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メンテナンスのすゝめ:CPUサーマルグリスの再塗布 - えくすとりーむぐりすシリーズ -

全世界1331億人のCPUユーザの皆様こんにちは。1700億人? 1718億人? やかましいわこちとらAM4現役なんじゃ! 香月です。

気がつけば2024年、こんな時期にも関わらず、札幌は最高でプラス気温。なんか色々とヤバい感がひしひしと伝わってきます。とは言っても寒いもんは寒い。アホほど暑かった夏が過ぎたと思えば、北海道では部屋の中までキンキンに冷え始めました。こうなると元気になるのがPCはじめコンピュータ系全般なのですが、そんなPCの健康診断は済ませているでしょうか? たぶん次の夏もひでぇ事になるだろうと予想出来てしまうだけに、大掃除や新年のちょっとした休みの間に、PCも労ってあげましょう。

という事で、今回はCPUグリスのお話。昨年はグラフィックボードこそ入れ替えたものの、CPU周りはノータッチだった事もあって、グリス再塗布をしていなかったのです。タイミングよく販売開始になった新製品「えくすとり~むぐりす」2製品を、販売代理店の株式会社タイムリーさんより提供頂く機会に恵まれたので、せっかくならということでちょっとだけ比較をしながらご紹介です。


ついにサーマルグリスまで萌えパッケージ

製品名も「えくすとり~むぐりす」と、何やら気の抜けた感じ

2023年10月末から順次販売開始になった「えくすとり~むぐりす」シリーズ、そもそもが「常温OC向け」と謳われた製品で、パッケージの可愛さや気の抜けた製品名との落差たるや。途中で限定モデルとして「あっぷるえでぃしょん」という、「成分と特性少し変えました! あと自然由来のあっぷるの香りも追加しました!」という、「お前何いってんの」という製品を経て、「ほぼ劣化しない」と謳われた「あるてぃめいと」が追加になり、以前からメジャーだった複数のOC環境向けグリスの対抗馬として、ショップ各所でもかなり売れているようです。

今回の「えくすとり~むぐりす(青パッケージ)」と「同あるてぃめいと」に関しては、青パッケージはグリス自体が柔らかめで塗布しやすい感じ、あるてぃめいとは少し硬めなので塗布の際には力加減に注意が必要、といった感じでした。慣れてしまえば大したことではないのですが、今回初めてグリスの塗り直しを行う方はこのような点で選択するのも良いかもしれません。

製品企画を行った ”CLOCK WORK TEA PARTY" によれば、「世界的人気グリスの製造メーカーと共同で企画」との事。具体的なメーカー等は公表されていないようではあるものの、数値としてはこれまで販売されていた他メーカー製の「OC環境向けグリス」と同等の12.8W/mK(えくすとり~むぐりす・同あっぷるえでぃしょん)、もしくはそれを大幅に超えてくる20W/mK「以上」(同あるてぃめいと)というカタログ値の製品。単純に数字だけ見てもピンと来ない方も多いだろうとは思うのですが、ショップや量販店などで販売されている製品として「シルバーグリス」「ダイヤモンドグリス」といった一般的な製品が8W/mK~9W/mK付近、10W/mKを超えてくると高性能グリス、といった雰囲気で見てもらえれば、おおよそ間違いない感じです。

メンテナンスはいつぶり? 気になっていてもなかなか手の出ない「クーラー脱着」

きっかけがないと外すの忘れがちなCPUクーラー

さて、いざグリスの比較とはいっても、まずは塗り直さない事には始まりません。計測の参考データとして現状をチェックしてから、クーラー脱着とグリス再塗布を行います。

CPUクーラーの固定方法によって若干難易度が変わりそうな部分ではありますが、いずれにしてもまずは「グリスに熱を入れる」事から始めるのがコツ。この点に関しては今回紹介するグリスでも同様ですが、「一晩電源を落とした状態でそのまま」となるとグリスが固くなっている場合が多く、無理に脱着を行うとクーラーにCPUが張り付いて一緒に抜けてくる、いわゆる「スッポン/バリメキ」という絶望的な事態に陥る可能性が高くなってしまいます。

