茶の味とポンさん

 2015年正月。さっきテレビで番組のBGMに、映画『茶の味』(2004、石井克人監督)の音楽が使われていた。
『茶の味』は主に栃木を中心に撮影されていて、栃木出身の僕にとっては景色を見ているだけで懐かしい感に包まれる。それだけでひいきにしたい映画だ。 そしてアニメーターであり監督のポンさんこと故平田敏夫さんを思い出す。

物語は主人公一家とその周りの人々のちょっとおかしな日常を描く群像劇だ。
春野家の主婦美子(手塚理美)は子育てのために引退していたアニメーターで、現役復帰するための作品を田舎で在宅で描いている。
美子の父(我修院達也)は美子の師匠であり、引退した伝説のアニメーターだ。
他にも一癖も二癖もある登場人物が集まっている。
たとえば美子が参加しているアニメ作品の監督役で庵野さんが、息子のクラスメートとして菊池凛子さんが出ている。寺島進さんが頭に◯◯◯を乗っけた男役でw。あ、マッドハウスの若いスタッフ達もエキストラ出演している。

この映画の事を知ったのは2003年、当時勤めていたマッドハウスの喫煙室だった。(僕はタバコを吸わないが、話すのが好きなので休憩しにいってた)そこでポンさんこと平田敏夫さんとよく話し込んでいた。
「来年公開の映画の仕事してるんだよ」
「劇場(アニメ)ですか?」
「実写なんだ」
「えっ?」
「映画の中のアニメを小池君、パラパラ漫画を僕が描いてるのさ」
「めっちゃ面白そうなんで観に行きます!」
結局仕事に追われて劇場には観に行けなかったけど、DVDが出たらすぐ買った。そして気に入った。

劇中で美子が描いたアニメーションを小池健くんが担当していて、これは小池君らしいガシガシ描いた線の楽しいアニメになっている。
そして美子の父が描いたパラパラ漫画をポンさんが描いている。水彩で描かれたスケッチブックサイズのパラパラ漫画だ。劇中の設定と相まってとてもステキなパラパラ漫画になっている。機会があったら一度見て欲しい。

その後マッドハウスを離れ、あちこちで仕事を渡り歩いているが、一昨年赤坂に勤めている時に、スタジオの前でバッタリポンさんと再会した。懐かしくてスタジオに寄ってもらい、その時参加していた海外の3Dアニメーションを見てもらった。
「そえちゃん頑張ってるんだね」
その時がポンさんとのお別れになった。
いつかポンさんのようなアニメを作りたい。
『茶の味』のサントラ買おうかな…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?