小林よしのりさんの「ブラック・ボックス」裁判に関する認識について(その1)

私の立場

 このnoteを書くにあたり、小林よしのりさんに対する私の立ち位置について明らかにしておきます。連載開始から「ゴーマニズム宣言」の読者で現在に至り、ゴー宣道場にも数多く参加している思想的に近い立場であるといえます。その私がこのnoteを書くきっかけとなったのは、「ゴーマニズム宣言」第56章「伊藤詩織さんの裁判で見えた」が参考にしている週刊新潮の記事と実際の本人尋問の内容があまりにもかけはなれたものであることに危惧を抱いたからです。

週刊新潮の「ブラックボックス」裁判の本人尋問の記事に対する私の評価

 私は伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之さんに損害賠償等を求めて民事訴訟を提起し、山口敬之さんが伊藤詩織さんに反訴した「ブラック・ボックス」裁判の本人尋問を実際に傍聴してきました。週刊新潮の記事は、伊藤詩織さんを支援する傍聴人が「えー」と漏らした箇所を切り取っただけの記事で、本人尋問で何が争われたのかを理解しようとする読者を誤導するおそれがある記事であると考えています。「ブラック・ボックス」裁判の本人尋問について、私は自分が傍聴した内容からマスコミの記事を検証しましたが、週刊金曜日の記事が最も正確に報道していると思います。

デートレイプドラッグによる準強姦に関する双方の主張

 伊藤詩織さんは2軒目の寿司店のトイレで意識を失い、医療関係の友人の話などを総合した結果、その原因がデートレイプドラッグにあるのではないかと主張しています。しかしながら、山口敬之さんは意識を失ったと主張する時点以降の伊藤詩織さんの店内の言動がどのようなものであったのかを主張し双方の主張が完全に対立しています。山口敬之さん側は、伊藤詩織さんが過度の飲酒によって2軒目の寿司店のトイレからの記憶をなくしていると主張しようとしていました。山口敬之さんのその部分に関する準備書面における主張や書証については未確認ですが、本人尋問の内容は山口敬之さん側が店主や店員に丁寧な聴き取りをしていることがうかがえるものでした。

民事訴訟に関する小林よしのりさんの認識について

 「ゴーマニズム宣言」第56章では、被告訴訟代理人の質問について「セカンドレイプ状態」と表現していますが、これは民事訴訟という手段をとっている以上伊藤詩織さんが覚悟しておかなければならないものだと私は考えています。刑事事件ではなく民事事件で双方の主張が対立している以上、被告訴訟代理人が厳しい質問をすることは想定内の出来事です。ただ、そのような試練を経ても取り戻したい自らの尊厳のために民事訴訟を提起すべきであって、伊藤詩織さん自身もその覚悟を持って民事訴訟に臨んでいると私は考えています。「ゴーマニズム宣言」第56章のこの部分に対しては、それが民事訴訟だからというほかありません。