最近はあまり聞かなくなった感のあるこれらの絶望ですが、いずれも「CPUクーラーを外そうと持ち上げたら、CPUがクーラーに張り付いて強引に抜けてくる」という状況のもの。「スッポン」は主にAMDのAM4以前(PGAタイプ)、「バリメキ」は主にIntel系やAMDのAM5以降(LGAタイプ)で発生する、あるいは発生したもので、呼び名そのままに「CPUがソケットからスッポンして抜けてしまう」「CPU固定フレームごと引っ張り上げてM/Bの基盤ごと大穴を開けてしまう」というもの。

基本的にはいずれの場合もCPU側、M/B側、あるいは両方にダメージが入り、全く使用不可能になるほか、仮に「スッポン」で見た目上綺麗に抜けたように見えても内部的にダメージが残って動作不安定、あるいはやっぱり動かない、という絶望的な状態に陥る為、CPUクーラー取り外しは意外と難易度が高いメンテナンスの一つ、と言えなくもないかもしれません。

無事にCPUクーラーが外れたところ

このような状況への事前対処として、ベンチマークテスト等でCPUに負荷を与えて発熱させ、グリスごと温める事でかなりの確率で正常な脱着が行えるようになる事と、クーラー自体の取り付け方法次第でそれなりに危険性は下がってきたように思います。私の環境では、写真の通り「バックプレートにネジを立てて、4点のネジでクーラー(水冷ヘッド)を固定」というタイプで、この場合は対角順に緩めてやる事で、「CPU全面を一気に引き上げる」という状態を可能な限り避けて取り外すことができるようになります。

グリスの塗布方法、塗布する量は「可能な限り薄い膜になるように」

CPU表面を拭き上げて古いグリスを除去

グリスの塗布する方法といえば、一時期までは「CPU表面に米粒大のグリスを載せて、そのままクーラーを装着して圧力で押し広げる」という方法がメジャーだったものの、最近は「専用のヘラやカードなどでCPU表面を覆うように塗布する」という方法が勧められている様子も多くなりました。方法としてはどちらでも構わないのですが、基本的には「グリスを塗りすぎない、最小限の量で全面を覆う」というのがお約束になります。

これでもちょっと多いくらい

グリスはCPU表面からクーラーへ熱を伝えやすくする為に使用するものですが、あまり大量に塗ってしまうと、いかに熱伝導グリスといえども、そのグリス部分で熱がこもってしまい、冷却が不十分になってしまう状態になります。一時期のIntel製品で言われた「グリスバーガー」状態など、「クーラーはしっかり良いものを使っているのに、グリスのせいで高温状態が続いてしまう」という状況を避ける為にも、グリスは最低限の量のみ塗布するようにしましょう。

再掲・CPU側のグリス状態
こちらも再掲・クーラー側のグリス状態

この写真のような「はみ出し量が最小限」かつ「CPUのヒートスプレッダがカバーされている」状態が理想的。CPUクーラーを適切に取り付ければ、その圧力でグリスが挟まれる事になるので、結果としては最適な厚みが保たれる事にはなるのですが、あまりたっぷり塗ってはみ出し分が多くなってしまうと、ソケット周りを汚してしまう事にもなるので注意しましょう。何度か組付けを行っているうちに感覚的にわかるようになる部分ではありますが、場合によっては「一度クーラーを取り付け、取り外しを行って様子を見てから本締めで再度取り付け」を行う事で、少なくとも「少なすぎてカバー出来ていない」状態は回避できます。

グリスの性能でパフォーマンスはどう変わる?

再掲。塗り直しではこの2製品もチェック

さて、実際にグリスの再塗布も含め、どの程度違いが出るかを、簡単にではありますが比較してみました。それぞれ以下の通りの環境でチェック。

  • CPU:RyZen9 5900X・手動OC設定無し、PBO2設定済み

  • M/B:MSI MEG B550 Unify

  • クーラー:DeepCool GAMMAXX L360 V2 簡易水冷360mm

  • 室温は18℃前後

また、グリスに関しては以下の順番で塗布、テストを行っています。

  • これまで使用していたグリスでそのままテスト(12W/mK程度のOC向け)

