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薬局市場を考える

今回は薬局の売上を上げることについて考えてみたいと思います。約60,000軒と言われる薬局市場。大手調剤チェーンやドラッグストアが着実に市場拡大をしています。企業の継続には売り上げが必要で、そのためには努力も必要です。門前処方箋の拡大は主に医療機関のマーケティングなので、そこに期待をすることは経営努力とは言えません。SNS上にある経営者美談の裏にある実態を確認することは難しく、鵜呑みにできる者でもありません。いま薬局業界がどうなっているのかを考えることも市場を知るためにとても重要なことです。

コロナ禍における処方箋市場は

新型コロナウイルス感染症の拡大、度重なる緊急事態宣言の発動により不要不急の外出自粛が国民に求められました。これは医療機関への受診にもあったと言えます。しかし、ある程度の落ち着きと慣れを感じる2021年はいったいどうだったのか、感覚値ではなく実態を見てみると

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このような感じになっています。(処方箋受付回数と金額:社保)
最初の緊急事態宣言が行われた2020年5月におおきな絵落ち込みを見せ、例年よりも応需枚数は減少傾向にあったと言えます。
しかしながら金額ベースで見てみると、受付回数ほど落ち込みは見えません。これはご存じの通り、処方の長期化による薬剤費が上がったことが要因としてあげられます。

では、2021年はどうなったのかというと、意外なことですが、年初は落ち込みを見せましたが、コロナ以前と比べると処方箋の応需枚数は2019年と同程度まで戻ってきていると言えます。金額ベースで見てみると、不思議なことに過去3か年で最大となっていることは、気を付けてみる必要があります。

もちろん売上=利益ではないので技術料でも見てみなければいけないのですが、データは用意していませんが、1枚当たりの技術料単価は皆さんの薬局ではどのような変化をしてるでしょうか。主たる科目によりますが、多くのところでは若干のプラスになっているのではと思います。

残された処方箋市場

医薬分業から約50年。分業率は75%を超えほぼほぼ頭打ちに来ていると言われています。

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上記データは日本薬剤師会のデータから作成したものですが、注目をしなくてはいけないのが院外処方せん発行数の伸びに比べて、投薬対象者数(院内含む)が減少していることです。この状況をどのように見るのかということが今後の市場を考えていく上で大きなポイントとなります。
完全分業までは残り約25%ですが、これらの多くはご存じの通り、官公立病院などの大きな病院です。現在敷地内薬局の乱立が始まっていますが、それらの病院が主と考えると、地元薬局が入れるような市場ではないことはわかります。
そこから考えると、これからの薬局市場は既存の処方箋を奪い合う市場に入っているということがわかります。
もちろん、新規開局なども一定数ありますが、いわゆる良い案件については、大手企業を中心とした営業部隊がすでに動いていることもあり、よほどの人脈等がなければ、20~30年前のように新規開局で店舗数を増やしていくということは難しいと言えます。

気になるドラッグストアの動向

大手薬局チェーンによる市場寡占化が注目をされていますが、近年もう一つ気になるのがドラッグストアによる処方箋事業への参入です。

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こちらはウエルシアHDのIRより集計したものですが、驚異的なスピードで処方箋を獲得していることがわかります。皆さんも自店舗の処方箋応需枚数の推移などは把握していると思いますが、比べてみていかがでしょうか。もちろん門前処方もありますが、この伸び率を作っているメインは「地域処方」です。
・安い
・ポイント
・待ち時間なし(時間を潰せる)
このようなドラッグストアの強みに対して、いわゆる”処方箋薬局”はどのように戦略を組み戦っていく必要があるのかを考えなくてはいけません。

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こちらは2021年度第一四半期決算書から持ってきた出店数ですが、薬局チェーンに比べて、ドラッグストアの出店件数が非常に多くなっています。
北陸を主戦場とする「クスリのアオキ」が7月1日に40店舗同時開局(調剤併設店)をしたことは大きな驚きでした。
九州エリアで圧倒的な力を持つ「コスモス」も今期は20店舗~30店舗の調剤併設店を開局すると決算報告会で発表しています。
門前医療機関に頼らないドラッグストアの出店スタイルは調剤専業の薬局チェーンにとっても大きな脅威と言えます。

薬局運営をどうしていくのかの分岐点

現在規制改革推進会議や、特区などでまた新しい動きがあります。それはオンライン服薬指導であり、調剤の外部委託という新しい仕組みです。オンライン服薬指導は0410通知もあり、例外的にスタートしましたが電話が許されている現状、普及しているとは言い難いですが、コロナが落ち着いた後、大きな動きを見せると予想されます。
医療の地域偏在や、過疎地域への提供問題もオンラインを活用することでインフラを確保することは可能です。
調剤業務の外部委託は大手企業にとってはまたとない「調剤業務の集約化」であり、大規模投資すべき優先事項となります。
より多くの薬局が「対人業務を行うために」という大義は吹き飛び、より効率よく業務を回すための仕組みへと転換します。
「地域のために」「患者のために」というビジョンの下に薬局づくりが進められてきましたが、最終的にどこで薬を貰うのかを選ぶのは「患者」です。
「患者に選ばれる」方法を考え実行に移していかなれば、時代の変化と共におこる患者の行動変容に多くの薬局が飲み込まれてしまうのではないでしょうか。
いまある当たり前が、当たり前ではない未来が来る。その時に、変化に敏感でなくては旧態依然と言われて終わってしまいます。
皆さんの知らない所で市場の集約化は大きく進んでいます。何ができるのか、何をしなければいけないのか、そんなことを仲間たちと日々考えています。

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