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【ベトナム珍道中】E.Tとトモダチに。オメガ時計は何円?


「だえいにさ、あんじゃでぶあ」「ふぬぬいは」「あべし!」

東京ドーム2個分ほどの敷地内に叫び声が飛び交う。

「ここって、世紀末なんかな?」俺は後輩のすっちーに尋ねた。

「そっすね。さっき、あべしって聞こえましたし」彼は眉間に皺を寄せて頷いた。

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ジャングルに迷い込んだ探検隊はこのような気分なのだろうか。

商品の前で座りこみ、飯を食らい、スマホをいじっている店員たちを横目に、クンクンと鼻を効かせる観光客がいた。

バターと納豆を混ぜて、そこに、にんにくを加えたことはないけれども、ホーチミン市街の露天市場の匂いはまさしくそれだった。


異様な市場の雰囲気の中、キョロキョロと周りを見渡しながら前に進むと、時計屋が目に留まった。

ガラス箱に陳列された時計たちに、俺の心は奪われた。

そのとき、背後から何者かの気配を感じた。

その瞬間、ゴルゴ13が憑依した。
「俺の後ろに立つな!」という思いを胸に、後ろを振り返った。

そこには、130cmほどの身長のお兄さんが立っていた。

そして、俺の耳元で、「イイトケイ、タクサンアルヨ。ニホンエンモツカエルヨ」と囁いた。

市場中の空気がぞわっとした。日本語が話せることではなく、お兄さんの吐息が耳にかかったからだ。

お兄さんの言葉に軽くうなずいたあと、俺はすっちーに話しかける。
「この人、E.Tに似てない?」

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「どっちかといえばヨーダとちゃいますか?」

「すまん、ここは先輩の顔を立ててくれ。E.Tで行こう…」

どっちでもいいのにな、という表情を見せるすっちーは、
「了解っす」と答えた。

賛成多数。
これ以後、このお兄さんをE.Tと呼ぶことにする。

呼び方問題法案を通したあと、時計の審議、もとい、吟味に移ることにした。

ガラスケースの中に閉じ込められている無数の銀の塊は、拙者を購入してくれ!と言わんがばかりに、神々しく光り輝いていた。

その中でも目を引いたのは、美しいギリシャ文字が刻まれたものだ。

さらにそれには、オメガのマークが刻まれていたのだ。

もちろん目を疑った。
闇市の雰囲気を醸し出す市場で、天下のオメガの時計があるのだろうか。

俺はE.Tに尋ねた。
「イズディスオメガ?これってオメガなんすか?」

E.Tは、待ってました、と言わんばかりのドヤ顔を披露する。
「イエアァー!オメガ!オメーガ!」

そうか、オメガか。

人生は物分かりの良さが肝心だ。
E.Tがオメガといえば、これはオメガなのだ。

横ではすっちーが、「それ、絶対パチモンっすよ!帰国するとき、税関で摘発されたらヤバイっすよ!」と囁いているが、俺はもう止まらない。

それほどこのオメガにハートを鷲掴みにされていた。


肝心の問題は値段だ。
恐る恐る、E.Tに値段を尋ねようとしたが、オメガは10万~100万円と値段幅が広い。

普通に尋ねても手が出るはずがないので、捨て身の作戦に出ることにした。

俺は、財布から取り出した野口英世さんを、E.Tに差し出した。

「1000円、オッケー?」

E.Tの表情からは、梅干を舐めていることが読み取れる。


俺は、野口英世さんをもう一枚加えた。
しかし、梅干を飲み込んだままだ。

さらに、もう一枚、野口英世さんを追加した。

E.Tが唾を飲みこむ音が聞こえた。
酸っぱさを感じていたE.Tの顔に、生気がよみがえっている。

いける、これはいける。

俺は印籠を差し出すかのように、5枚の野口英世さんを召喚した。
「5」という数字にはエネルギーがある。

戦隊ヒーローもプリキュアも、いつだって5人だ。

たまに2人しかいないプリキュアもいるが、彼女たちはハートがMAXなのだから仕方があるまい。彼女たちが5人もいたらエナジーが暴発してしまう。

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参照:ふたりはプリキュア 井上亜樹子


仲良く並んだ5枚の野口さんを見たE.Tは、一本の指を差し出した。
それに反応し、俺も指を合わせる。

心が通い合う瞬間…いや、それは、スピルバーグ作品だ。

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俺の目の前にいるE.Tは、さっと手を差し出し、握手を求めてきた。
それに応じ、彼と握手を交わす。

温かい体温、これが人のぬくもりかもしれない。


そして、5枚の野口英世さんを渡し、オメガの時計を受け取った。

そのとき、脳内でどんちゃんが現れた。


「曲(チップ)を選ぶドン!」

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ああ、そうだ。チップを渡さないと。

チップはベトナムの通貨、ドンの方がようだろう。


俺はE.Tに、100000ドン、約500円をチップとして渡した。


そのときのETの笑顔は素晴らしかった。
満面の笑みで俺の肩を叩き、「トモダチ!トモダチ!」と連呼したのだ。

隣にいただけで特に何も買っていないすっちーも、「トモダチトモダチ!」と声をかけられていた。


50度で沸騰する水だろうか。
E.Tにとってのトモダチになる基準は低すぎるのではないか。

この程度で友達ならば、この世界はトモダチだらけだ。

疑問に思ったがすぐに考え直した。
E.Tはきっとグローバルならぬ、コスモを跨ぐほど心が広い人物なのだ。
生物みな兄弟という精神なのだろう。


―――――――――――――――――

翌朝。
左腕にはめられた光り輝くオメガは、14時を指し示していた。

「すっちー、俺らめっちゃ寝過ごしたぞ!もう14時や!」

「先輩、その時計狂ってますよ。今は9時です」

「は?1日で時間がズレたんか?」

「パチモンかつ、不良品っすか。訴えた方がいいんじゃないっすか?」

「訴えることはせんけど、ただひとつだけすべきことがある」

「なんすか?」

「トモダチ、破棄や」



最後まで読んでいただきありがとうございました!

前回のベトナム珍道中はこちらです!


最後に、ベトナム旅行の写真を少し掲載しますね!

これで事故らないのがすごいベトナムの道路。バイクだらけです笑

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奇跡のピンボケ


大量に買いすぎたネクタイ。

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ベトナムシリーズはもう少し続きますので、今後もお付き合いくださいましたら嬉しいです!

旅行シリーズはこちらのマガジンにまとめています!


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国家公務員⇒経営者団体⇒民間企業で営業 人生は喜劇を合言葉にブログ毎日投稿 全ての経験をコメディ・ノウハウに昇華! 【野望・展望】 ワクワク・笑顔・本質の捉え方を届ける! 創作=エンタメ映画製作 お仕事改革=教育システム構築 サポートのお金は皆様を笑顔にする事業の資金にします!