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世界の偉大な企業の作り方(『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』を読む)

偉大な企業づくりの教科書

ジム・コリンズ『ビジョナリーカンパニー2(2001/12/18,日経BP社)』は「普通の企業・良い企業」がどうやって「偉大な会社」になるのか、時代や業界を超えて共通する「飛躍の法則」をまとめた教科書です。

ビジョナリーカンパニーとは「業界や時代を超えて生存する、偉大(GREAT)な企業」です。瞬間的にサービスが拡大するだけでは普通の良い(GOOD)企業。GREATな企業は、ビジョンがあり、未来志向、先見的な、業界で卓越した、同業他社のあいだで広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与えつづけている、我々の生活になくてはならない企業。そして、最高経営責任者(CEO)が世代交代している、当初の主力商品のライフサイクルを超えて繁栄している企業だとコリンズは定義しています。

飛躍の法則

コリンズたちは調査の末、偉大な企業に100%共通し、良い企業には30%共通するモデルを見つけました。それは、明暗を分ける大きな意思決定や劇的な改革ではなく、準備期間もあり、地道な動きだが、後半は大きな車輪が回り出す「弾み車」のモデルです。その5つのポイントを見ていきましょう。

弾み車のモデル
(ジム・コリンズ『ビジョナリーカンパニー2』を元に作成)

1.第五水準のリーダーシップ

謙虚と意思

飛躍を指導したリーダーは強烈な個性を持つ派手なリーダーではなく、むしろ内気で、もの静かで恥ずかしがりでした。謙虚さと意思の強さを持ち、そして野心は個人ではなく会社のために向けられていることをコリンズは指摘しています。

その姿はアブラハム・マズローの「Z理論」の体現者の特徴にも当てはまります(参照:『本質的な仕事の価値に没頭するプロフェッショナル』)。また職務への献身というプロフェッショナリズムの精神的側面も強調されています。

窓と鏡

そして、成功した時は窓の外を見て成功の要因を見つけ出し、うまくいかないときは鏡に映る自分に責任があると考える「窓と鏡」の思考様式を持っているそうです。

自分へのフィードバックを受け止めて内省する姿勢、それはたしかに影響力(リーダーシップ)を高める原則です(参照:『リーダーシップとは何か?それは伸ばせるものなのか?』)。

2.最初に人を選びその後に目標を選ぶ

偉大な企業は、はじめからビジョンと戦略を描いたわけではないことがわかりました。偉大な企業は、事ではなく、人からはじまるのです。

最初に適切な人をバスに乗せ採用)、不適切な人をバスから降ろし代謝)、適切な人がふさわしい席配属)に座ってからどこに向かうかを決めています。採用も配置も、冷酷なのではなく、超厳格です。ちょっとでも疑問があったら採用しない専門スキルではなく、性格や基礎能力を重視している、とコリンズは言います。適切な人を採用するのが当たり前、という文化が偉大な企業をつくっています。

3.厳しい現実を直視する

3つ目のポイントは厳しい現実を直視する「ストックデールの逆説」です。ストックデール将軍は、ベトナム戦争の捕虜収容所の中で8年を生き抜きました。その時に生き残った捕虜は「厳しい現実を想定し、でも最後には必ず勝つと確信」していたそうです。逆に「次のクリスマスには出られるのではないか」と楽観していた捕虜は脱落していきました。

どんな困難にも必ず勝てると確信する」こと、しかし「極めて厳しい現実も直視する」こと。対立する両極を葛藤とともに保持することが偉大な企業に共通しているとコリンズは言います。

4.ハリネズミの概念

4つ目は、ハリネズミの概念です。賢くて俊敏で様々な手法を持って、あれこれ考えては仕掛けるきつねは、冷静にたった一つの要(丸まってやり過ごす)を実行するハリネズミに勝てません。経営においては下図の「三つの円」が重なる一点だけを知っていれば良いことになります。

ハリネズミの概念と三つの円

情熱を持って取り組めるもの自社が世界一になれる部分経済的原動力になるものの重なりです。今の事業が世界一になれるフィールドとは限りません。偉大な企業は、ここの見定めにとても多くの時間を費やしていることがわかりました。

この三つの円は、個人のキャリアについて考えたエドガーシャインのWILL・CAN・MUSTの構図にも重なります。

5.規律の文化

5つ目は規律の文化です。これがあると階層組織は不要になるとコリンズは言います。規律ある行動がとられていれば、過剰な管理は不要になるのです。自ら規律を守り、規律ある行動をとり、三つの円が重なる部分を熱狂的に重視する人たちが集まる企業文化が鍵です。管理とは規律の欠如と無能力を補うものでしかないとコリンズは断言しています。

弾み車はゆっくりと回り出す

劇的な転換はゆっくりと進みます。革命とは、重い車輪を回すことです。準備期間もあり、地道な動きですが、ついには大きな車輪が回り出し、勢いが止まらなくなる。これが、GREATな企業になるジム・コリンズの『飛躍の法則』です。

次回は、日本版ビジョナリーカンパニーと言われている野中郁次郎『日本の持続的成長企業』について、そして世界の偉大な企業と日本の持続的成長企業の比較について掲載する予定です(記載しました!)。


このnoteは拙著『人材マネジメントの壺 テーマ7.組織開発』から一部抜粋して作成したものです。ぜひ本編もご覧ください(^^)b


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