ラジオドラマ原稿『僕がしてあげられること』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2023年8月29日オンエア分)

彼女が焼酎を買ってやってきた。

女「麦と芋と米。飲み比べをしよう」

そう言っていつものように玄関の靴を脱ぎ捨てて入ってきた。

女「本格焼酎だから、まずは本格的なアテを作る」

そう言っていつものようにキッチンに向かう。
僕は冷蔵庫に入っているソーダを取り出した。

男「とりあえずソーダ割りでいいかい?」

キッチンドランカーの彼女のために素人バーテンダーになるのが唯一僕のしてあげられることだ。

女「待って、レモン切るから。米焼酎のレモンサワーで」

そういうと同時に彼女はカットしたレモンを僕に手渡した。

男「米焼酎にレモンが合うの?」
女「コクがありながらさっぱりとした味わいの上品な風味になるんだって」
男「それは知らなかった」

と言いながら僕は米焼酎のレモンサワーを作って彼女に返した。

女「ありがと、乾杯」

と言うやいなや彼女はひと口飲む。

女「(男に)天才」
男「ありがとうございます」

そしてレモンサワーを飲み終わるころには、
彼女の本格的なナスの煮浸しとアボカドマグロユッケと砂肝ニンニクができていた。

男「麦焼酎はシンプルにソーダ割りで。スッキリした味わいでこの本格的なアテにも合うと思う」

彼女は満足そうにアテをつまみながら麦のソーダ割りを飲み干していく。

男「芋焼酎は前割りしておくのいいんだ。数時間、もしくは前日に水で割って冷蔵庫に入れておくとかしてね」

と言って数十分前に作って冷蔵庫に入れていた芋の前割りをグラスに注いで彼女に渡した。

男「数十分でもどうだい、まろやかでしっくりくるだろ?」
女「うん、このしっくり感、私たちみたいね」

彼女の頬を赤くしたのは、焼酎か、それとも自分の言ったセリフだろうか。
僕は彼女にキスをした。

男「せっかくだし焼酎でカクテルでも作ろうか」

そう言って僕はグラスにライムを絞って氷と芋焼酎を入れる。
それからアガベシロップを少し入れ、ソーダで割って最後にミントを1枚飾る。

男「芋焼酎のモヒートなんてどうだろう」
女「おいしい!芋焼酎ってこんなにフルーティなんだ」

CMみたいな口調で彼女がそう言った。
ところで明日は彼女と映画を見に行く約束だった。
映画はもう明日が最後で、もう午前中の一度きりしかやってない。

翌朝、案の定僕らは間に合うギリギリに目を覚ました。

男「準備はできたかい?」
女「ちょっと待って〜」

彼女のメイクは少しだけ時間がかかっているようだ。
僕は、映画には遅れても構わないよ、と思ったが、
そんなことは言わずに彼女のメイクが終わるのを待っていた。

おしまい

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