  • グリス除去、再塗布後、10分間ベンチマークを行って「熱入れ」を実行

  • アイドリング10分でCPU温度を安定させてからベンチマーク、ストレステスト、アフターアイドルも10分

最初にこれまでの使用環境でそのままテストを行ってから、上の内容で「えくすとり~むぐりす(12.8W/mk、以下「青パッケージ」)」「えくすとり~むぐりすあるてぃめいと(20.0W/mk、以下「あるてぃめいと」)」の順番に塗り直しを行っています。

  • Cinebench2024マルチコア10分:

    • 塗り直し前:1152pt・フルコア安定4400MHz・CPU温度76℃

    • 青パッケージ:1160pt・フルコア安定4400MHz・CPU温度75℃

    • あるてぃめいと:1161pt・フルコア安定4450MHz・CPU温度74℃

  • OCCTスタビリティテスト

    • 塗り直し前:フルコア安定4100MHz・CPU温度87℃

    • 青パッケージ:フルコア安定4150MHz・CPU温度86℃

    • あるてぃめいと:フルコア安定4250MHz・CPU温度84℃

2つのテストでそれぞれの数値はこんな感じ。クロック、温度ともにスパイクはなく、負荷がかかり始めてから解放されるまでフラットな推移でした。Cinebench2024に関しては多少上がったものの、スコアとしては極端な差異はありません。温度(CPUパッケージ)に関しても順当に下がってはいますが、元々そこまで温度が上がりきらない状態だった事もあり、全体として「若干良い」程度の違いでした。
一方でOCCTによるスタビリティテスト(ストレステスト)については、CPUだけでなくVGAも含め、システム全体にかけられるだけの電力を流して高負荷状態にしたもので、CPUだけでなくケース内の温度もそれなりに上昇する環境でした。CPUの消費電力は205Wほどで安定し、クロックの伸び方はテスト項目の関係かCinebenchよりも低めに出ていますが、温度は10℃以上上昇。塗り直し前でも90℃(PBO2の温度リミット)までは上がらなかったものの、リミット内ギリギリに近いラインまで上昇しています。塗り直しに関してもCinebench同様、順当に温度が下がってきている状態で、このテストに関しては塗り直し前と「あるてぃめいと」でそれなりに優位な温度差が見られています。

20W/mk「以上」を謳う「あるてぃめいと」、たしかに冷却補助効果は高い様子

今回はあくまでもグリスのみの違いでテストを行った為、クーラーのファン回転数なども含め、「PBO2での自動OC以外はデフォルトでの動作」という環境で揃えましたが、グリスの塗り直しだけでも僅かながら数値が良くなっているのは意外でした。当初の予想としては「スパイクがぼちぼち出ているものが安定するくらいで、温度やクロックはそこまで変動しない」と考えていただけに、2製品、特に「あるてぃめいと」の安定感は充分に塗り直しの価値があるものと判断できそうです。また、これ以上の大きな変化を期待するのであれば、グリス以外にもクーラーを強化するか、CPU温度上昇を覚悟でCPUの消費電力や温度リミットを引き上げる等、システム全体としての変更が必要になってきそうです。

……という事で、「あるてぃめいと」の上記テストを終えた後、少しBIOS設定をイジってもう一度テストを行ってみました。設定条件は先のテストを鑑みて、「CPUパッケージの電力上限を300W、温度リミットを100℃」にそれぞれ引き上げて、同じようにCinebench2024、OCCTで計測したのが以下の値です。

  • Cinebench2024:

    • 1167pt・フルコア安定4625MHz・消費電力180W・CPU温度最大76℃、安定75℃

  • OCCTスタビリティテスト:

    • フルコア安定4500MHz・消費電力220W・CPU温度最大90℃、安定89℃

いずれもクロック、消費電力ともなかなかの上昇具合で、Cinebenchスコアも若干の上昇が見られます。これらの点はリミットを書き換えた結果、PBO2の自動OCが強く動いたという内容になりそうですが、瞬発的ながらいずれのテストでも4900MHzを超えるタイミングもあり、システム的にもう少しだけ余裕がある、といった雰囲気もあります。

PBO2の自動OCに関しては、大雑把には「冷却能力に余裕がある時にクロックを上乗せする」という動きが基本となるのですが、電力と一緒に温度リミットも引き上げた為、とりあえず「90℃前後になってもサーマルスロットリングすら発生しない」といった状態になっているようです。

