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「琥珀糖」 ー 音楽自体が目的

敬愛するギターユニットのGONTITIさん。 優しくも生き生きとした音楽を作ってきた人たち。 そのGONTITIさんの、とあるツイートポストが目に止まった。

『音楽は道具ではなく、それ自体が目的なんです。」

この言葉を見てから、ずっと考え続けている。
このごろ、ときどき音楽を作るのが辛いことがある。 なんとなく息が詰まるような。 

たとえば、コードの構成を考えているとき。 どこかでオシャレなものを作りたい欲が出てくる。 試す。 そして及ばない。 巷に溢れているオシャレなサウンドが自分には作れない。

たとえば、ハーモニーを考えているとき。 どうせなら弦楽四重奏のように巧みなアレンジ構成にしたくなる。 試す。 できない。 どうしても単調になる。

かっこいいベースラインが作りたい。リズムを刻みたい。 でもできない。

オーケストレーションを華麗にしたい。 でも<以下略>

そんな壁にぶつかるように感じることが多くなった。

閉塞感

気がついたら400曲以上、曲を作ってきた。 でも未だに自分が上達したとは思えない。 いっつも同じような曲を作っている気がする。
もっと巧みな、もっと上手なクリエーターが世の中にはゴロゴロいる。 少しでも近づけないか? もっと上達できないか?

焦った。 ムキになった。

転調してみる。
曲の構成を工夫する。
ジャジーなリズムを入れる。
「正しい」コード展開を考える。
メロディの構成のあるべき姿を考える。

ところが、何かがおかしい。 どんどん辛くなってくる。 楽しくない。

そこにみたGINTITIさんの言葉。
『音楽は道具ではなく、それ自体が目的なんです。」

息が止まった。

音楽って何のためにしているの?

たとえば、努力して上達すると達成感を感じる。
仕事をしてうまく行くと褒められて、評価が上がる。
勉強をすると点数が上がって、成績が上がる。
モンスターを倒してレベルが上がるようなRPG的高揚感がある。

じゃあ、自分はなんのために生きているのか? 
上達するために生きているのか?
なにかに勝つために生きているのか?
それはきっと違う。

理屈じゃない。 ただ生きたいから生きている。
それと同じなのかもしれない。

初心・・・

自分の音楽作りは、音を重ねることから始まった。
ギターの多重録音をしていて、とても美しくて気持ちよかった。
笛の合奏をするときれいだった。
リズムを取ると楽しいし、綺麗な音を出せると楽しい。

いや、もっと単純だな。 
机を叩くと音が出る。
ギターを弾くと音が出る。
歌を歌うと音が出る。
手を叩くと音が出る。

音を出すのが楽しかった。

そこから始まったはずなのに、いつの間にか「上達」を追い求めるようになっていた。もともとは、ただ音楽をしたいから、音楽をしてきたんじゃないのか?

ゼロ・リセット

そんなわけで、いつもと違う気持ちで参加した、深夜の2時間DTM。
お題は「お菓子をイメージした可愛らしい曲」。

平日なのに、なぜか参加したくなった。
「音を出すだけで楽しい」という気持ちで曲を作りたい。

曲作り

お菓子をイメージするから、かわいい音色にしよう。
音色を重ねたら、もっと可愛くなる。

だめだ。
まだまだ邪念があるようで、複雑な構成を持つ曲を3回くらい作っては、全消しした。

まあ、音色が揃っただけで可愛い曲ができるわけない。
音をきちんと並べると閉塞感がある。
指に任せると手癖だけの魂のこもっていない曲になる。
テクニックを込めると、自分の曲じゃないような気がする。

お題をヒントにしつつ、自分が出したい音を。
もっともっと、自分にわがままに。
上手でないかもしれないし、巧みな構成もないけど、3曲も葬って、それでも「出したい音」を出す。

琥珀糖

そうしてできたのがこの曲。

タイトルはあとから付けた。
柔らかくも綺麗な音を、綺麗に響かせた。 
誰に評価されるためでもないし、GONTITIさんに認めてもらうためでもない。

今の自分が出したい音。
明日はこの音じゃないかもしれない。
なにかの上位にランクされる音でもないだろう。

でも、自分が確かに出したい音になった。
ここからが自分の音楽第二ラウンドだ。

ちょっとだけ参考情報

音色は、愛用のDAW Logic Pro Xの付属音源Alchemyからベル系を集めた。 ひとつだけUVIのSynsationシリーズのサウンド(いわゆる80年代サウンド)もまぜた。

動画のイメージは、ぱくたそ様からいただいた。

それを好きなように重ねて、少し虹色に、少し琥珀色にしてみた。
ベースや四声はわざと忘れた。 あああー、音を出すのが楽しい。

反省はしない。 もう優等生はやめよう。
これからは、自分の出したい音を出す。

長文お読みいただき、どうもありがとうございました。

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