夜の街で知り合った外国人達Part1

「おまえは見捨てられたんだ」 職員の暴言、自殺者…… 入管施設の“異変”
「こんなところに日本人」系の番組で中南米が出ると、よく20世紀の日系移民が登場する。あれは経済破綻の日本から口減らし的に送り出され、現地でも悪環境で辛酸をなめた、まさに経済難民だが、すでに忘れられている   

ブコメにこのような記述があって、気になったので私が見聞きした外国人たちのお話を書いてみようと思う。

◆ビザの種類について聞いたら…
私がまだ、夜遊びを始めた最初の頃だった。当時、私はオーストラリアから帰国してすぐでオーストラリアに対してのホームシックにかかっていた。それで、外国人の集まるという飲み屋に通うようになった。外国人と言っても欧米人ばかりではない、アジア、南米の人達もたくさんいた。中東の人も若干いた。

 その中の中東ぽい顔の男性に話しかけられたので、私は興味本位で「ビザの種類は何?」と聞いた。「学生ビザ?就労ビザ?」と聞いたつもりだった。だけど、彼は不機嫌そうに「お前は、入管か?」と言い返してきた。「あ、こういった場でこういうことを聞いちゃいけないんだ。」とその時に気がついた。

 

◆給料を踏み倒されたアジア人
 偏見を持ってほしくないので国名は書かないが、あるアジア人男性が正規の就労ビザで働いていた。無駄遣いをせずに、コツコツ真面目に働いて、貯めたお金で母国に家を買ったと自慢していた。だが、ある時、彼の勤めている会社はつぶれてしまった。

 彼の会社はつぶれているはずなのに彼が国に帰ることはなかった。そして、関東に引っ越して、彼は現場作業員として働き始めたそうだ。

 そして、しばらくして、ふらっと、また彼が私の住む街に戻って来た。その街の近くに彼の姉が住んでいるからかもしれなかった。その街で仲良くなっていた私や共通の友達と皆で集まることになった。彼は真面目に働いた現場作業の給料を数ヶ月分もらえてないと、泣きそうになりながら訴えた。その場にいた遊び仲間は「そんなの、警察か弁護士に相談して、ちゃんと払ってもらえ!ちゃんと働いたのに給料をもらえないなんておかしい!」と怒っていた。

 だけど、私はなんとなくだけど、もしや今彼は不法滞在ではないのか?と思っていた。いや、知りたくもないし、聞いてもビザはあると言っただろうから、聞くことさえしなかった。彼は自分が不利だと分かっているし、(不法就労?のまま)もう少し日本で働いてお金を貯めたいから、問題を大きくしたくはないのだろうと勘ぐって、私は何も言えなかった。

 ただ、バカ話をして一緒に御飯を食べて、さよならした。その後、彼がどうしたかは知らない。

 

◆時間を止めて来ている人達
 上の記事のブコメにもあったが、私が夜遊びしていた頃は特に日系2世3世が多かった。といっても、おとなしい子達は奥地で工場労働などをしていて、そもそも街まで出てこない。夜遊びに来るのはやはり遊びたい人達であるのは間違いない。

 日系人には、永住の覚悟で日本に帰ってきた人達と、妻と子供をおいて出稼ぎに来ている人達の二種類の人達がいた。昔気質の真面目で愚直な日本人文化を引き継ぐ人達は当然夜遊びなどには出てこない。ただ、日系人と仲良くなって、日系人コミュニティまで出向くと、真面目な日系人にも会えた。公民館での催し物などにも呼んでもらって、ブラジルやペルーの料理もいただいた。本当に普通に暮らしている普通の人達だった。

 ただ、夜遊びに来るような人の中には、少し危なげな人もいた。彼の名を仮にカルロスとしよう。彼は他の日系人達と明らかに見た目が違った。他の日系人たちは東洋人ぽい顔なのに彼だけは東洋人の顔ではないのだ。

