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OKR - 実践と失敗を通して学んだこと -

この記事の内容

・ベンチャーのコーポレート部門で勤務していた時に実施したOKR導入経験を例として、失敗事例とこうしたら良かったかも、という内容を解説しています。OKRについて基礎的なことは既に知っているが、いざやろうとしてうまくいってないな、という方のご参考になれば幸いです(間違ってたらすみません)。
・組織にどう浸透させていくかという活動をするつもりだったのですが、そもそも自分自身がちゃんと理解できていなかったなということが多くあり、自身での試行錯誤を通して考えたことが中心になります。

前提

・1年ほど、自社コーポレート部門でのOKR導入と運用に向けた取り組みをしていました。

<取り組み開始時の状況>
・コーポレート各機能の自律的な進化を目指してOKRは既に導入されていたが、部門長たちの取り組み温度感もズレがあり、スタッフ1人ひとりに浸透しているとは言えなかった(それ以前はMBOを利用していた)。
・そもそもOKRとはどういうものか?なぜやるのか?というのが管理職たちの中でも明確に共通化されたイメージとして持てていなかった。
・各部門でのOKRをうまく運用していく仕組みをつくっていくという段階。

<この記事で触れること>
・自分もある部門の部門長をしていましたが、自分自身でもなかなか手応えを持てない中で他部門を含めた導入、運用推進を進めていたことでたくさんの失敗がありました。この記事では最初にも書いたように、自分の取り組みの中で失敗したなと感じたことを中心にしています。

1) コーポレート全体のOKRが必要かどうかという宗教戦争が起きた

<前提>
・コーポレート全体でのOKRは作らず、各機能の自律的な進化を重視して機能別組織のリーダーがそれぞれOKRを作るという形を取ろうとしていた。
・コーポレート全体でのOKRを作らなかったのは、1. トップのコミットメントを当時そこまで割くことができていなかった2. コーポレート全体としての明確なビジョンはあえて作らず各リーダーの裁量を強めていた、というのがあったため。

<失敗内容>
・そもそもの議論として、「上位としてのコーポレート全体のOKRは必要なのではないか」「いや、上位のOKRが無くても作れる」というOKR宗教戦争が起きた。

<こうしたら良かった?>
・これは上位のOKRがあることの意味は何かを考えるべきでした。
・個人的には、「上位のOKRは、それがあることで下位の組織に対してフォーカスすべき範囲を具体的に示したい場合に作れば良い」と思います。なので、事業部門であれば確実に作るべきだと思いますが、包含している機能が大きく異なるコーポレートでは無くても成り立つように思います。この場合、やるのであればむしろ全社OKRを作った方が良いかもしれません。
・ただ、思考の制約条件はあった方が良いのは事実だと思います。それが無いと全体での一貫性が崩れるためです。このため、やるとするとコーポレートとしてのミッション、ビジョンを作る、などというのをステップとして挟んでからやるのが良かったのかな、と思っています。

2) チームOKRの設定に失敗していたが気づいていなかった

<前提>
・前提として、自分が担っていた総務部長としてのOKR設定でのこと。
・部としてのOKRを設定するときに、目標(Objective)を「社内のフローを改善し、社員が働きやすい環境をつくる」というものに設定した。(補足すると、フローというのは情報の流れ、人の動きなど、いわば社内の血流にあたるものを指す)

<失敗事例>
・上記の目標を元に部としてのOKRを作ろうとしたが、管下のチームを含めて全体として具体的な成果につながるイメージが持てるものが作れず、模索する時間が続いた。

<こうしたら良かった?>
・今は、OKRを作るときにその時間軸を注意すべきだなと考えています。例えば、上述の目標はどちらかというと長期的なミッションであり、通常やるような四半期や半期毎の目標に据えるには抽象度が高すぎました。
・そうすると考えられる打ち手の幅が広がりすぎ、部としてもその下のチームとしても何にフォーカスすべきか、というOKRとして重要なポイントが崩れてしまいました。
・このため、上記の目標は部のミッションとしました。その上で、これをブレイクダウンして3~6ヶ月程度の間でフォーカスしたい内容を改めて作りました。

3) オペレーション中心の部門はOKR作成に困る

<前提>
・コーポレートはオペレーショナルな、いわゆる「やって当たり前」「できて当たり前」の業務が多い。

<失敗内容>
・「(業務としては)やらなくてはいけないことをこなすことが中心なので、そもそもOKRの思想が合わないのでは?」「まず定常的な業務でいっぱいいっぱいでチャレンジする余力がないと思う」といった声が出で進め方に困った。

