見出し画像

「雪幻想」 ー ピアノ曲を作る

弾けない人がピアノ曲を作ってみる話。

ピアノへの憧れ

ずっとピアノの美しい音に憧れていた。

珠の様にきらきらした音色。
オーケストラに匹敵する広い音域。
ピアノフォルテというもとの名前に相応しいダイナミクス。

友達が習っているのが羨ましかった。(また、そいつはショパンを実に美しく弾いていたのだ。)

そして中学の時に、この曲に出会った。
英国プログレの秘宝、ルネッサンスの「Can You Understand」。
冒頭からきらきらと輝きながら流れてくるピアノのせせらぎ。
ロックからピアノに出会ったのは暁光。

そして、ラヴェルの「水の戯れ」など美しい曲をたくさん聴いているうちに募ってくる思い。

美しいピアノが弾きたい!

ギターでピアノを弾いた気分になる

ピアノが弾きたくなった時、もう習うには遅すぎる年齢になっていた。

そもそも楽譜が読めない。(五線の上の音符を下からド、レ、ミと数えるくらいしかできない)
そして修行が苦手な自分が地道にバイエルから始められるとは思えない。

ということでギターをピアノに見立てて練習した。ピアノの様に美しいアルペジオがギターで弾ける様に。

井上陽水の「帰れない二人」はとても美しいアルペジオでできている。
さだまさしの「風の篝火」のイントロもとても美しい。
そんな曲をやまほど練習した。

iPhoneのガレージバンドで多重録音ができる様になったので、ギターのアルペジオを重ねて何曲も作った。
自分ではそれなりに美しくできたとは思ったが、やっぱりギターはピアノのリリカルな響きにはかなわず、いつまでも憧れの先にあった。

DTMでピアノを作ってみる

ピアノへの憧憬やみがたし。
でも弾けない。
でも作りたい。

そうだ、もしかしたらDTMなら、ピアノ曲を作れるかもしれない。
DAWにはたくさんの機能がある。
それを駆使したらシンフォニーだって作れるのだから、ピアノ曲の作れるかもしれない。

そうやっていくつか小細工を編み出した。
きっとピアノを本当に弾ける人から見ると邪道なんだろう。
でも、少しでも近づきたいと思った。

少しずつ弾く

両手では弾けないけど、片手で一瞬なら「ポロリン」くらいは弾ける。
指は5本だから一度にせいぜい4音が限界だけど、それで十分。
DAWで4音ずつ録音する。8分音符なら1小節の半分くらいだ。

右手をキーボードの鳴らしたいキーに添えて、左手で録音モードをクリック。
メトロノームに合わせて、情感だけはたっぷりに弾く。4音だけ。

4音録音できたら、次の4音を続けて録音する。
うまくいかないことも多いから4音を何度も練習しては入れていく。
こうして曲を少しずつ伸ばしていく。

自分の場合は、ピアノロールにマウスで書くより直接キーボードを弾いた方が入力しやすい。そして感情をこめやすい。(どうも音の抜き方が大事な様だ。)

クオンタイズ

DAWにはテンポのズレを正確なリズムに自動補正する「クオンタイズ」という機能がある。

なんせ素人のピアノだ。テンポがズレたら聴くに耐えない。
昔は「ジャストのリズムは機械的で気持ち悪い」と言われていた時代もあったが、下手なリズムは味ではなく唯の下手くそだ。
ブレたリズムよりジャストな機械的リズムの方が数倍いい。

ということで遠慮なくクオンタイズを使って、リズムのブレを補正する。

途中で少しテンポを変えたくなったら、DAWのBPMを変える。

トランスポーズ

黒鍵が苦手だ。
ということでハ長調しか作れないのはちょっと残念なので、MIDIキーボードのトランスポーズ機能を使う。

これを使うと簡単に移調ができるので、たとえシャープやフラットがいくつあってもほとんど白鍵ですむ。

ズルい方法だけど、美しいピアノ曲を作れるのなら手段は選ばない。

多重録音

右手のメロディを録音できたら、それを聴きながら左手パートを4音ずつ「右手で」弾いて重ねていく。
思わぬハーモニーが生まれるのも楽しい。

時には、左手パートでコードを弾いてみる。
コードと言っても適当に指を開いて、気持ちよく響く押さえ方を探して、右手のメロディに合わせていく。

いろいろ調整

下手くそなので、強弱はよくとちる。
音を間違える。
自動では直せないほどリズムがずれる。

全部DAWの編集機能で直す。

同じフレーズを作る自信がない時は、コピーしたりループさせたり、使えるDAW機能はなんでも使う。

ペダル

サスティン・ペダルを使うことで、美しさが増す。
たぶん本当にピアノを弾いている人から見ると邪道かもしれないけど、コードが混ざって汚なくなる手前で一瞬外す。
ペダルのデータもコピーして使い回す。

人間の限界を超える

本来、ピアノは2本の手で弾くものだ。
2本の手で弾いた様に作った曲の方が自然に聞こえる。

でも自分が作っているのは趣味の曲だ。
好きに作っても誰もおこらない。

ときには3本以上手が必要な曲になることもあるけど、気にしない。

こうしてかれこれ5年…。
それなりに、なんとか雰囲気のあるピアノ曲が作れる様になってきた。
まだルネッサンスの曲はつくれないけど。

「雪幻想」

深夜の2時間DTM、お題は「吹雪をイメージした曲」。

綺麗なお題だから、シンセの音色だけで吹雪の雰囲気を出したくはなかった。
今まで培ってきた小細工を総動員して、美しいピアノ曲を作ってみよう。
今回は、手が4本くらいないと弾けない曲でもいいや😅

そうして作ったのがこちら。

こんな風に作ってみた

まず同じ音で、トーントーントト、というリズムのフレーズを弾く。

これをループして、そこに上のメロディを乗せていく。
思いのままに別のメロディも重ねてハモらせてみる。
リズムをずらして輪唱みたいにすると複雑に聴こえる。

低音を弾くとグッと雰囲気が出てくる。
ところどころに、ポロリロリン、という装飾をつける。
変な下降コードをつけてみる。
わざとクオンタイズを外してみる。

やりたい放題である。

嫁の感想〜

見習い魔法使いが吹雪を出そうと頑張ったけど雪が降ったねえ…w

長文お読みいただき、どうもありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?