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ダフト・パンク年表【増補版】④:『Random Access Memories』期 2013-2023

『Random Access Memories』期:2013-2023

2013年

●3月2日 米TV番組『Saturday Night Live』にて、「Get Lucky」の15秒CMが突如放送。ダフト・パンクのロゴ、レコード会社〈コロンビア〉のロゴ、『Random Access Memories』のジャケットにも使用されたヘルメットのビジュアルのみが映像で使われ、それ以外の情報は一切明らかにされなかった

●3月23日 iTunesのプレオーダーがはじまり、『Random Access Memories』のリリースが公に。この時点で曲名やゲストの名前は明らかにされていなかった(*注45)

●4月4日 『Random Access Memories』参加アーティストのヴィデオ・インタビュー・シリーズ〈The Creators Project〉がスタート

●4月12日 〈Coachella〉のステージ上のスクリーンで『Random Access Memories』の120秒CMが突如放送。ダフト・パンク、ナイル・ロジャース、ファレル・ウィリアムスのバンド演奏を収めた「Get Lucky」のMVが初披露され、アルバム参加アーティストもその映像内で公式発表(*注46)

●4月17日 スパンコールをあしらったスモーキング・タキシードを着用し、〈サンローラン〉のキャンペーン・ビジュアルに登場(*注47)

●4月19日 「Get Lucky」リリース。ダフト・パンク史上最大のヒットを記録(10ヶ国以上で1位、全米2位)(*注48)

●5月17日 4thアルバム『Random Access Memories』リリース。サンプリングを使用したのは「Contact」1曲のみ、ディスコ/AORの大物たちの生演奏を大々的にフィーチャーしたサウンドは世間に衝撃を与えた(*注49)

●6月18日 カニエ・ウェスト『Yeezus』にプロデューサーとして参加。4曲を手掛ける(*注50)

●6月26日 「Get Lucky (Daft Punk Remix)」リリース

2014年

●1月26日 グラミー賞で主要2部門を含む5冠を達成。授賞式ではナイル・ロジャース、ファレル、スティーヴィー・ワンダー、オマー・ハキム、ネイサン・イースト、ポール・ジャクソンJr.、クリス・キャスウェルといった豪華ミュージシャンとともに、「Get Lucky」~シック「Le Freak」~スティーヴィー・ワンダー「Another Star」のメドレーを披露。これが『Random Access Memories』期唯一のライブ・パフォーマンス(*注51)

2016年

●9月22日 ダフト・パンクがプロデュースしたザ・ウィークエンド「Starboy」リリース。ダフト・パンク関連で唯一の全米No.1シングル(*注52)

2017年

●2月12日 グラミー賞授賞式にてザ・ウィークエンドのライブ・パフォーマンスにサプライズ出演。「Starboy」~「I Feel It Coming」のコラボを披露。これがダフト・パンク最後のライブ・パフォーマンス

●6月 ダフト・パンクが共作/プロデュースした、パーセルズ「Overnight」リリース。パーセルズは〈Kitsune〉からデビューしたインディ・ロック・バンド(*注53, 54)

2021年

●2月22日22時22分 ダフト・パンク解散。「Epilogue」と題された8分のビデオにて発表。映像は『Electroma』、曲は「Touch」を使用

●2月22日 『Homework (25th Anniversary Edition)』リリース。解散から丸一年のタイミングだった(*注55)

2023年

●4月7日 トーマ・バンガルテルのソロ・アルバム『Mythologies』リリース。取材にはロボットのヘルメットを被らず、素顔で応じていることが話題に

●5月12日 『Random Access Memories (10th Anniversary Edition)』リリース


【注釈】

*注45 『Random Access Memories』の情報解禁は段階的におこなわれた。まずは2人のヘルメットを合体させたビジュアルと〈コロンビア〉のロゴだけが印刷された屋外広告が、3月8日に〈SXSW〉のイベント敷地内に登場。それから間もなく、ニューヨークやロンドンなどの街頭にも同じ広告が出現した。

3月23日には『Saturday Night Live』で新しいCMが放送され、iTunesの予約も開始。そして3月25日からは、2人のヘルメットを合体させたビジュアル、アルバム・タイトル、「The New Album from Daft Punk」という説明が記載された屋外広告が以前と同じ場所に貼りだされている。(出典:『Billboard』Daft Punk’s ‘Random Access Memories’: A Timeline of the Global Teaser Campaign

このような屋外広告を使ったプロモーションは、ダフト・パンクが出したアイデアだった。ジャーナリストのミーガン・バージャーは以下のように語っている。

『RAM』のマーケティングの会議室にダフト・パンクが本を持ってきたの。70~80年代のサンセット通りにヒット曲の屋外広告が並んでいた。あの時代は音楽に対する人々の興味や熱気が高かった。2人が2004年にロサンゼルスに移住したのは、そんな憧れがあったのかも。新作アルバムを聴くとよくわかる。