 そして、「カルロスは日系人じゃないよ。彼は日本人の国籍をブローカーから買って、日系人になりすまして日本にきてるだけ。」と、仲良くなった数人の南米人から聞いた。何故彼らが、同じ南米人のことをそのように言うかというと、おそらくカルロスの素行が悪いのが問題だったからではなかろうか。彼は、相手が嫌がってもしつこく女の子を追いかけ回したり、偽造テレホンカードを外国人に売りさばいていると言う噂もあった。

 夜遊びはしているものの、本物の日系人達には本物の日系人としての誇りやプライドがある。偽の日系人だと言うだけで面白く思っていないのに、さらに犯罪行為まで犯されたら、日系人全般の評判にもかかわると日系人達はカルロスのことを良くは思っていなかったようだ。だが、そうはいっても、小さな街に住む同じ南米出身者ということもあり、特に仲間はずれにするわけでもなく、適切な距離感で関わっているように見えた。

 カルロスには母国に妻と3人の子供がいた。その写真を大切そうに持っていて、仲良くなった人には見せびらかしていた。典型的な出稼ぎタイプの南米人でまとまったお金を稼いだら母国に帰るつもりの人だった。カルロスのように稼げるだけ稼いだら母国に帰るつもりの人達は、だいたい単身で日本にきていた。だが、単身だからこそ寂しくてお酒を飲みに来てしまい無駄遣いしてしまうという矛盾もあった。

 もちろん一家総出で出稼ぎに来ているお家もあったが、南米日系人は家族の結束が固いイメージがあって、家族で来ている人達は夜遊びなんてしなくても多分家族で日常を楽しんでいたのではないかと思う。

 家族と一緒に日本に来ていて、なおかつ一人で夜遊びに来ているのは10代~20代前半の若い男女ばかりだった。彼らは単純に出会いを求めて来ていたのだろうと思う。

 

◆覚醒剤中毒で死んだ女性
 ある時、バーで座っているとビール瓶が飛んできた。「危ないじゃんっ!誰だよ!」を心の中で叫びつつ、飛んできた方向を見ると、一人のアジア人女性がいた。その頃、私はとある男性に言い寄られていて少し親しくなっていた。そのバーの中でも隣りに座って話したり、もしかしたらイチャついていたかもしれない。

 そのアジア人の彼女はその男性と何かしら関わりのある女性だったらしい。ビール瓶が飛んできてすぐに、近くにいた同国の女性がとめに入ってくれて、彼女は少し落ち着いた。とめに入ってくれた女性とは仲が良かったので、彼女が後で「あの人覚せい剤やってるから、ちょっとおかしいの。」と教えてくれた。「あらぁ…」と私は返す言葉もなかった。しかもその瓶を投げてきた女性は人妻で子供もいるそう。だけど、上記の男性に入れ込んでいて、なおかつストレスの多い水商売で働いているという。そりゃ、ストレスでドラッグもやりたくなるかもわからんねと思った。絶対ダメだけど。でも、彼女のガリガリにやせた体を見て、なおかつ、その話を聞いて、とてもじゃないけど彼女に対して怒る気にはなれなかった。

 ある時そのバーで、上記の男性が飲みすぎて寝てしまった。すると、私が真横にいるにもかかわらず彼女がやってき、彼にディープなキスをしはじめた。それも、かなりの長時間。これ、いつまで続くの…と見ていたが、一向にやめる気配もないし、彼は寝ていて起きそうにもないので、面倒事になるのもいやだしと、私はさっさと家に帰ってしまった。

 その後、彼女が覚醒剤中毒で死んだと聞いた。彼女には子供がいたはずなのに。子供をおいて死ぬとは、なんと不憫な…と思った。同国出身の同業の女性に聞いた話だと、壁に向かって話をしたり、最後の方は完全におかしくなってしまっていたとのこと。

 

 私自身は、夜遊びは10年以上前にやめてしまったので、こういった人達に関わることはもうないし、彼らがその後どうなったのかも知らない。

 夜の街には色んな人がいて、色んな人に出会うし、色んな闇を知ることができる。まだまだ夜遊びの話はつきないが、今回はここまでにしておく。

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