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幻のラッキーセブンにありがとうを言いたい

リクルートスーツに身を包んだ就活生を見ると、就活時代の記憶がうずきます。私は就活にめちゃくちゃ苦戦した人間です。

つい先日、就活に苦しんでいたときにスマホに書き残した、人の温かさに思わず涙した小話を発掘しました。私も頑張る就活生に優しくありたい、そんな自戒を込めてnoteに投稿します。


「最終面接」という響きは、6月(※当時の表向きの就活解禁日が6/1)になっても内々定が出ていない私には、重くて仕方ないものだった。最終面接にたどり着いたとしても、容赦なく落とされる。それまで感触の良い面接を経てきたのに、役員が出てきた途端に落ちる。私の整理されきれていない企業研究や、志望動機の見えなさ、熱意の低さが悪いんだろうと思いつつも、どこかで文系の、しかも社会学系の院卒に対する偏見があるんだろうなと悲しくなる。

そう思ってしまったのは、いくつかの企業での面接(特に役員面接)の経験からであった。

面接に呼んでおきながら興味を持ってもらえない、やたらと否定的な意見をぶつけられる、そんな手のひらを返したような反応をされた。これまで通過してきた面接と同じ姿勢で臨んでも、こうも豹変してしまうのか。
‘無い内定’の焦りと疲れとが混ざって毎日つらい気持ちを抱えていた。やり直せない過去にとらわれているのは無駄な時間だと頭で理解していても、人間そう簡単には割り切れないものだ。

残っているチャンスはどうにかモノにしたいと息巻いて、過剰なプレッシャーを自分にかけてしまう。情緒不安定を繰り返す。寝ても寝ても疲れが取れない。心のざわめきはいつまでも消えなかった。


ほとんど最後のチャンスと言ってもよい最終面接日がやってきた。その会社は、前述の冷淡な役員面接で落とされた会社と同じ業種の会社であった。ここも同じような結果になるかもしれない。ネガティヴな思いが浮かんでくるのをどうにか抑えて家を出た。不安な半日が始まった。何となく浮ついた気分で駅に向かい、いつもの電車にぎこちなく乗り込む。次に乗るのは東海道新幹線。どの座席なのか確認しておこうと思った。昨日、駅の窓口で買ったまましまいこんでいた、のぞみの切符を取り出して、車両と座席番号を確認する。
「あっ……!」

7号車7番C席。

ラッキーセブンが並んでいた。あぁ、きっとこれは、リクルートスーツを着て切符を買っていった私に対する、駅員さんからのせめてもの応援の気持ちなんだろうなぁ…。そのことに気づいたときには既に、私の目には涙が溜まっていた。涙は堪えきれなかった。私は車内で静かに泣いた。まだ面接まで3時間以上もあるのに、既にこんな調子でどうするんだ自分と焦りながら、昨日の窓口のお兄さんに心の中で感謝した。そして「頑張ります」と手の中にある切符に誓った。



後日譚としては、そのとき面接を受けた会社に入りました。失敗した役員面接の反省を踏まえて受け答えをしたことと、必死さやら緊張具合やらなんやらが上手い具合に噛み合ったのかもしれません。
この文章は、その面接の帰りにポチポチ打っていたものでした。

さて、最後にタイトルの意味について。
私の背中を押してくれたのぞみの7号車ですが、今ではS Work車両という、スマートEX予約専用車両になっています。もう窓口の人からは買えないんですね。あの当時だったからこそ受け取ることができた、いわば幻のエールだったのだと思うとまた少し胸が熱くなりました。

さりげない親切ができるオトナはカッコいい。私も自分がもらった親切を、自分の周囲に循環させていきたいです。

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