また、特に「あるてぃめいと」に関してはクーラーをワンサイズ落としても運用できそうな様子もあります。少し小さめのPCを組みたかったり、ラジエター等の設置が難しいデザイン系のケースを使うなど、360mm級の簡易水冷クーラーが組み込めない場合、OCをしない、もしくは適切な値に設定する事を前提とすれば、一回り小さな240mm水冷や、場合によってはハイエンド系の空冷クーラーでも運用ができる可能性は充分にあると思われます。特にAMD系のCPUに関しては、公式が水冷クーラーを推奨しているということもあり、小型PCが組みづらいというネガティブがありますが、グリスに関して「ちょっと良いの」を選択する事で、わずかではありますが熱処理に関する余裕が生まれるという事が測定データ上では見られるので、「OC向けグリスなんてオーバースペックじゃい」と言わず、より余裕のある製品を選ぶ、というのはアリじゃないかなと思います。かくいう私も手動OCをしない環境でOC対応グリスを選択したりしていたもので。

ちなみに「青パッケージ」の製品に関しては、4年経過で性能が8.8W/mkに落ち込むという内容がパッケージにも記載されています。また、「あるてぃめいと」はメーカーコメントとして「劣化がほぼ起こらない」との事で、20W/mkの性能を4年経過後も維持できる、という謳い文句ですが、皆さんの環境や「どのくらいPCパーツをバラしたり組み替えたりするか」で選択するのも一つの方法。とはいえ「あるてぃめいと」の様々な内容を鑑みると、積極的に「青パッケージ」を選ぶよりは「あるてぃめいと」に激突してしまうのが幸せになれるのかもしれません。複数台を組み上げるなど、大量にグリスを使用する場合には価格の低い「青パッケージ」も良いかと思いますが、私としては今後買い足すに当たっては「あるてぃめいと」で決め打ちになりそうです。

2024/02/10追記:「れっど」「ぶる~」モデルについて

「あるてぃめいと」ラインに追加された2製品

2024年に入って、「あるてぃめいと」のシリーズとして「れっど」「ぶる~」の2製品が追加で販売開始になりました。本製品も代理店の株式会社タイムリーさんより提供頂いたので、本記事で追記として紹介します。

グリス指標として「クイックリスト」が追加

製品ページより拝借

今回の2製品から、具体的な数値(W/mk単位等)での展開ではなく、「製品シリーズとしてどの位置に属するか」といった形で性能比較・製品情報提示が行われるようになりました。それに基づいた形で紹介することとなりますが、「れっど」は「あるてぃめいと(黒パッケージ、以下本項では「無印」と記載)」よりも熱伝導率が高く、また同時にグリス自体が硬めという位置づけ、「ぶる~」は「えくすとりーむぐりす」と「無印」の間に入る製品となっています。また、「ぶる~」に関しては、ヒートスプレッダではなくダイに直接塗布(CPUの「殻割り」状態、もしくはGPU等)する点にフォーカスした製品という事で、VGAのヒートシンク交換やメンテナンス、あるいはCPUの殻割り使用に適した製品となっているようです。製品にもよりますが、M.2 SSDのコントローラチップに塗布するのも、案外良い使い方かもしれません。

「れっど」で検証:「高め安定」でクロックも上昇

「れっど」にもカード入りの初回限定パッケージが存在

さて、今回はより高性能な製品として、「れっど」で追加検証を行いました。同時期に冷却周りを調整・変更したのですが、環境の関係で全体的な冷却具合はさほど変化が見られなかった為、事前に「ほぼ同環境」と確認をした上で、無印で行った「CPUパッケージの電力上限を300W、温度リミットを100℃」設定、Cinebench2024、OCCTで計測したのが以下の値です。

  • Cinebench2024:

    • 1185pt・フルコア安定4700MHz・消費電力最大190W、平均185W・CPU温度最大81℃、安定76℃

  • OCCTスタビリティテスト:

