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【長田区地域づくり活動助成】おもちゃを地域の人々の懸け橋に

【団体名】ふたばおもちゃ病院

ふたばおもちゃ病院は、
「子どもへものを大切にする精神を育むこと」
「ふたばおもちゃ病院を地域交流の場とし、地域の活性化につなげること」
を目的に活動しています。
 今回はそんなふたばおもちゃ病院で活動されている津田弘文さんと井上勝博さんに、活動に対する想いや団体を作る上で苦労したお話などをお伺いしました。

【始まりは1枚のチラシから】
-記者-
まず活動を始めたきっかけをお聞きしてもいいですか。

-津田さん-
最初はおもちゃドクターの募集があったんです。
活動をするなら関わる人が皆、プラスの感情になるような活動がしたいと思っていたので、おもちゃを治して、子どもが喜んでいる姿を見ると自分も嬉しくなり、お互いにプラスの感情を得ることができると思い、応募したのが始まりですね。

-井上さん-
私は2021年の夏頃に新聞の挟み込みでチラシが入っていて、それを目にしたのが始まりなんです。

私が参加しようと思ったきっかけは3つあります。
①当時、私は定年しており、何か社会と繋がりを持ちたいと思っていたこと。
②単純におもちゃの修理おもしろそうだなと思ったこと。
③仲間づくりのため。
この3つの理由から参加してみようと思いました。

他に参加された方々も私と同じく、挟み込みのチラシを見て参加していました。
集まった方々は、概ね定年退職はしている、再雇用でアルバイトはしているけれども正社員ではない、というような同じ境遇の方ばかりでした。

おもちゃを治すということなので、メンバーはどちらかと言えば技術系の会社や製造系の会社に勤めていた方が多いです。中には学校の先生をしていた人もいますが。
1枚のチラシを見て集まった方ばかりなので、好奇心が強い方が集まったのかなとも思います。

-記者-
ふたば学舎からは、おもちゃドクターになった後、団体を作って活動してほしいという感じで募集があったんですか。

-井上さん-
そうですね。ですが活動するための資金とかはなかったですし、組織づくりに関してもみんな素人の中、自分たちで作っていかないといけなかったのでとても大変でした。

活動を始めて半年ぐらい経った時に、団体名もなければ、運営方針もない、活動の費用を賄う術もない、これからどうするってなったんですよね。
このままではあかんなってなるじゃないですか。それで組織は作らなあかんよね。そしたら代表誰かにやってもらわないとあかんよね。経理をする人1人はいるよね。広報するような媒体もいるよね。
などとみんなで話し合いながら1つ1つ決めていきました。

-記者-
組織としてまとまることができた要因は何だと思いますか。

-井上さん-
やっぱり一番の要因は、おもちゃドクターの募集に応募した方々の境遇が似ていて、同じような想いを持っていたからですかね。
それと「これから自分たちどうしていけばいいのか」っていう危機感をみんなが持ったことも要因の一つかなと思います。

何するにしてもどこに相談していいかわからなかったので、多くの方々の協力を得て組織を作りあげることができました。

-記者-
皆さんが同じ方向を向いていたからまとまることができたのかもしれないですね。

-井上さん-
そうですね。
たくさん意見が食い違うこともありましたが、今では16名まとまって活動しています。

【新たな気づきと今後の進む道】
-記者-
実際、ふたばおもちゃ病院として活動してみて、活動する前には気づかなかった新たな気づきみたいなものはあったりしますか。

-井上さん-
実際に活動してみて、
「壊れたものを治した」
「動かなかったものを動かせた」
という達成感や充実感を思っていた以上に感じることができるのは、新たな気づきでしたね。
自分もおもちゃを治せて達成感があるし、患者さんも再びおもちゃが使えるようになるし、win-winのような関係を築くことができるんですよね。

子どもだけでなく今は大人も自分のおもちゃを持ってきますから、そういった方々の悲しそうな表情が笑顔に変わっていくのを見ると「よかったな~」って思うんです。
そういう時にビジネスではない、よくあるおもちゃ屋さんに修理を持っていくのとも違う、人と人とのつながりを感じることができます。
この前もおもちゃを治したおばあちゃんが、差し入れを持ってきてくれたんですよ。そういった触れ合いがあるのは「やっぱりいいな」と思いますね。

あとはシニアのポテンシャルが高いな~って思います。
ふたばおもちゃ病院のたった16名のシニアの方々を見ていても「すごいな~」って思うことがいっぱいあるんです。
ふたばおもちゃ病院に来ている方々だって、これがなければポテンシャルを発揮することなく過ごしていると思いますよ。皆さんピンピンしてますし、ほんともったいないと思うんですよ。

