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ロボット革命の中のドローン

小寺・西田の金曜ランチビュッフェ 44号(2015年7月27日発行)より

先週の土曜日、武蔵大学江古田キャンパスにて行なわれたICPC(情報通信政策研究会議)にて、「業法規制と製造物責任法からドローン、ITSを考える:日本のとるべき政策は何か」というパネルディスカッションに登壇してきた。

司会およびコメンテーターは、「ロボット法学会」を立ち上げている慶応大大学院博士課程の赤坂亮太氏、SFC研究所上席研究員の工藤郁子氏の両名が務め、経産省産業機械課長の佐脇紀代志氏、弁護士の小林正啓氏、コデラの3名がパネリストであった。

佐脇氏は今回のドローンの法規制をはじめ、ロボットに関連する法的整備の最前線にいらっしゃるということで、国がどういう方向で法をまとめようとしているのかがよくわかった。今回はここでの議論を踏まえ、ドローンを射程に含めながら、日本のロボット戦略とはどういうものかをご紹介したい。

2014年夏、安倍総理のイニシアチブにより、「ロボット革命実現会議」が設置された。第1回の9月11日には、安倍総理の前でドローンの実演も行なわれたほか、サービス分野、インフラ・災害対策分野、モノづくり、環境整備(法制度)などの議論を経て、今年1月23日に取りまとめが行なわれている。

この取りまとめの中で、「ロボット新戦略」が決定し、日本再興戦略2015の中に盛り込まれた。

・ロボット新戦略http://www.meti.go.jp/press/2014/01/20150123004/20150123004b.pdf

・日本再興戦略2015
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai22/siryou1-1.pdf

日本再興戦略2015には大したことは書いてないが、「ロボット新戦略」のほうは、技術者にとっては必読であろう。ここで上げるロボットの定義は、これまでのイメージよりもやや広く取られている。

これまでロボットとは、センサー、知能・制御系、駆動系の3要素備えた機械と捉えてきた。ドローンもすでにこの中に入っている。だが固有の駆動系を持たなくても、モノや人にアクセスして駆動させるタイプも生まれてきている。たとえば自動ブレーキアシストや、車線をはみ出すと警告を鳴らしてドライバーに知らせるような装置も、ロボットという射程に入ってくる。

またIoTの進化により、ウエアラブルなデバイスが人をアシストするようなこと、例えば足腰に装着して重いものを持ち上げるときにサポートしてくれる人工筋肉的な機器といったものも、広義にはロボットと言える。操縦桿のないロボット、古くは勇者ライディーンに始まるこの系列は、今の視点で見ればウエアラブルロボットである。

実はロボット産業は、日本が世界最先端を走っているという。私たちには全然そんな気はしないが、産業用ロボットの年間出荷額および国内稼働台数では、共に世界一だそうである。その一方、社会的には少子高齢化問題を抱え、さらには交通や通信、電力といったインフラの老朽化が問題となっており、ロボットによる解決が期待される課題先進国でもある。

この点、米国はすでにデジタル化・ネットワーク化による新たな産業を成長の鍵として発展を続けているが、日本は技術を持ちながらそこには乗り遅れた。これからはロボット技術をキーに、産業だけでなく、日常生活に至るまで、様々な場面でロボットを活用していく社会を実現していくというのが、日本のロボット新戦略の骨子である。

そのために、今後5年間を「ロボット革命集中実行期間」と位置づけ、官民で総額1000億円をロボット関連プロジェクトへ投資、市場規模を年間2.4兆円に拡大することを狙っている。ちなみに現状の市場規模は6000億円。市場規模を4倍に拡大すると狙う割には、投資金額が少なすぎだろうとは思う。

一方ドローンの出番としては、福島に新たなロボット実証フィールドを設置するという案も出ている。空中監視や物流、災害ロボット等の実証区域を創設するという。福島復興も抱き合わせるということなのだろうが、ドローンの研究者は今後、福島に集結することになるかもしれない。

■ロボットに関連する法整備

ロボットを一般社会に取り入れるとなると、実に多くの法律が絡んでくる。論点はいったん置いておいて、関連法だけ列挙すると、以下のようになる。

・電波法
・医薬品医療機器等法
・労働安全衛生法
・道路交通法/道路運送車両法
・航空法
・不正アクセス禁止法
・維持・保守関係法令(インフラ点検等)
・生活支援ロボットの国際安全規格ISO13482/工業標準化法(JIS)

一方消費者保護の観点から必要となる法律は、以下のようになる。

・電気用品安全法
・家庭用品品質表示法
・消費者安全法/消費生活用製品安全法

実に膨大な量の法改正が必要になる。またドローンが空中を飛行する際に、他人の敷地の上空を飛行することになれば、民法の規定にも手を入れなければならない。民法の概念的には、所有者は所有する土地の地下から上空に至るまで所有権を持っているからである。

その一方で、これまで伝書鳩が他人の家の敷地を飛んだとしても問題になることはなかった。伝書鳩とドローンは民法の解釈上何が違うのか、という小林弁護士の指摘は、興味深い。

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