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研修医に伝えたいこと〜救急外来を生き抜く〜①「胸痛・腹痛のレッドフラッグサイン」

最終更新:2023年11月6日

本州では金木犀の季節が終わると耳にする一方、北国では雪虫の大量発生に辟易している今日この頃・・・。
現在、見習い総合診療医(総合診療専攻医)である筆者は、とある病院の救急外来で研修医指導の任を仰せつかっています。

医師3年目であり、つい去年まで研修医だった筆者。
そんな自分が教えると言うことの意味。
それは、
研修医目線で見逃しがちなポイントをしっかり教えること
心理的安全性を担保するべく声がけをちゃんと行うこと
に尽きると思います。
そして、「教えることは、学ぶことの最上級」というのは本当で。
自分自身も学びが一層深まっていることを実感します。

そこで、これから自分のペースで、
「研修医に伝えたいこと」〜救急外来を生き抜く〜と題して、
研修医に最低限知っておいてほしいことをまとめてみようと思います。

あくまで、「救急外来を生き抜くための必要最低限」に絞ってのコンテンツであり、救急外来でもすぐに使えるように、パッと一目でわかることを大事に、シンプルな構成にしました。
そのため、大事なことだけを厳選し、ぎゅぎゅっとまとめた形をとっています。「これが足りない!」「あれが足りない!」と言うお声もあるかと存じますが、コンセプトはあくまで上記のように定めていることをご容赦ください。

もちろん、先輩方からのご助言はいつでも大歓迎です。
お気づきの点がありましたら、ぜひコメントでご教示ください。
では、初回は「胸痛と腹痛のレッドフラッグサイン」です。


胸痛

まずはこの流れ!

症例:心血管リスクのある胸痛患者
急性冠症候群(ACS)を否定しよう!

心血管リスク:高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙、中高年、家族歴

①バイタルサインチェック
 ↓
12誘導心電図
 ↓
③臥位のまま
・モニター装着
・ルート確保
血液ガス含め採血(迅速トロポニンなども)
 ↓
④モニターをつけたまま問診、身体診察
 ↓
⑤必要なら胸部レントゲン、心エコー、胸腹部造影CTへ

🚩レッドフラッグサイン→ACSはじめ心血管疾患らしさ!

突然発症
・苦悶様表情
・末梢冷感顕著
バイタルサイン異常あり
冷汗、嘔気、呼吸困難、意識レベル低下、神経学的異常(より解離が疑わしい)など随伴症状あり
・胸痛の放散や移動あり→ACSや解離が疑わしい

最低限これだけは!

⭐️突然発症の「臍から上の症状」・心血管リスク冷汗あり
ACSを疑ってまずは心電図をとること!


腹痛

まずはこの流れ!

症例:現在も症状が続き苦しがっている腹痛患者
緊急手術が必要な急性腹症を否定しよう!

①バイタルサインチェック
 ↓
②臥位のまま
・ルート確保
採血(血液ガス・術前検査セット)
・補液
アセリオ1000mgを15分で投与(これが腹痛診療の妨げになることはありません!まずは疼痛をとりましょう)
 ↓
③問診、身体診察、腹部エコー
 ↓
④必要なら単純+造影CTへ
(出血性疾患を疑う場合は、早期相と平衡相も入れた造影CTで)
※女性なら、妊娠反応陰性を確認してから造影CTを撮像すること!

🚩レッドフラッグサイン→緊急手術が必要な腹痛らしさ!

・突然発症
・苦悶様表情
・末梢冷感顕著・冷汗
・バイタルサイン異常あり
触診で腹部が硬い
・腹部全体での反跳痛や筋性防御がある→汎発性腹膜炎を疑う
硬くないわりに、疼痛が激しい→腸管虚血や大動脈解離を疑う
※腸管虚血:上腸間膜動脈塞栓症、絞扼性腸閉塞

・血管雑音や拍動性腫瘤がある→大動脈瘤切迫破裂を疑う

最低限これだけは!

⭐️突然発症
・腹部が硬い腹痛
・腹部が硬くない割に激しい腹痛

は、緊急手術が必要な急性腹症を想定して、速やかな造影CT撮像を検討すること!

最後に

「意外と、腹痛のレッドフラッグサインのまとめって見たことがないな」
「よくある症候のレッドフラッグサインを一覧にしたら救急外来で即戦力になりそうだな」
と、救急外来の指導医をしていて思ったのが、本note執筆のきっかけです。
少しでも悩める研修医の役に立ちますように。
何よりも、
⭐️突然発症の病歴
⭐️バイタルサイン
⭐️「あ、なんかやばそう!」という感覚(sick感など)
を大事に、救急外来を乗り越えてくださいね。

参考文献
・内科外来マニュアル第3版「胸痛」「腹痛」
・内科レジデントの鉄則第4版「胸痛」「腹痛」
・京都ERポケットブック第2版「胸痛」「腹痛」
・急性腹症診療ガイドライン2015

第1回改訂:2023年10月29日
第2回改訂:2023年11月6日

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