ラジオドラマ原稿『伝えたいこと』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2023年9月26日オンエア分)

嘘をつかない。隠し事をしない。泣かせない。
僕が彼女にしないと決めたことだ。
けれど、これらを守っていたとしても、
時には喧嘩になることもある。

昨日、僕は彼女と喧嘩をした。
僕もわがままだし、僕が思うに彼女もわがままだ。
原因は、ここでいうほどでもないくらいに、つまらないことだ。

これまでも何度か喧嘩はあった。
けれど、その日の夜に僕がLINEを送り、
一夜明ければ彼女からLINEが届いていた。

だけどその日は、僕は何もしなかった。

男「バーボン、ロックで」

気がつくと僕はバーのカウンターで一人、
バーボンロックを頼んでいた。
バーボンの酔いの中、僕は彼女のことを考えていた。
このバーで彼女はいつもダイキリを頼む。
そして飲み終えると僕の肩に頭を乗せる。

男「いかんいかん」

臨戦態勢だった僕は、バーボンの酔いでぐらついたようだ。
そしてスマホに手をやる。

男「君に嘘をついたことも隠し事をしたこともない。泣かせるようなこともしてこなかったはずだ。けれど、何度も怒らせて呆れさせてがっかりさせている。ごめん」

と書いて送信した。
すぐに既読にはならない。

男「いかんいかん」

僕はすぐに削除をした。

男「マスター、バーボンをロックで」

バーボンで強い気持ちを持つ。
今回は彼女が謝ってくるまで謝らない。
明日は休日で、一緒に映画を見にいく予定だった。
映画は一人で行くとして、そのあと食事の約束もしていた。
お店を予約もしている。
今からキャンセルはお店に申し訳ない。
一人で行くか、やはり彼女に謝って…。

男「いかんいかん。マスター、バーボンを、ストレートで!」

	時間経過。

目が覚めると、自分の部屋のベッドだった。
どうやって戻ってきたのか覚えてもいない。
LINEを見たが、彼女からはなにも送られてきていなかった。
僕がなにも送っていないのだから、あたりまえだ。

	「ピーンポーン」とインターホンの音。
	ガチャっとドアの開く音。

女「気分はどう?」
男「…え?」
女「飲めもしないバーボンをたくさん飲んだんでしょ?」
男「どうしてそれを?」
女「自分でLINEしたじゃない」
男「え?」

僕は自分のLINEを確かめる。
彼女にはなにも送っていなかった。

男「なにも送ってないけど」

と僕は彼女とのトーク画面を、彼女に見せた。

女「削除したの?それ送ってるから。送信取消しをしないと、相手には送ったままよ」

と言いながら彼女は僕とのトーク画面を見せてきた。
そこには僕メッセージがびっしりあった。
ぼんやり覚えているものから覚えていないものまで。

女「お店、予約してくれてるんでしょ。キャンセルは申し訳ないから行きましょ。映画は、また今度でもいいから、ゆっくり寝て二日酔いを直して」

彼女はそういって僕のベットに潜り込んできた。

おしまい。

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