

この辺はオンラインゲーム特有のところで、それぞれの興味が合うクラスタでコミィニティが形成されているので、友だちの(ゲーム内の)家に遊びに行ってチャットをしているだけであったり、ひたすらエンドコンテンツを周回してレアアイテムを集め続けるパーティーがいたり、同じゲームとは思えない遊び方が共存している。そしてそれらを繋ぐのがメインストーリーだと思う。

音楽

ドラクエといえばすぎやまこういち氏の音楽である。これはドラクエ10でも健在で、多数の楽曲が収録されている。Wii版発売当初は内蔵音源による楽曲だったが、WiiU版以降はオーケストラ音源となっている(一部除く)。書き下ろし曲も多いが、過去作品の曲も多数使われている。特にフィールド曲や戦闘曲は過去作のものが多い。懐古趣味というわけではないが、往年のドラクエファンなら感慨深いと思う。サントラも発売されているので、音楽だけならそちらを聴く手もあるが、ここに完全新作のドラクエ10が存在する以上、音楽だけでなく、ゲームをしながら聴くべきである。そのために書かれた楽曲である。

拡張され続ける終わらない世界

さて、さすがに疲れてきたので最後の章である。

何度も書いてきたが、ドラクエ10はオンラインゲームである。ゲーム自体はお店でパッケージ版を買えるし、最近はSwitchにしてもPS4にしてもオンラインストアからダウンロード版を買うこともできる。が、メインストーリーなどのコンテンツは、定期的にバージョンアップという形で配信される。小数点以下のマイナーアップデートは無料で、整数のメジャーアップデートは有料となる。それ以外に、月額利用料として1,000円〜の料金が発生する。これを高いとみるか安いとみるかは個人の主観だと思うが、ここまで紹介したコンテンツを遊ぶために必要な費用はこれだけである。アイテム課金で湯水のようにお金を投下しないと遊べないコンテンツは存在しない。(性能には影響しないおしゃれ装備やハウジングアイテムなどのアイテム課金は存在する)

お金の問題は個人の価値観に依るので書きづらいのだけれど、当然ながらゲーム開発はビジネスであり、且つ、通常の売り切りパッケージとは異なり、既に5年以上にわたって開発や運営が継続されており、オンラインゲームを支えるためのサーバなどのインフラを管理保守する必要がある以上、そのコストは回収しなければならない。そのための費用として、月額1,000円は良心的な価格だと思う。しかも税込である(笑)。追加パッケージも3,800円(こちらは税別)とリーズナブル。

このようにビジネスの仕組みが回っている間は、ドラクエ10の世界は続いていく。開発陣は10年続けると言っているので、まだ折り返し地点である。長すぎて何を書きたかったのか忘れてきたが、そう、ドラクエファンであるにもかかわらず、ドラクエ10を食わず嫌いでスルーしている人に向けて書いているのである。この紛う事なき正統なナンバリングタイトル10作目にして、且つ、次作にして大作だった11の旬の時期を過ぎても未だに拡張が続いているドラクエの世界があることを知って欲しい。むしろ今までスルーしてきたことは至福である。5年分の密度のドラクエの世界をこれから一気に堪能できることを想像して欲しい。このボリュームのドラクエに出会ったことは過去には一度もないはずである。

一点、逆に5年分を消化して追いつくのは大変なのではないかと心配する人もいるかも知れない。それについては安心して良い。対策が施されており、発売当時に比べて、テンポアップしたり、レベル上げを容易にする仕組みが追加されているので、順調にプレイすれば数ヶ月程度で最新作まで追いつくことができる。まあ、別に急ぐ必要はないので、ゆっくりやればよいのだが、追いつこうと思うなら十分に可能であることを伝えておく。

次のアップデート4.2は順調に行けば5月にリリースされる。バージョン4のストーリーも素晴らしい。2018年こそは一人でも多くの食わず嫌いドラクエファンがドラクエ10の魅力に気づきますように。

<追記>続きの記事を書いてみました。


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