<こうしたら良かった?>
・基本的に成長過程にあるベンチャーのコーポレートの方は日々の業務をこなすことに追われがちになり、変化を先取りして業務プロセスを変革していく余裕が持ちづらいと思います。
・自分が担当していた総務では、まず、「オペレーション工数を30%削減する」というのをチームとしての目標にし、それを達成してできた余力により自分たちが燃えられるチャレンジをしていこうというように、段階的なアプローチをすることにしました。
・ただ、工数削減をしながら徐々に本来やりたいことにチャレンジしていくような仕掛けにした方が良いのではないかと思います。そうしないと、工数削減をして時間はできたが、さて何をしようか?ということになってしまうため。例えば総務では、本来的には社内のコミュニケーション活動や課題解決をより推進したかったため、月に1度のイベントは必ず開催するなど、業務への負荷を抑えながらできることに取り組んでいきました。これにより最初のOKRが完了する頃には、ある程度ノウハウが溜まっている状態でスタートすることができました。
・また、手続き処理などオペレーションをこなすのが中心になっているチームは多いと思いますが、「社員にとってルールや情報がより分かりやすい仕組みを作る」とか「オペレーションに要する時間を短縮する」など業務の流れで見ていくと、チームとしてモチベーションを持ってやってみたいことが見つかるのではないかと思います。

4) プロジェクトのOKRを作るべきかどうか

<前提>
・自身が多くのプロジェクトを担当していたため、チームとしても業務時間の多くをプロジェクトに割くことになっていたが、プロジェクトの目標管理をどうするか困った。

<失敗内容>
・最初はプロジェクトとしてのOKRではなく、個人ごとのOKRで担当プロジェクトで成し遂げたいことを含めて作っていく形を取っていた。
・しかし、プロジェクトの担当者が2人いる場合などに、立てている目標や重点的に取り組むこと(P1)のズレが生じてくることが発生。

<こうしたら良かった?>
・ある程度の規模以上のプロジェクトは必ず最初にOKRを作ることにしました。それ以前も目的、QCDは明文化していましたが、OKRとして作ることでより成果を目指す思考を持てるように思います。
・プロジェクトOKRのKRをアップデートする人を決め(主にPM)、その人が進捗状況をアップデートすることにしました。
・今週重点的に取り組むこと(P1やP2)では、担当者名を横に記載するなどして、直近と今後どういう動きになっていくのかがわかりやすいようにしました。

5) 個人OKRをどう立てたら良いか悩む

<前提>
・チームで作ったOKRを元に、個人のOKRを作るとき。

<失敗内容>
・コーポレートではスタッフはオペレーション業務が中心になることが多いため、チームとしてはチャレンジングな目標があっても、1.個人として何をチャレンジするか考えづらい、2.チャレンジングなことに取り組む余力がない、ということがありスタッフの個人OKR作成は難しかった。

<こうしたら良かった?>
・1on1を通じて個人として取り組みたいことを明らかにしていく。上司としては少しずつでもチャレンジする機会、環境を作っていく。小さな成功を経験することで自信を持てるようにしていく。
・意外となぜやっているのかわからない業務はあるものなので、まずはそれを削り時間を作ることを目標にしていく。
・自分自身で最近やっていることですが、個人OKRは立てた後に関係者に週報などで共有していくと思いがけないアイデアやフィードバックをもらえることもあり、自分自身のOKRを進化させていくきっかけにもなります。100%の精度のものを作れるまで悩むよりはある程度のところで共有していき、やりながら修正していくのも良いのではないかと思います(悩んでいる時間は何も進まないことだけは確実なので、それよりはできるところから進めたほうが良い)。

6) KRの自信度が下がりつづける

<前提>
・自分自身のOKRを作っていく中で、KRの自信度が最初は5であったものが、時間が経つうちにどんどん下がってきてしまう。

<失敗内容>
・自信度が下がることで、自分の自信も下がってくる。
・このKRは本当に成し遂げるべきものなのか、それともできたらいいなというものなのか迷いだす。

<こうしたら良かった>
・KRを必ず成し遂げるコミットKRと、より高い成果をだすためにできたらいいなという野心的KRに分ける。
・最初はKRを一度設定すると修正せず進めたいという気持ちを持ってしまっていましたが、KRも取り組む中で追加修正していっても良いと思います。OKRは目標達成におけるガードレールのようなものであり、それ自体に束縛されるものでない方が良いためです。あくまで自分がフォーカスすることを明確にし、それを自分にとっても周囲にとってもモニタリングしやすくするツールと考えています。

最後に

実際にやっていく中での失敗事例を元に書きましたが、うまくいった事例もありました。当たり前ではありますが、しっかりとフォーカスした目標と、具体的な成果基準がある場合は成果が出しやすく、ツールとして有効だなと感じました。
自分がうまくOKRを捉えきれなかった理由としては、それまではMBOでの半期ごとの評価→査定をしており、その時の取り組みイメージに引っ張られてしまったことがあるように思います。6.のところで書いたようにOKRの位置付けを捉え直すことで理解しやすくなりました。
OKRについては以下の本が特に参考となりました。自分なりにいろいろと失敗をした上で読むと非常に腹落ちする点が多く、今後より良いOKR運用をしていくためにも生きる内容でした。


ちなみに、以下の本を先に読んでいたのですが、この本はOKRってなんかすごそう!とワクワクするのにはよかったのですが、これを何度熟読してもあまり運用プロセスをうまく作り上げられていくイメージはわきませんでした。もっとうまく活用できるはずなのにうまく使えない、というギャップに悩んだというのもあり、この本を先に読んでOKRってスゲー!となった上で、Measure What Mattersを読んで自分の状況を踏まえながら具体的なアプローチを考えていった方がわかりやすいように思います。


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