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「凛」 ー リスナーの耳

曲作りに身内がリスナーとして協力してくれるのはとてもありがたい、というお話。

曲のイメージ作り

今回の深夜の2時間DTMのお題は、「侍をイメージした曲」。
これは以前にも作ったような気がする。

そのときはバリバリに和楽器と和旋律をつかって、まるで必殺仕事人のような時代劇サスペンス主題曲みたいなのを作った。 同じことを繰り返す気はないので、さてどうしたものか…。

嫁に聞いたら「女剣士が男装した侍はどう?」と言う。
なるほど、その手があったか(ぽん)。

たとえば毛利蘭(コナン)やヨルさん(スパイ・ファミリー)みたいにむっちゃ強い女の子が、女性であることを隠して侍として生きる。きっとむちゃくちゃイケメンになるだろうな。
戦い方も、大きな剣をぶん回す力まかせじゃなくて、とてもスマートで巧みなものになるだろう。カッコいい。

いいなあ、そのイメージいただきました。
せっかくだから、和楽器も和旋律も使わないで作ることに挑戦してみよう。

曲構成を構想

風呂に入りながら、曲のイメージをふくらませる。
スパッとした切れ味なら、チック・コリアのピアノの音のイメージかな。
そして真っ直ぐで美しいメロディをつけよう。

最初は少し緊迫感はあるけど抑えた曲調で。
とちゅうに柔らかくて切ないピアノソロをはさむ。
最初のメロディに戻ってくる、サンドイッチ三層構造。

曲想はまとまった。

曲作り

冒頭に短いピアノのリフをつける。
フルート系でリードメロディを入力。結構凝ったアーティキュレーションを設定して表情を出した。

そこにピアノでコードをつける。
せっかくだからソリッドでタイトな雰囲気にしようと思ってコード作りしていたが、けっこう難航。でもひさしぶりに割と気に入ったコード進行になった。

途中のピアノソロは雰囲気重視なので、思いついた右手フレーズをどんどん入れて、そこに左手アルペジオやコードを挟む。

ここで面白いハプニング。
ピアノソロのところでコードを間違えて入れた(弾き間違えた)のだが、これが案外いい感じ。すごく意外性があって自分でもびっくり。
そのまま使うことにした。

そしてリプライズ。メインメロディのパートを繰り返して、それに少し音を足す。

いったん完成

2時間でいったん完成してSNSに公開。

それがこちら。

リスナーの耳

嫁に聞いてもらった。
「これ、日本の『侍』じゃなくて、西洋の『騎士』だね。イメージが合わないのでもったいない。」

嫁はDTMerじゃないので、逆にリスナーとしての直感はいつも正しい。
作る側は一生懸命作るほど「作り手の耳」になる。「リスナーの耳」にはなかなか切り替わらない。
一晩おいてリスナーの耳で聴くと、色々とあらが見えてくる。

和楽器を使わないことに拘りすぎていた。
シンセパッドを多用したせいで、洋風がイメージされてしまう。
普通のロックドラムを使ってロックベースも入れたバンドサウンドになったので、これも侍のイメージに合わない。
アレンジ的にはメロディ2巡目と1巡目が同じなので、発展性がない。

ということで、再アレンジしてみた。

和楽器の音色を入れてみる

和楽器の音色って、外国のDTMツールには少ない。

縁打ちの音も入っている和太鼓の音が見つかったので、これをドラムと差し替える。 もちろんドラムと同じ叩き方ではおかしいので、和太鼓らしいフレーズにする。

サンプリングされた琴の音色には、ハープの音色も混ぜると少ししっとりしたいい感じの音色になる。この琴の音で、中間のピアノソロの右手を一部差し替える。これがけっこう良かった。

琴といえばトレモロ。自分で弾くのは無謀。
これもシンセでいい感じのものがあったので、パッドと差し替える。
これで洋風SFチックな雰囲気が、紅葉が舞い散る和の雰囲気になる。

フルートのメインメロディに尺八をユニゾンで、くどすぎないように慎重に混ぜていく。
尺八の音はとにかくとても暴れる。鍵盤を叩く強さで音がむちゃくちゃ変わるので、注意深く入力。

ベース音に悩む。ガッツリしたエレキベースも、ジャズ風のアコースティックベースもまるで似合わない。結局(なんと)シンセベース音を使って落ち着いた。

三味線は女性剣士っぽくないので、今回は使わない。

曲構成を変える

全体のバランスが変わるので、他のアレンジもいろいろ変更。

冒頭のリフを少し長くしたり、中盤のリフを逆にカットしたりして、「しつこい感」をなくす。

ハープのグリッサンドを思いっきり入れて盛り上げる。

ピアノソロの次に来る二巡目メロディは、少し太鼓を派手にして、中音の琴を増やす。

最後もゆっくり目のリフに戻して、余韻を残してコードで終わる。

地獄のミックス

死ぬほど苦労した。
和太鼓の音色は強いリバーブ(エコー)が入っているので、それを排除して馴染むように調整。
ベースと太鼓の音域がぶつかるので、調整。
尺八もキッツい音にならないように調整。
ピアノと琴のバランスをとるように調整。

最後のマスタリングもなかなか決まらない。
最終的には、自分の好きなプロの曲の設定を取り込んで、なんとかなった。

ミックス&リマスタリングで半日。(いや、短いほうだろうね)
いろいろ苦労したけど、間違いなく良くなっている。
「凛とした女性の侍」のイメージができた。

出来上がった曲がこちら。

リスナーの耳を持つリスナーは希少価値

どうしてもDTMer仲間の中だけでは、忌憚のない意見を受けるのは難しい。
なので、「リスナーの耳」を持つ身内の意見は本当に貴重。
ときには厳しく聞こえることもあるけど、それが間違いなく自分を成長させてくれる。

長文、お読みいただき、どうもありがとうございました。

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