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人事制度を作るコンサルタント | エンジニア→IT企業人事→リクルート社でコンサル(人事制度 組織開発)→アカツキ社で人事企画→壺中天 | 主な著書『人材マネジメントの壺』| タヌキ似のポメラニアン飼ってます(^^)b

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  • 人材マネジメントの壺 テーマ.人材開発

    一人ひとりの成長に組織が意志を持って行う投資

  • 人材マネジメントの壺 テーマ.等級

    目的を持った人が自らの意志で登りたくなる階段が等級の理想形

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    人間を見ろ

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    自由っていったい何だい?

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    報酬とは働くことで得られるものすべて

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師が教えるのではない、弟子が学ぶのだ

なにかを「教える」ことはできるのか?「『教える』なんてことは、そもそも不可能だ」極論に聞こえるかも知れませんが、私はそう考えています。 先生がどんなに良い授業しても、生徒が寝ていたら何も学ぶことはできません。なにかを『学ぶ』というのはどこまでも「受け手次第」なのです。 中国の古典にそれを示す面白い話があります。黄石公(こうせきこう)と張良(ちょうりょう)という師と弟子の話です。 ある日、路上で出会うと、馬上の黄石公が左足に履いていた沓(くつ)を落とす。「いかに張良、あの

    • 従業員と企業の関係性が根本的に変わる アクセンチュア流「働き方改革」を読む

      アクセンチュア社が「働き方改革」に挑んだプロジェクト・プライドという2015年からの取り組みを江川社長自身が書かれています。とても良い本でした(^^)b 組織は変わり得る。 激務で終電が当たり前(むしろそれが誇り)という風土だったアクセンチュア。2017年には残業時間は1人あたり平均1時間にまで減り、離職率は1/2以下、有給取得率、女性採用比率も上昇。 しかも、業績も50%以上成長しているとのこと。当たり前を当たり前に「やりきる」ことの威力を見せつけてくれます。 改革

      • 人事コンサルの切断とこころ(河合隼雄『こころの処方箋』を読む)

        人の心などわかるはずがないユング心理学を日本に持ち込んだ心理学者、河合隼雄との出会いは、小学生のころ母の本棚にあった『こころの処方箋』でした。 一章のタイトルは「人の心などわかるはずがない」。ここでまずズガンとやられます。 一般の人は人の心がすぐわかると思っておられるが、人の心がいかにわからないかということを、確信を持って知っているところが、専門家の特徴である 読んだことのない方は、ぜひ目次だけでも見てください。「100%正しい忠告はまず役に立たない」「己を殺して他人を

        • 自由とは動き続ける△である(青山拓央『時間と自由意志:自由は存在するか』を読む)

          自由の正体見たり△(三角形)尾崎豊とともに「自由っていったいなんだい?」と叫び続けて30年の私でしたが、先日、自由の正体がわかったのでご報告します。 意外なかたちをしていました。 △(三角形)です。 それを教えてくれたのは青山拓央『時間と自由意志:自由は存在するか』。「自由意志」について論じた哲学書です。やや難解ですが、できるだけわかりやすくご紹介したいと思います。 自由意志について論じた哲学書 青山拓央によれば、自由は3つの円とそれらを内包する三角形からできていま

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        • 人材マネジメントの壺 テーマ.人材開発
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          おもったとおりにやるために(森博嗣『自由をつくる 自在に生きる』を読む)

          人生の目的は、自由の獲得森博嗣はコンクリートの研究者で『すべてがFになる 』でデビューしたミステリ作家でもあリます。速筆多作であっという間に人気作家になり、今は隠居して鉄道模型を作っています。 その文章からいつも感じるのは思考の自由。 ここまでやりたいように、思ったとおりにやれるのか。『自由をつくる自在に生きる 』は彼自身がその自由を語っている本で、とても面白かったのでご紹介します。 森博嗣は「人生の目的は、自由の獲得」だと言います。そのシンプルで(ややつっけんどんな)

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          なぜ日本人は「調和」を大事にするのか?

          「調和」を壊したくない日本人 前回、なぜ日本企業は「仕事」ではなく「人」で評価と給与を変えるのか?という問いに、それは調和を大切にしているからだ(だから人を見る職能等級が普及したのだ)と答えました。 今回は、なぜ日本人は調和を大事にするのか?を考えてみましょう。 日本人の特徴を示す面白い話があります。心理学者の河合隼雄が『ユング心理学と仏教(2010/1/16,岩波書店)』の中で書いた、日本人とアメリカ人のスピーチの違いです。 アメリカ人はスピーチをジョークからはじめる

          なぜ日本人は「調和」を大事にするのか?

          なぜ日本企業は「仕事」ではなく「人」で評価と給与を変えるのか?