『ダフト・パンク ドキュメンタリー UNCHAINED』

*注46 ダフト・パンクのYouTube公式チャンネルでは、〈Coachella〉で流された「Get Lucky」のスタジオ・ライヴ版MVはいまだ公開されていない。その理由は定かではないが、『Random Access Memories』10周年のティーザー映像にはこのスタジオ・ライヴ版MVも大々的に使われているので、近いうちに公開される可能性もあるだろう。以下が10周年のティーザー映像と、「Get Lucky」スタジオ・ライヴ版MV(後者は非公式チャンネルがアップしたもの)。

*注47 このビジュアルは、〈サンローラン〉とミュージシャンとの関係をより深いものにする〈サンローラン・プロジェクト〉の一環として発表された。同プロジェクトには、他にもベック、キム・ゴードン、コートニー・ラブなどが参加している。

*注48 「Get Lucky」の全米1位を阻んだのは、ファレルがプロデュースしたロビン・シック「Blurred Lines」。つまり、ファレルはこのとき全米1位と2位の曲の両方に参加していた。なお、ファレルはダフト・パンクと一緒に仕事をした印象を、次のように語っている。

とにかく人間離れしている。何もかもが簡潔で、偶然やミスはなく、全てに意味がある。目的を果たすための真実がね。

『ダフト・パンク ドキュメンタリー UNCHAINED』

*注49 『Rockin' On』2013年7月号に日本語訳が掲載された『NME』誌のインタビューによると、『Random Access Memories』のテーマは「ダンスの原点に立ち返ること」。テクノロジーの進化で誰でも簡単に曲が作れるようになったが、その結果、どれも似たり寄ったりになってしまっている、とトーマがジョルジオ・モルダーに話したエピソードが紹介されている。また、ダフト・パンクが当時全盛だったEDMには否定的な見解を持っていることが、このインタビューを読むとわかる(スクリレックスのことは例外的に認めている)。(出典:『Rockin' On』2013年7月号

*注50 カニエ・ウェストはダフト・パンクのことを「ダンス・ミュージックの革命児」と評している。(出典:『ダフト・パンク ドキュメンタリー UNCHAINED』

*注51 グラミーでのパフォーマンスは、なぜかリハーサル映像が流出している(そして、なぜか消されない)。リハーサルなので客席にはスタッフや関係者と思しき人たちがまばらにいるだけだが、その中にポール・マッカートニーが紛れて楽しんでいる様子が確認できる。

*注52 ダフト・パンクはザ・ウィークエンドの大ヒット・アルバム『Starboy』で、「Starboy」と「I Feel It Coming」の2曲をプロデュース。ザ・ウィークエンドは2020年の『Variety』誌のインタビューで、ダフト・パンクへの思いや、彼らとの出会いをこのように語っている。

彼ら(ダフト・パンク)は僕が音楽を作る理由のひとつだよ。一緒に音楽を作れなくてもいいから、彼らと友達になりたかったんだ、そうやって始まったんだよ――彼らとはLAのパーティで出会った。それで、僕たちはパリのスタジオに行って、「Starboy」と「I Feel It Coming」を4日間で作ったんだ。

『Variety』The Weeknd Opens Up About His Past, Turning 30 and Getting Vulnerable on ‘After Hours’

*注53 パーセルズはダフト・パンクとの出会いや彼らのプロデュースについて、『Figaro』でこのように語っている。

パリでライブをした時、ダフト・パンクのふたりが来てくれて。「俺らのスタジオに来ないか?」と誘ってくれたんだ。その時にはすでに「Overnight」のごく初期のデモが出来上がってたから、彼らのスタジオで演奏したよ。各々が楽器を持って、「もう少しディテールはこうしよう」とか掛け合いながら、生でセッションして作っていったんだ。そのあとは各パートがそれぞれ持ち帰って、結構な時間をかけてディテールを詰めていったよ。すごくナチュラルに、すべてが進んだな。

『Figaro』レトロなムードで魅了する、パーセルズという5人組。

*注54 2017年は、トーマとギ=マニュエルはそれぞれソロとしてもプロデュース業に励んでいた。7月にはトーマが共同プロデュースで参加したアーケイド・ファイア『Everything Now』、11月にはギ=マニュエルが共同プロデュースで参加したシャルロット・ゲンズブール『Rest』がリリースされている。

*注55 2022年2月22日22時22分、twitchにて1997年12月17日に開催されたライブの映像がサプライズ配信。その配信終了直後、『Homework (25th Anniversary Edition)』がリリースされた。


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