過去と現在を照らし合わせつつ文章術を語るなど

 この連載は、『日経ビジネス』系のオンラインメディアに、2002年から2008年にかけて週刊で連載していた原稿を紹介しつつ、現在の状況をからめて時代を振り返るものです。
 あわせて、過去の原稿にツッコミを入れるという、異色の文章指南ともなっています。

この連載が誕生した背景

 2019年1月15日、「日経ビジネス電子版創刊」の記事に接しました。それは同時に、オンライン版として存在していたメディアが無くなるということでもあります。

 昔お世話になったなぁ、あの頃、毎週書かせていただいたなあ。そんなことを思い出しました。最初は確か、「日経ビジネスExpress」という名前ではなかったか? その後「日経ビジネス・オンライン」に変わって。
 調べてみると、日経ビジネスExpressの創刊が2001年10月のこと。ぼくが連載を持たせていただいたのが2002年1月から。創刊ほどなく執筆陣に加えていただくというありがたいお話でした。

 当時を振り返る記事を書けないかな。そんなことを思っていた矢先、これは別の流れから会社ではなく地域に就職するという考え方、「就域」という言葉を見かけて、ぼくも昔そんなこと言ってたなと。それで過去の原稿を探していたわけです。
 そこで出会ったのが、2002年6月に日経ビジネスExpressに掲載いただいた原稿。で、これがおもしろい。自分で言うのもなんだけど。

 これは過去の原稿をそのまま掲載していくだけでもアクチュアルな内容として読んでもらえるところがある。
 この思いが冒頭の思いとつながって、この企画となりました。

この連載の狙い

 過去の原稿の再掲という形での連載を始める。2002年に始まった連載はその後2008年まで続いていますから、ネタには困りません。
 とはいえ単に再掲するだけでは芸がない。同じテーマについての現在の目線を交差させることで、過去から現在、あわよくば未来へと見通す視座が生まれるのではないか。そう考えました。

 で、実際に1本目を書いてみると。
 筆が滑るというか、過去の原稿にちょっとひっかかるところもあって、ついツッコミを入れちゃったんですね。自分で。
 それで、あっと気づきました。それというのも、たまたまその前日、ある交流会で20代の若者から、「小橋さんの文章講座が受けたい」と言われていたんですね。その場では、「うん、まぁそんな機会も作ろうか」と比較的軽く受け流していたのですが。
 これでいいじゃん、と気づいたんです。

 実は文章講座と言われて、少しとまどいもあったのです。ぼくは文章を書くにあたってさまざまな文章理論を読んできましたし、自分なりに何度も推敲するタイプです。それらをふまえれば、文章の書き方について語ることもできるかもしれない。でも、なんか燃えないなぁというのがあって。
 また、最近のブログ的文章については、正直、よく分かりません。なので、若者に期待されている時代にあった講座ができるか、見通せなかったのです。

 でも、この形ならいけます。実はぼく、提出した原稿に編集者の手が入るってことが、ほぼないライターだったんです(他の人はよく知りませんけれども)。なので、手元にある原稿が、ほぼそのまま当時公開された状態の原稿です。
 これにあらためて解説をつけていくこと。そんなスタイルの文章指南ならできるぞと。もの書きとしての舞台裏を公開するみたいな感じですね。

 時代を読む視座を提供すると同時に、もの書きとして文章をどのように構成し、読者に届けているかという文章指南を行う。
 一粒で二度おいしい企画が、こうして生まれました。

こんなあなたに

 だからこの連載は、ひとつは15年の時を隔てて時代を見る眼がどのように変遷しているのか。あるいは変わっていないのか。そんな検証をしたいあなたに送ります。

 そしてまた、文章を業として書いていた人間が、どのような姿勢で執筆に臨み、どのような基準で文章を推敲していたか。そんな裏話を通して、ものを書くということが何であるかをつかみたいあなたに、送ります。

 なによりも、お楽しみいただければ幸いです。

ゼロ年代に『日経ビジネス』系のウェブメディアに連載していた文章を、15年後に振り返りつつ、現代へのヒントを探ります。歴史が未来を作る。過去の文章に突っ込むという異色の文章指南としてもお楽しみください。