    • フルコア最大4900MHz、安定4650MHz・消費電力225W・CPU温度安定90℃

無印と比較すると温度が多少なり上昇していますが、これは消費電力やクロック上昇を考えると妥当ではあります。高いなりに安定した傾向を見せている為、無印よりもより「常用OC向け」としての能力をしっかり発揮してくれています。Cinebenchスコアも無印と比較して18pt、当初使用していたグリスと比較すると33ptと大きく上昇しており、製品指標通り、期待に応えてくれる結果となりました。

グリスそのものは「すごく硬い」、慣れてないと塗布が一大事

せっかくなのでカードを使って塗布してみようと思ったら……

一方で扱いにくい点として、とにかくグリス自体が硬い、という点が挙げられます。クイックリストの中でもダントツに「硬め」指標の「れっど」ですが、実際に使ってみるとその恐ろしさが良くわかります。なにせ室温17℃付近では、CPUのヒートスプレッダに塗りつけることすらままなりません。

なんとかCPUにグリスを落とした所。結局カード塗りは断念

今回はマスキングテープとカードを使って「薄く全面に塗り拡げてからクーラー装着」を試そうと思ったのですが、そもそもヒートスプレッダにグリスを落とすためにヒートガンを使ってシリンジごとグリスを温める必要があり、ようやく落としたグリスもカードごときでは広がらない、というガチガチ具合。塗り方にこだわってやり直しなんてしてたらグリスを切らしてしまう所だったので、前回の塗布と同じように「ヒートスプレッダにいくつかグリスを載せて、クーラー装着圧力で広げる」方法に変更。なんとか塗布する事は出来たものの、これはとても万人受け出来るようなグリスでは無い、と実感しました。熱特性の点で「常用OC向け」という位置づけの本製品、少なくとも自作PC初心者の方にはかなりキツい製品かなと思います。うまく伸びない、塗れないという状態から、気づいたらシリンジがカラになるという非常事態を起こしかねないので、この点が心配な方は無印(「あるてぃめいと」黒モデル)、もしくは「性能よりも確実な塗布」と考えて、クイックリストの左側に位置する2製品を選択するのが良さそうです。この点に関してはどう頑張っても擁護が出来ないレベルで塗布の難易度が高い「れっど」でした。

クイックリスト再掲。自信が無い方は左側の2製品からピックすると良さそう

劣化したグリスは定期的に塗り直しを。「ちょっといいグリス」を選ぶと色々と捗る

「OC対応」とはいえ、「ちょっと良いグリス」である今回の製品。「ちょっと」で済むか……?

さて、そんなわけで今回は「メンテナンスのすゝめ」と題して、CPUグリスの再塗布を行うというメンテナンスのお話でした。

長い期間、グリスの塗り直しを行わないで使用していると、どうしてもグリス劣化に伴って冷却効率が低下してしまいます。PBO2のような自動OCに関しては「冷却効率が悪くなる」→「CPU温度が下がりづらい」→「クロックを上乗せできない」といった状態で、CPUの性能を活かしきれないという結果にもなってしまうため、半年とは言いませんが1年に1回くらいはグリスの塗り直しを検討してみるのも良いかもしれません。

また、今回併せて紹介した「えくすとり~むぐりす」2製品に関しては、12.8W/mkの「青パッケージ」が890円ほど、「あるてぃめいと」が1780円ほどとなっており、PC1台どーんと組むことを考えると微々たる差額、と言えなくもない所。強烈に高いという価格帯でもないので、できれば上位モデルを選んでおくのが良さそうです。「あるてぃめいと」に関しては長期利用での劣化もほぼない、という製品なだけに、冷却補助性能、長期利用時の安定性といった点からも「あるてぃめいと」がオススメ、と言えそうです。

かえすがえすも、グリス「だけ」を変えたとしても、極端な性能変化は見られづらい所なので、冷却が追いついていないようであればクーラーと組み合わせて検討する事が重要である一方、「現時点で冷却が充分」という環境においては、同じクロックや消費電力であればファン回転数の調整やクーラーの小型化も見込める点ではあるので、自作erの「どんな構成にしようかなぁ」というワクワクする悩みの幅も広がりそう、といった印象。

せっかく新製品が出たという事もあるので、この機会にメンテナンスも含め、ちょっと試してみると良いかもしれません。少なくとも私の環境では、多少なり安定感が増した感はあり、なかなか良い結果になりました。