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役目を終えたので #VRCムービーアワード を振り返ってみる

前置き


例えば今、とても爽やかな風が吹き抜けたとする。
私はその風を全身で受け、絵にしたいと思い、キャンバスを貼り、絵の具に手を伸ばしたところでふと動きが止まる。

風に色は無い

そこで私は、どうしたら色の無い風を描くことができるのかと考える。

物が風に揺れる爽やかな風景を描けば、あの爽やかな風を感じる疑似体験ができる絵になるのではないだろうか

そもそも『色が無い』というのは固定概念だ。自分が思う爽やかな風の色』をキャンバスに置いていけば、自然と爽やかな風の絵になるのではないだろうか

こうしてたくさん頭を働かせながら、手を動かしながら、どうにかこうにかようやく満足のいくものができた。

爽やかな風を感じる素晴らしい絵が描けた!きっとこれは誰が見ても爽快な気持ちになるに違いない!

そう思った私は居ても立っても居られず、友人に出来上がった絵を見せに行った。
絵をまじまじと眺めてから友人は言う。

全体的に静けさがあるけど、この世の憎しみが全て込められたような、そんな荒々しさも感じる。いいね!僕はこういうの好きだよ!

私は膝から崩れ落ちた。





これは実話を元に改変した例え話ですが、創作活動をしていると本当によくあることなのではないかと思います。
誰かに見せる作品というものは作者である自分一人だけでは決して完結しないんですよね。
その時の感想が例え酷いものであったり、無言に終わるものだったとしても。


VRCムービーアワードの審査員を終えて

こんにちは。Miyokoと申します。
2018年4月から現在に至るまでVRChatにそこそこハマっている一般人の主婦です。VRChatでは‪BL喫茶「喫茶BlueLounge‬」という雑談系(たまにRPアリ)のイベントを主催しています。
うちのイベントは第1回VRCムービーアワードに協賛団体として参加しまして、代表の私自身は審査員の内の一人でした。※協賛として参加する人は「協賛会員」として審査員を務めることになっている。
念のため説明しておくと、「応募作品の全てに点数を付けて提出する」というのが審査員の役割です。

第1回が終わり、次回に向けての引き継ぎのための諸々のことが終わりましたので、ここで改めてVRCムービーアワードを個人的に振り返ってみようと思います。
※ ムービーアワードの協賛会員・協賛団体は毎回白紙に戻され、毎回募集されます。

(いやー…終わった…やっと言いたいこと言える!!)


VRCムービーアワードを振り返って


前述の通り私は審査員だった訳なんですが、62作品というこんな大量の作品群にそれぞれ点数を付けるというのは生まれて初めてのことでした。
しかも第1回なので、点数に関してはこれまでの歴史も基準も何もありません。
そんな手探りの中、なるべく公平な目で見るために自分がやったのは、

 ・精神状態が落ち着いている時に見る(体調の悪い日はもちろん、機嫌の悪い日や逆にテンションが高過ぎる日には見ない)
 ・一つの作品を見た後は一旦休憩時間を挟んで気持ちをリセットする(先に見た作品を引きずらない。リセットできなければ次の機会に持ち越し)
 ・一日で観るのは多くても5作品まで(一日で全部見ない)
ということと、

応募作品一つにつき、
 ・VRCにある映画館のワールド
 ・PC
 ・スマホ

  それぞれの環境で(つまり1作品を3回ずつ)見てみるということでした。
※他の審査員の方がどうされていたのかは知りません。

3つの環境で観るのは個人的に実験としてやってみたかっただけで、実際いちいち発見があって面白かったのですが、時間がかかって点数を付けるのがギリギリになってしまいましたし、単純に疲れました。62作品を3回て。
今後もしまた審査員になったとしてもこのやり方ではやらないのではないかと思います。