-記者-
仕事を辞めて、自分の能力を活かすことができる場所を求めている方は多いのかもしれないですね。

-井上さん-
多いと思いますよ。
シニアの能力を再活用(再発揮)できる場所があれば良いと思います。おもちゃ病院の活動はその一つです。

-記者-
ふたばおもちゃ病院は、現在ふたば学舎で月2回、宮川地域福祉センターで月1回、定例活動を行っており、さらに花水木まつりやまちの文化祭への参加も行っていると思います。
今後、さらにこういう活動をしていきたいというものはありますか。

-井上さん-
まずは軸となるおもちゃを治すことを大切にしたいと思っています。
今は受け付けるおもちゃの数にばらつきがあるので、安定的な数を継続的に受け付けられるような仕組みを作っていきたいですね。

とはいえ、活動を行う上でのいろんな費用を賄う必要もあるので、ワークショップなどを通して多少のお金はいただかないといけないかなって思っています。

もちろんワークショップを行うのは、収益が目的ではありません。
主な目的は他団体さんとの協業(協働)、人脈づくり、イベントの盛り上げ等々です。
参加した花水木まつりや夏休みの工作教室、ふれまちフェスタ、まちの文化祭はそれぞれ依頼を受けて参加しました。

こういったイベントに参加することで多文化交流や地域交流ができるほか、コラボできそうな他の団体を探すことができたりするので、お祭りやイベントには積極的に参加するようにしています。
あとは外国の方がまだ1人も来ていないんですよね。なのでイベントを通じて外国の方が来てくれたり、海外のおもちゃを持ってきてくれたりしたらとても嬉しいですね。 

【おもちゃの進化についていく】
-記者-
インタビューの前に少し活動の様子を見させてもらいました。おもちゃを修理する際に難しい機械を使ってはいないように見えたのですが。

-井上さん-
難しい機械は使ってないですね。ドライバーとかニッパーなど普段どなたでも使うようなものを使います。
ただ時代を経ておもちゃはどんどん進化しているので、それに対応していく必要があります。

なので使用しているものは複雑じゃないんですが、それを使って部品を作ったり、型をとったりすることがあります。また、場合によっては100円ショップで売っている紙粘土から部品を作ったりとか。中には修理に必要なパーツが売っていないものもあるので。

-津田さん-
井上さんが仰るように、おもちゃの進化に合わせて、おもちゃドクターとしての能力も向上させないといけません。

外部の方におもちゃの治療について指導していただいたこともありましたが、その時教えていただいた知識を身に着ければ、進化するおもちゃをすべて治療できるかと言われればそうではありません。
そのため、おもちゃが進化していく中で、私たちも治療しながら勉強していくことが必要なんだと思います。

そうなると、どれだけやる気があるかが大事になってくるんですよね。
私自身も、ものづくりに少しでも携わったのだから、やってやろうって思う気持ちで、日本おもちゃ協会が発行している本を読んだり、分からないことは周りに聞いたりして、日々勉強しながら活動しています。

-井上さん-
本当に日々勉強しながら、自分たちも進化していかないといけないですよね。
そうやって努力はしているんですけど、受け付ける中で少ないですがどうしても治せないものが出てきてしまいます。

-津田さん-
やっぱり治せないものは出てきてしまいますね。
おもちゃを作る会社の企業秘密とかもあるんですよ。これ以上先は企業じゃないとできないっていうところがあって。
さすがにそこまでばらしてっていうのはできないので、もしその中を修理する必要があったとしたら、私たちには手に負えないっていう場合もありますね。

-記者-
自分たちで部品やパーツを作ったりすることは、やはりお仕事で長年ものづくりに携わってきた方だからできることなんですかね。

-井上さん-
そうですね。手先が器用な人とか、昔からプラモデルをいっぱい作ってきた方とかが多い印象ですね。

私たちが子どもの頃はプラモデルを作ったり、ぜんまいを巻いておもちゃを動かしたりして遊んでいましたし、ものが壊れたらすぐ買い換えるようなことは少なかったです。
というのも、近所のおじさんや、親が直してくれることが多かったんです。その姿を見て、私が興味本位でおもちゃを分解してしまい怒られるみたいなこともありました。そういう世代で育ったことが今のベースになっているんだと思います。

【理想の追求と課題】
-記者-
新しいメンバーの募集はあるのですか?