          仕事か人か、あなたの会社はどちら?Aさんは、経理と労務と総務の仕事ができます。Bさんは、経理しかできません。 2人が経理担当という同じ仕事につきました。経理としての力はおなじだとします。さあ、どちらの給与を高くしますか? 多くの日本人は、Aさんを高くすると答えるのではないでしょうか。それは「人」基準です。同じ経理担当だからAさんとBさんは同じ給与だ、とするのは「仕事」基準で、欧米企業の多くがこの考え方です。 経験や能力は人に属するものとして、人によって扱い(給与、区分

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          幸せってなんだっけ?(青山拓央『幸福はなぜ哲学の問題になるのか』を読む)

          ポン酢しょうゆのある家「幸せ」ってなんでしょうか? そのシンプルだけど深い問いに、明石家さんまは軽やかに答えていました。 ♪幸せって何だっけ?何だっけ? ♪ポン酢しょうゆのある家さ ♪ポン酢しょうゆはキッコーマン ただの醤油のCMソングのようですが、実は幸せの本質が含まれていると思うのです。 このCMが流れたのは1980年代というバブル全盛期。おなじテレビCMでもリゲインは「24時間戦えますか」と歌っていた時代です。 日本航空機墜落事故を便の変更で偶然免れ「生きてる

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          意志ある自由の美しさ(森博嗣『「やりがいのある仕事」という幻想』を読む)

          日本では「仕事のやりがい」が低下し続けているそうですが、そもそも「やりがいのある仕事なんて幻想」だと言い切っている面白い本をご紹介します。森博嗣『「やりがいのある仕事」という幻想(2013/5/30,朝日新聞出版)』です。 作者の森博嗣は、大学准教授だったため学生や卒業生から仕事についての悩みをよく相談をされたのだそうです。そんな悩める若者たちに向けて書かれた本ですが、働く人にとっても参考になる内容だと感じました。 森博嗣は悩む学生たちをこう見ています。 昔は悩む暇など

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          自由っていったい何だい?どうすりゃ自由になるかい?(『尾崎豊』という存在)

          尾崎豊には強い影響を受けました。 40歳を過ぎた今でも「十七歳の地図」や「15の夜」を熱唱します。もう娘が17歳なのですが。 私が神妙な顔つきで黙りこんでいるときは、心の中の尾崎がシャウトしていると思ってもらって間違いありません。 それは、こんな尾崎です。 「自由になりたくないかい?」と叫び、盗んだバイクで走り出しても「自由になれた気がした」だけの尾崎。 「愛したい」と願うが、「いったい何が愛なのかそれは誰にもわからない」と思っている尾崎。 他者の集合である「街」

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          報酬とは働くことによって得られるものすべて。内的報酬は満足を生み、外的報酬は不満をおさえる

          報酬とは働くことによって得られるものすべて報酬とは何でしょうか? 多くの人が「賃金」のことだと思っているかもしれません。しかし実は報酬とは、働くことによって「得られるものすべて」のことです。 例えば田坂広志『仕事の報酬とは何か 人間成長をめざして(2008/7/1,PHP研究所)』によれば仕事の報酬とは「能力」「仕事」「成長」だと書いてあります。 能力や成長はわかる気もしますが、仕事が仕事の報酬であるとは、一体どういう意味なのでしょうか? 報酬とは、賃金だけではない企

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          十牛図とは何か?悟りのプロセス漫画版

          禅における「悟り」のプロセスを説明したと言われる「十牛図」についてお伝えします。 学びの構造については『「教える」ことはできない 「学ぶ」ことしかできない』もご参照ください。 私のお伝えしたいことは以上です。

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          日本の優良・長寿企業と、世界のビジョナリーカンパニー(『日本の持続的成長企業』を読む)

          世界の長寿企業の56%は日本にある前回、世界の偉大な企業の作り方として『ビジョナリーカンパニー2』をご紹介しましたが、今回は日本版ビジョナリーカンパニーと呼ばれている本をご紹介します。 野中郁次郎・リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所『日本の持続的成長企業 ―「優良+長寿」の企業研究(2017/8/18,東洋経済新報社)』です。 単純な優良企業の研究ではなく、長寿企業の研究でもあるところが面白いですね。日本は長寿企業の数が世界一多い国です。世界最古の企業も

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          世界の偉大な企業の作り方(『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』を読む)

          偉大な企業づくりの教科書ジム・コリンズ『ビジョナリーカンパニー2(2001/12/18,日経BP社)』は「普通の企業・良い企業」がどうやって「偉大な会社」になるのか、時代や業界を超えて共通する「飛躍の法則」をまとめた教科書です。 ビジョナリーカンパニーとは「業界や時代を超えて生存する、偉大(GREAT)な企業」です。瞬間的にサービスが拡大するだけでは普通の良い(GOOD)企業。GREATな企業は、ビジョンがあり、未来志向、先見的な、業界で卓越した、同業他社のあいだで広く尊敬

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          管理職として昇進しやすいのは「社交的で臆せず意見を主張し、革新的で思いきった決断をする」性格の人

          リーダー向きの性格はないリーダーに向いているのはどんな人でしょうか?大沢武志『心理学的経営―個をあるがままに生かす』にはこうあります。 パーソナリティ特性とリーダーシップの間には、一貫した関係を単純には見出すことはできない。簡単に性格から適性を見出せると思ってはならない。 性格によってリーダーへの向き不向きは言えないようです。たしかに現実で周囲を見渡してみると様々なタイプのリーダーが、いろんなやり方でリーダーシップを発揮しています。 しかし、リーダーをさらに「管理職」と

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          「教える」ことはできない 「学ぶ」ことしかできない

          師が教えるのではない、弟子が学ぶのだ人は「学ぶ」ことはできますが、「教える」ことはできません。例えば、どんなに良い講義でも、受講者が聞いていなければ無価値です。 学びとは、すべて受け手次第なのです。 私が好きな話を紹介させてください。中国の古典で黄石公(こうせきこう)と張良(ちょうりょう)という師弟の話です。 張良というのは劉邦の股肱の臣として漢の建国に功績のあった武人です。秦の始皇帝の暗殺に失敗して亡命中に、黄石公という老人に出会い、太公望の兵法を教授してもらうこと

          「教える」ことはできない 「学ぶ」ことしかできない