面白かったのは、スマホやPCで見るとそこまで刺さらなかった作品でも、映画館ワールドの大きなスクリーンで見るとものすごく刺さって好きになったり、
逆に映画館ワールドで見て微妙と感じた作品でも、PCや、スマホで自分の手元に置いて見るのであれば十分楽しめて好きになる、という体験をしたことです。※あくまでも個人の感想です。

そして前者の中でも「この大きな画面でも作品として遜色なく見れるなぁ…」と感じたものが結果的にノミネート(推薦)作品にズラリと並んでいました。※あくまでも個人の感想です。
賞を取った作品群も「そりゃそうでしょうな」という感想しか出なくて(笑)。あの時は悔しかったなぁ…。
VRCのワールドとは言え「映画館で見れるレベル」という、観客のことまで考えられた作品を出されたことに正直面食らいました。
プロだろうがアマチュアだろうが、他者に見せる映像作品というのは、作品を観客が見ることで初めて完成するんですよね。子どもと同じで、作って生んで、ハイ終わり、ではない。
自分も作品は2作品応募していて、どちらも見る人のことを考えてはいたんです。※箸にも棒にも引っかからなかったんですけど、コレ(団体)コレ(個人)です。
ただ、正直な話「PCかスマホ、VRCの動画プレイヤーで見てもらえたら嬉しいな」くらいの気持ちでいて、「映画館のワールドの大きなスクリーンで見てもらいたい」とまでいかなかったんです。
これは自分の喫茶イベント終了後に映画館のワールドでスタッフとお客様のみんなで自分達の作品を見た時に、その部分が私にはすっかり抜けていたことに初めて気付きました。映画と謳っておきながらお恥ずかしい限りです。
この辺の意識の差が如実に作品の完成度に現れているように感じて、実に悔しかった。
ただ、VRChatで撮影された規約違反じゃないオリジナル作品なら何でも応募して良いって話だったから………いやそれは自分の創作に対する意識にも作品の完成度にも全く関係無いわ。言い訳書こうとしてるぞ私。今のはナシで。

宣伝とかもさ、人によってはすごいちゃんと告知して上映会もやったりしてさ、本当に「自分が作ったものをちゃんと多くの人に見てもらおう」っていう、作品に対する姿勢が自分と全然違っちゃっててさ、一時的に落ち込んで一人反省会しちゃったんだよね。
私は自分の作品は世界で一番好きと言ってしまうタイプの人間だし事実として今もなおそうなんだけど、見られることに対する意識の違いが浮き彫りになっちゃったなぁって。うん、思い出してもちょい悔しい。
そこは分かってて敢えてアピールしない」という選択をしたのではなくて、その発想に至らなかったから結果的にアピールしなかっただけということが悔しかったんだよな。

いや、別にそんな観客のことまでいちいち考えて作ってませんけど

という、結果的にそうなっただけの天才肌の方がいらっしゃいましたら名乗り出て下さい殴りに行きます。…………冗談です。すみません。

言いたいことを書いているはずなのに、結果的にノミネート作品のことばかり褒めてしまいますね。

純粋に「あの人たちすごいなぁ…」と思ってそのままの気持ちではあるんですけど、こうなるの分かってたから協賛会員の期間中はこういうこと書きたくなかった。
作る側としても審査員としても真面目に取り組んでるのにここだけ切り取られて身内のお祭りって言われるのはイヤだったから。

今回は第1回ということもあり、とにかく色んな作品が集まっていましたが、もしかすると第2回以降は、そんな作品群に感化されて映画館ワールドで見ることが大前提の作品の応募が増えるのかもしれません。
今回の審査員の活動を通して、映画館ワールドで一人で作品を見ることがとても好きになれたので、次回の開催が今から楽しみです。


個人的に「コレ好き!」と思った作品

ノミネートはされなかったものの、個人的に「コレ好き!」と思ったものを3つ紹介したいと思います。
期間中はなるべく自分の意見を言わないようにしてたんですがやっと言えます!やったー!