-井上さん-
1期生と2期生で活動していたのですが、新たに3期生として2名の方に活動していただいています。ただまだ再任用みたいな形で働かれているので、土曜日も2回に1回ぐらいしか参加できない状態です。
まぁでもそれはそれで良いんです。そういう方が社会人を完全にリタイアした際に、自分の居場所があるというようになればいいので。

-記者-
既に3期生が2名活動しているとのことですが、今後入りたい方がいる場合にはふたばおもちゃ病院に連絡すればいいんでしょうか。

-井上さん-
そうですね。何名かおもちゃ病院が活動しているときに来て見学されている方がいて、「何か御用ですか」と声を掛けたら、「おもちゃドクターになりたいんです」っていう方もいるので、電話していただいてもいいですし、活動の時に来ていただいても大丈夫です。

最初は何もわからないと思いますので、とりあえずは見学してもらう。そしてOJTみたいな感じで教えてもらいながらやっていくというような流れで活動してもらう感じですね。
私たちはこういった募集などの発信がまだまだ下手なんです。

-記者-
では、活動している中での課題としては広報の部分になってくるんですかね。

-井上さん-
広報の部分ももちろんそうなんですけど、先ほども言った安定的におもちゃを受け付けられるようにすることも課題ですかね。

おもちゃって結構ハードルが低くて、いろんな場所に置いても違和感ないんですよね。例えば子ども食堂を実施している場所や野菜の販売所とかに置いたってそんなに違和感ないと思うんです。
そういう場所を管理している方々に、いいように使ってもらってもいいのかなって思っています。例えば出前のサテライト病院とかができればいいなって思っています。

そういった活動ができるように、他の団体に自分たちを知ってもらうためにも、広報に力を入れる必要があると思っています。

-記者-
広報に注力し、ふたばおもちゃ病院の存在がどんどん社会に周知されていく中で、これからふたばおもちゃ病院をこうしていきたいみたいな想いはありますか。

-井上さん-
先ほども言ったんですけど外国の方がまだ来ていなくて。
長田区だと留学生が多いじゃないですか。おもちゃっていうある程度ニッチな世界ですけど、今多様性と言われる時代ですし、そういう人がおもちゃでも小道具でもいいので持ってきていただけたらなと思っています。

大人や子ども、おじいちゃんおばあちゃんといった多世代は来るけど、外国人の方とか、そういった意味での多様性の裾野を広げて、地域交流を行うにはどうしたらいいかを考えています。

-記者-
そういった地域交流は地域の活性化にもつながりそうですね。

-井上さん-
そうですね。ただそのためには他の団体と協力する必要があると思います。
どこかで活動している団体に「出前でサテライト病院するので、呼んでくださいね」とか、活動に人があんまり来なくて困っている団体があれば「一緒にやりませんか」とか言えるような、そういう団体間の交流があればいいなと思いますね。

-記者-
ふたばおもちゃ病院がそうやって他の団体との関係を築いて大きくなることで、同じように居場所を求めているシニア世代を取り込めることに繋がりそうですね。

-井上さん-
そうですね。ただそこで問題となるのが誰がやるのってことです。
まったく仕事もしてなくて、ふたばおもちゃ病院のような活動をしている方は少ないんです。アルバイトをしている方や病院に通院している方などが多くて、そういう方はある程度制限された時間の中で活動しているじゃないですか。

なのでそこで居てほしいなと思っているのが、事務局のような事務をしてくれる人がいればなと思います。
集まった人たちで活動していく際のお金の面や、常時参加できない方もいる中で、団体としてまとまりを作るための会議の場の提供などの段取りをするのが、片手間でするとなると結構大変なんです。

-記者-
理想像に近づけていくとなると必要になるということですね。

-井上さん-
そうですね。頑張りすぎて自分の首を絞める。今そんな状態なんです。その状態が続くといつか需要があっても対応できなくなってしまうかもしれないなと思っています。

-記者-
おもちゃ病院ってなるとどうしてもものづくり的な要素が強いので、事務作業をしていただく方を募集するのも難しいですよね。

-井上さん-
そうですね。なので「おもちゃ病院の介護士さんや看護師さん募集中です」みたいな感じで広報していくのがいいのかなとか思ったりしています。

【おもちゃを活用して理想の長田を】
-記者-
そういった工夫が必要になるのかもしれないですね。
最後に長田がどんな街になってほしいかを聞かせてください。

-津田さん-
長田は生き生きとした方が活躍していると思います。これが長田らしさなのかなと。

その長田らしさを生かして、様々な方が活躍するまちになってほしいなと思いますし、活躍の場の一つとしてふたばおもちゃ病院があるような環境を作れればなと思います。

-井上さん-
ある意味で脱皮してほしいですね。ぼっかけとかお好み焼きとかは置いといて、新しい長田を作るにはどうしたらいいのかなと考えることが大切かなと思います。
人口も減ってきている中で長田に住みたいなって思ってもらえるように。

あと長田にはいろんな国籍の外国の方がいるじゃないですか。でも普段外国の方と会わないんですよね。そういう方々が自分たちの文化を伝えたり、アジアンストリートを作ったりとか、そういうことができるといいなと思っています。

-記者-
そういうところでおもちゃを通じて交流するといった感じですかね。

-井上さん-
そうですね。おもちゃは万国共通なので。おもちゃがない国なんてないですからね。
ご当地おもちゃフェスティバルとかできたら面白そうですね。

-記者-
おもちゃにはたくさんの可能性が秘めていると、お話を聞いて感じました。
本日はありがとうございました。