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今日のいいことたち

「すみません、写真撮っていただけますか?」

2年ぶりに会う友だちとディズニーシーに行くことになった。友だちは大のディズニー好きで、彼女と会うときはたいていディズニーに行くとき。

ふだんは開園前から待ち合わせて、彼女のディズニー知識とファストパスをふんだんに駆使し、アトラクションにこれでもかというくらい乗りまくる。
だけど今回は私が妊娠しているので、無理を言って開園後の集合にしてもらって、アトラクションも少なめのプランにしてもらった。


バスが渋滞で遅れているという彼女を待つために、ひとりで入園してすぐのベンチに腰かけていたとき、カップルに声をかけられた。それが冒頭の言葉。

「いいですよ」と顔をあげてカメラを受け取ったら、彼女のかばんに桃色のマークがぶら下がっているのが最初に目に入った。
全身の写真を撮って、自分から「お顔のアップも撮りましょうか」と声をかけて、2枚、撮らせてもらった。

撮り終えてお礼を言ってカメラを受け取るカップルに、思わず声をかけてしまった。

「一緒ですね、マタニティマーク」
「え?」と最初はわかっていなかったカップルに、私もなんです、と伝えると、ふたりがにこっとしてくれた。

お気をつけて、楽しんでと見送って、朝からものすごく幸せだな、とぽかぽかした気分になった。私より大きいおなかをしていたけど、無理せず彼とのディズニーを楽しんでほしいな、なんて思いながら座りなおす。

ひとりめを妊娠していたとき、知らない人にあたたかい言葉をかけてもらえたのが涙が出るほどうれしかった。彼女がうれしかったかどうかわからないけど、写真を撮ることですてきな思い出を残すお手伝いができて、幸せをわけてもらえた気分になる。


ひとりでにやにやしてたら、こんどはお父さんと息子さんの2人組が声をかけてくれたので、その2人の写真も撮った。

昔から道を聞かれたり、写真を撮るのを頼まれたりするのだけど、それがなんだかうれしい。
とくだん愛想がいいわけでもないのだけど、おそらく話しかけやすい雰囲気を醸し出せている気がして、少しの自信になる。
道を覚えるのがとくだん苦手なので、道案内役はぜんぜんできないのだけど……。


ディズニーにくる人たちはみんな笑顔だ。
大人も子どもも、みんなこれからの楽しい時間にわくわくしながら私の前を通り過ぎていく。
そのすれちがうそれぞれから幸せをわけてもらっているようで、今日は一日気分がよかった。


はげしいアトラクションには乗れないから、予約したレストランでゆっくり食事をして、園内の景色を見てまわって、船に乗って、またレストランでゆっくりして、帰路につく。

アトラクション大好き人間だから、ふだんは食事や景色を見ることはおざなりになってしまっていた。改めて見てみると、知らない景色がたくさんで、おいしいごはんがあって、それだけで夢のようだった。
夢の国としての楽しみかたはこちらのほうが正しい気さえした。


今日はほんとうに幸せだった。ただそれだけ。
ひとつ後悔、というか、反省すべきところがあるとすれば、食べすぎたことだと思う。明日体重計に乗るのか怖すぎる。


そんな休日をくれた家族に心からのありがとうをこめて、これから帰る。
学生のころはパークを出ると
「夢から覚めてしまった……」
とさみしい気持ちが大きかったけど、今ははやく家に帰りたい。


私にとってはきっと、なにげない自宅での日々が、いちばん夢のような時間だと思う。


今日もほんとうに幸せだった。ただそれだけ。




#日記 #エッセイ #今日のいいこと #小林すい



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