[VRChat] -winning-

シンプルにカッコイイので見てほしい。
本当にそれだけしか言えないんですが、本当に見てほしい。


[創作短編怖い話] 今時の幽霊はネット上からも呼んでくる


こういう短くまとまった作品、好きです。
あと主人公が口元に手を当てるシーンとか、最後におちゃめな幽霊とか、出てくるキャラクターの仕草がかわいいですよね。

見終わった後に「まんが日本昔話」を見た後と同じような懐かしい感覚になったんですけど、コレ分かる人居ます?


【VRC映画】チクチク警察ヘッジコップ【すぱげりぃ】

「チクチク警察ヘッジコップ」ってタイトルからしてもう好きです。
あと手書きのタイトルロゴがかわいい。

「ここが、事件現場ね…」《SE:バキューン》←初っ端から好きだと思った。

「助けてくれ!このままじゃ死んじまう!」って叫んでるおっさんがどう見ても危険な状態じゃないとか、
助けを求めるおっさんを放置して何故かまずは犯人捜しに行っちゃうとか、
踊る宇宙人とか、突然の実写背景とか、
挙げればキリが無いんですが、ツッコミどころが多すぎてツッコむのが楽しかった作品でした。
何より驚いたのは、エンディングテーマがオリジナルソングなんですよね。
そしてエンディング明けにもちゃんと伏線回収のストーリーがある。
作中はツッコミが止まらなかったのに、終わり方があまりにも鉄板でちゃんとしていたので、見終えた後は「ちゃんとした作品を見たなぁ~」という奇妙な満足感がありました。
いやー、不思議な体験をしました。面白かったです。


好きな映画について

最後に補足として自分の好きな映画も紹介しておきます。
これを読むと「こういう人間だから前述の作品をピックアップしたんだな」と納得するかもしれません。

ア=アニメ(3D含む)、実=実写
【映画館で見てない作品】
・ファンタジア(1940年)ア
・リトルマーメイド(1989年)ア
・アメリ(原題: Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain)実
・かもめ食堂(2006年)実
・めがね(2007年)実
・her/世界でひとつの彼女(2013年)実
・セトウツミ(2017年)実
・平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER(2018年)実

【映画館で見た作品】
・千と千尋の神隠し(2001年)ア
・ハウルの動く城(2004年)ア
・魔法にかけられて(2007年)ア+実
・紙ひこうき(2012年 原題:Paperman)ア
・同級生(2016年)ア
・ズートピア(2016年)ア
・モアナと伝説の海(2016年)ア
・リメンバー・ミー (2017年)ア
・雨を告げる漂流団地(2022年)ア
・THE FIRST SLAM DUNK(2022年)ア

(ディズニーが多いな…)

最近映画好きの友人から「あなたって邦画とか洋画って見ないの?」と言われてハッとしたんですが、自分は映画館でアニメ作品以外を見ようと思うことがほとんど無いんです。
一番の理由は、「アニメ作品は始まった瞬間から非日常の世界に連れて行ってくれてワクワクするから(※個人の感想です)」なんですが、単純に実写映画は情報量が多くて大きなスクリーンで見るのは疲れるのであんまり見たくないというのがあります。アニメ作品は情報量がそぎ落とされているので大画面でも見やすくて分かりやすいと感じます。
これは画面からとにかく色んなものを拾って考えてしまう自分の映画の見方に問題があるかもしれませんし、「アニメ映画=ワクワクする」という方程式も幼少期からの刷り込みが大きいとは思います。

VRCムービーアワードに応募されたようなVRCで撮影されたタイプの作品はアニメでも実写でもない存在だと思っているのですが、画面の情報量という点で言えば自動的にどの作品も3Dアニメと同じ扱いになるので、自分にとっては鑑賞することのハードルが低く、非常に見やすかったです。アマチュア実写の映像作品の審査員なら自分は絶対できなかった。


以上、役目を終えたのでVRCムービーアワードを振り返ってみました。


有志の方が作って下さったエントリー作品の再生リストもあるので、気になった方はぜひぜひ見てみてください。

第一回VRCムービーアワードエントリー作品

ではまた。

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