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静かな船出となった第1回保護利用小委員会

小寺・西田の金曜ランチビュッフェ 42号(2015年7月10日発行)より

2週前のメルマガでお話しさせていただいたところだが、7月3日金曜日に文化庁にて、平成27年度 第1回 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会が開催された。昨年の同委員会では、主にクラウドの利用に対して著作権法の対応が必要かを議論してきたが、権利者の対価の部分まで議論が届かなかった。

今年はその部分を主に議論するということで、第1回目はMIAUに発表の機会が与えられた。同じ消費者代表である主婦連は特に発表の機会はないということだったので、MIAUと主婦連で意見を統合し、共同発表という形で意見を述べさせていただくことになった。

議事としては、主査の選任、事務局から世界の補償金の現状についての報告、MIAU・主婦連の発表、JEITAの発表と進み、最後に1時間ほど質疑応答及び意見交換となった。主査は昨年から引き続き、日本大学大学院知的財産研究科の土肥一史 教授、副主査は弁護士の末吉 亙(わたる)先生に決まった。

今回はMIAU・主婦連の発表とJEITAの発表、質疑応答や意見交換の内容などをまとめてみたい。

■MIAU・主婦連の発表

コデラの個人的な考えは2週前の「論壇」でお伝えさせてもらった。基本線としてはあの路線だが、主婦連さんとディスカッションしていく中で若干主張を丸めたり加えたりした部分がある。

当日の発表資料は以下のところに置いてあるので、全部をご覧になりたい方はダウンロードなどして頂くとして、ここではポイントだけをかいつまんでご紹介する。

まず現状分析として、音楽はストリーミングサービスの台頭により、ユーザーが自分で便利に聴くためにコピーをする必要がどんどんなくなっている。ハイレゾはまだコピーが必要だが、多くの方はApple Musicをはじめとする月額固定聞き放題サービスで十分足りるようになるだろう。

・映像も音楽も、私的複製の機会は減る傾向にある

一方映像のほうは、放送コンテンツが強いのが日本市場の特徴で、その点は世界と違う。だが映像に置いてもやはり月額固定見放題型サービスが増えている。この秋日本でサービスインするNeFlixがどれぐらい日本の視聴文化を変えるのか、そこはまだ未知数ではあるものの、音楽の状況から数年遅れで、似たようなことになるのではないかという予想は立てられる。

ただ、映像作品も映画やアニメ作品はマルチウィンドウ展開に積極的なので、こうした公式サービスから提供されるケースは多いだろう。一方で日々量産されているテレビ番組は、見逃しサービスもあるもののまだ完備されているとは言えず、放送して終わりという番組も少なくない。

こうした番組を自由なタイミングで見ようとすると、各個人がレコーダに録画するなりしてタイムシフト、プレイスシフトするしかない。昨年夏ぐらいから規制緩和され、宅外にいてもレコーダからストリーミングで再生できるようになってきたが、昨年以前の製品がアップデートで再生可能になる例は少なく、技術的には普及しているとは言えない。

・個人が録画した番組のストリーミング再生は、技術的には整備されつつある

いずれにしても、多くの人にとってはこれから私的複製をする機会というのはどんどん減っていく。複製行為をしなければ、権利者に対してはなにも補償するものがないということになる。

唯一コピーするかもしれないのが、テレビ番組である。だがそれもダビング10により、1世代しか番組が残せないので、それ以上のコピー行為が発生しない。さらにダビング10ルールに対応するためにDVD-RやBD-Rに課せられた著作権保護技術、CPRM(Content Protection for Recordable Media)が非常にクセモノだ。

AppleがCPRMに対して否定的であることから、Mac OSがCPRMに対応していない。さらに言えばDVDやBlu-rayプレーヤーソフトもCPRMに対応しておらず、現時点では合法的にMacでテレビ番組を記録したDVD-RやBD-Rを再生する方法は、ない。

Linuxは別の理由からできない。Linuxはオープンソースなので、暗号化技術やコピーコントロール技術もすべてオープンになる。それではコントロールもなにもできないので、この手の制御技術とは基本的なコンセプトが相容れない。以前はUbuntu向けのPowerDVDが存在したのだが、現在はもう販売されていないので、こちらも合法的に視聴する方法がないままである。

・CPRMは問題が多い技術

そこで提案だが、世代コピーを許容してもっと複製できる案件を増やしていかないと、補償する先もなくなっていくので、新しい対価還元の仕組みも作れませんよね、ダビング10を見直しませんか、という話でまとめた。

また還元した対価の使い道も、各家庭でどの作品がどれだけ複製されたかを知る術もないし調べられても困るので、原著作者に正確に対価還元するのは難しい。そこで直接還元にこだわらず、集めたお金をファンドにして、新人クリエイターの助成に使うというのはどうか、と提案した。

・最終的な提案

最後に主婦連の河村委員からの補足として、

「これは地上波のテレビ放送の複製制御技術の見直しが行われた場合には、新しい対価還元も可能ではないかという主張であり、ダビングの回数を増やしてほしいというものではまったくない。ダビングを制限する制御技術があるために、便利なサービスが阻害されているという思いがある。」

と説明があった。

■主旨が近いJEITAの発表

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